第226話 血の怪物、再び!
「いだぁああああああああああああああああああああああああああああ!」
突如としてオフィーリアが絶叫した。
倒れ込み、全身を激しく痙攣させた彼女は気絶してしまった。
「オフィーリア!? ちょっと! しっかりして! どうしたのよ!」
慌てて駆け寄ったグロリアがオフィーリアを抱き上げた。
何度か呼び掛けるが返事はない。
「もしかして……」
何か思い当たるものがあるらしいレミーベールが近くまで来た。
「レミー! オフィーリアはどうしたの!?」
「落ち着いてグロリア。たぶん反動よ」
「反動!?」
「オフィーリアは操られてから身体能力がバカみたいに上がってたわ。本人の限界を無理矢理超えさせられてたって感じ。さっきも身体が軽いとか言ってたし、今まではずっとリミッターが外されてたんだと思う」
「……っ! じゃあお父さんが親玉を倒したからオフィーリアは!」
「うん。オフィーリアのリミッターを外してた存在が居なくなって元に戻ったのよ。その反動が来てこうなっちゃったんだわ」
「気絶するほど痛かったのね……オフィーリア」
「気絶したのは防衛反応よ。とりあえずオフィーリアをキャンプで休ませてあげましょう」
「うん」とグロリアはオフィーリアをお姫様抱っこして立ち上がった。
すると至るところに倒れたドラゴンゾンビの亡骸が、いきなり溶け始めた。まるで氷が熱で溶けるかのように。
「おいおい……なんだよこれ」
レグナがその光景に驚く。
グロリアたちも同じで、近くにあった亡骸が溶け始めたのを見て距離を取った。
「な、なによこれ気持ち悪い」
「親玉が死んで溶けてるのかも」
レミーベールの答えにリイドも頷いた。
「かもね~。もともと死んでた奴らだし。親玉の能力で生きてただけなんだよきっと」
溶けたドラゴンゾンビは跡形もなくなり、地面に血溜まりを残した。
やっと終わったかと安堵したグロリアたちだったが……その血溜まりから一本の太い触手が生まれた!
「は!?」
赤い血管のような触手は4メートルの長さ。
まるで地面から生えたように血溜まりから伸びてきた!
しかもその触手は一本ではない。
他の血溜まりからも触手が生えてきて、その数はもやは百を優に超える。
「なんだこの気色悪いの! ミミズか!?」
ロングブレードを抜刀しながらローグは叫んだ。
彼を狙って叩きつけてくる触手や、
レグナやリイドを狙って先端から黒い球体を発射してくる触手までいた!
「こ、攻撃してくるよ!」
黒い球体を避けながらリイドが震えた声を発した。
黒い球体が地面に着弾して大爆発を起こす。
「なんなのよコイツら! まだ終わってなかったの!?」
「グロリア! 早くオフィーリアを連れて逃げ、きゃあっ!?」
レミーベールが背後に生えてきた触手に巻き付かれ捕まった。
「レミー! あっ!?」
姉の心配をした隙にグロリアも即座に捕まってしまった。
オフィーリアと共に触手に巻き付かれ、きつく拘束される。
「離して! このっ! こぉんのぉおおおおお!」
全身に全力を込めるが触手の拘束は解けない。
グニグニと臓器のような感触の触手はグロリア・レミーベール・オフィーリアを締め上げるが、傷つけはしなかった。
「動けない! みんな助けて!」
レミーベールの叫びにレグナたちも気づくが。
「レミー! グロリア! やべぇな。待ってろ今……どわっ!」
「わあっ! あぶないっ!」
「くそっ! 邪魔をするな!」
レグナたちは触手の猛攻に前進できない。
しかし彼らもSS級騎士。
一瞬の防戦はあったがすぐに攻勢へ。
触手の黒い球体の弾幕を突破し、さらに叩きつけを避けてそれぞれの触手を切り裂いた。
根元から切断した触手は地面に転がり、何度か暴れて血となって溶けた。
「よし! このままグロリアたちを助けるぞ! 触手に捕まるなよ!」
レグナがそう指示すると「おう!」と返事をしたのはローグだけだった。
相棒のリイドは何故か地面を見ている。
「おいリイド! 返事は!」
「レ……レグナ! ローグ! 下を見て! 血が動いてる!」
「はぁ!?」
意味不明な言葉だったが、レグナはすぐにそれを理解した。
地面を見れば、先ほど倒した触手の血溜まりが確かに動いていたのだ。
血溜まりが地面をそのままスライドしている。
「おいおいマジか!?」
「どうなってるんだ!?」
レグナとローグが驚愕する間も、血は移動し続けていた。
その移動している先には巨大な血溜まりがあった。
いつの間にか大量の血溜まりが集結していたらしい。
そしてその巨大な血溜まりからは……10メートルを超える巨大なドラゴンが現れた!
触手と同じく地面から生えたように、血溜まりからそいつは現れた。
上半身は女体を思わせる人間の身体。
しかし顔は肉が削げ落ちたドクロとなっている。
下半身はドラゴンの四肢。長い尻尾と鋭利な四肢の爪があり、あちこちから触手が蠢いている。
「なんだこいつ!?」
レグナは双剣を構えて一歩下がる。
「まさか親玉じゃ!?」っとリイド。
「きぃいあああああああああああああああああああああああ!」
「うわっ!」
「うぃっ!」
「ぐあっ!」
女の断末魔にも似た怪物の咆哮にレグナたちは思わず耳を防いだ。
その隙を狙って触手が黒い球体を撃ち込んできた!
「!」
なんとか避け直撃は免れたが爆発に押されて地面を転がる。
そこを狙って今度は触手本体の叩きつけがきた!
レグナやリイドたちはすぐさま起き上がりそれらの攻撃を回避する。
「あぶねぇ! 怪物と触手は無視だ! まずはグロリアたちを助けるんだ!」
双剣で行く手を阻む触手を切り裂きながらレグナが言った。
「わかってる!」っとリイドとローグも前進する。
「くっそぉおーっ! 軽い気持ちで来てた任務なのになんだよこれ!」
レグナは背後から迫る怪物に背を向けながら、器用に愚痴を吐きつつ触手を切り裂いていく。
「こんな時に文句言ってる場合か!」
「そうだよバカ!」
ローグとリイドに言葉で叩かれながら前進する。
当のグロリアは触手に締めつけられながら怪物を見ていた。
「く……っ、なんなのよあの怪物! あれがまさか親玉なの!?」
「お父さんにやられたのかと思ってたけど、違うみたい……ぐ、う!」
グロリアとレミーベールはまとわりつく触手に抵抗したが、まったく押し返せなかった。
無駄な抵抗だと諦め、グロリアはまた怪物を見た。
「!」
その背後にはこちらへ向かって走ってくる人影が見えた。
遠目でも分かる銀の髪!
長剣の刃を煌めかせ、まっすぐに疾走してくる。
あれは間違いない!
「お父さん!」
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