第183話 フォルス家、集結
カーティスを先頭に、俺とカティアはローエとフランベールの捜索をしていた。
いまだ森の中を歩き、海岸を見て回る。
その道中、向かいから見知らぬ影が現れた。
「カーティスぅうううううう!」
森の中を疾走してくるその影は女の子だった。
白い鎧を身に纏った女騎士で、金髪のツインテールが特徴的だ。
だんだん近づいてくる彼女は、どう見ても美の付く女騎士だった。遠目からでも分かる胸の存在感が凄い。
「ん? なんだあの子? おお、すげぇ可愛い子だ! カーティスの彼女か!」
「違います」
もの凄い真顔でカーティスが拒否ってきた。
なんだろ?
女の子に興味ないのかな?
それはそれで心配。父として。いや同じ男として。
「ローエに似てないか? あの子」
カティアが唐突にそんな事を口走ってきた。
「え、そう?」
俺は向かってくる白い女騎士を凝視した。
エメラルドグリーンの瞳と金髪……言われてみると確かにちょっとだけ似てるかも。もしかしてグロリア?
「カーティス大変よ! 大変なの!」
俺とカティアには目もくれず、白い女騎士はカーティスの肩を掴んできた。
「どうしたんだ?」
慌ただしい彼女だが、慣れているらしいカーティスの態度は冷静だった。
というか面倒くさそうだった。
「お母さんが生きてたの! ローエお母さんが!」
ローエお母さん!?
お母さんって!
じゃあやっぱりこの子はグロリアなのか!?
っていうかローエ!
無事だったんだ!
良かった!
「ローエお母さん!? それは本当なのか!」
驚くカーティスの問いにグロリアが頷く。
「本当よ! いまこっちに──」
「ちょっとグロリア! 置いてかないでほしいですわ!」
森の奥から現れたのは緑の女騎士……俺の愛妻ローエだった。
「「ローエ!」」
俺とカティアは同時に叫んだ。
「え? ……あ!? ゼクード! カティア!」
「無事だったんだな!」
「良かった!」
俺とカティアはローエに駆け寄りながら言う。
「お二人こそよく無事で! 良かったですわ!」
「え、知り合い? 誰この二人?」
グロリアが俺とカティアを見ながら怪訝な顔を浮かべた。
カーティスは視線こそローエに向いていたが、ちゃんと答える。
「ゼクード父さんと、カティア母さんだ」
「え!? お父さんとお母さん!?」
グロリアが目を丸くして驚愕する。
「カーティス大変よおおおおおおおおおお!」
今度はグロリアではない別の女の声が弾けた。
見れば別方角から銀の鎧を装備した女騎士が駆けてきていた。
銀髪の青い瞳の女性だ。
こちらもまた胸が凄い。
胸のプロテクターの膨らみが素晴らしい。
カティアやローエに負けず劣らずのボリュームだ。
「ん? また可愛い子がこっち来るぞ。あれは……今度こそカーティスの彼女か?」
「違います。彼女はレミーベールです」
「レ、レミー!?」
レミーベールって言うことは、俺とフランベールの娘じゃないか!
「え、なんかいっぱい居る!? 誰この人たち!?」
レミーベールが俺やカティア・ローエを見ながらカーティスに問う。
「ゼクード父さんと、カティア母さんだ。そしてこちらがローエお母さん……で、よろしい……のですよね?」
「え、ええ……そうですわ」
ぎこちなくカーティスに聞かれたローエは誰? って顔でカーティスを見てる。
そうか。まだローエは知らないもんな。
フランベールを探したらちゃんと説明してあげないとな。
だが、さすがのローエもカティアとカーティスの顔を交互に見ている。
妙に似ているから気になっているのかもしれない。
「ぇ……え!? お父さんにお母さん!? みんな生きてたの!?」
レミーベールもグロリアと同じく目をガン開きして驚愕した。
こっちもこっちで説明しないとややこしいな。
「ゼクードくーん! カティアさーん! ローエさーん!」
今度はなんだと一瞬だけ思ったが、この声はフランベールだとすぐに分かった。
見やれば、そこには青い軽装のフランベールが元気そうに手を振っていた。
「フラン!」
俺もすぐに手を振り返す。
そして腹の底が一気に軽くなるのを感じた。
みんな無事だったんだ。
良かった。
奇跡だなこれは。
「ああよかった! みんな無事だったんだね!」
「フランこそ無事で良かった!」
「ほんとですわ! ところで聞いて! あの子たちは!」
「そうそれ! わたしも聞いてほしいの! あの子はね!」
「おい落ち着け二人とも」
「ちょ、カーティス聞いて! あの人、ワタシたちのお母さんなのよ!」
「こっちもそうなのよ! てかアタシが先に来てたんだから先に言わせなさいよ!」
「いーじゃないの別に!」
「良くないわよ!」
「分かったから落ち着け」
いかん。
みんな喋りたい事が多過ぎてメチャクチャになってる。
「おいみんな! いったん静かに! 口を閉じるんだ! ストーップ!」
俺は森の中で敢えて大声を出した。
ドラゴンに見つかる可能性を踏んだが、その甲斐あって、みんな俺に視線を集中させて止まってくれた。
「──よし。じゃあ落ち着いて、一人ずつゆっくり自己紹介していこう。まずは……」
……言い出しっぺの俺が先行かな?
家族の視線が俺に集中しているし。
俺はとりあえずコホンと間を取り繕い、わざとらしく咳払いをした。
「え~……まずは俺からだな。俺は【エルガンディ王国】の【フォルス隊】隊長ゼクード・フォルスだ。よろしくなみんな。会えて嬉しいよ」
俺の自己紹介に思いっきり反応したのはレミーベールとグロリアだった。
「ゼクードって……え、この人、本当にお父さんなの!? なんか、思ってたより……」
「可愛い顔よね」っとグロリア。
「うん」
か、可愛い……娘に可愛いと言われるなんて。
びっくりするぐらい嬉しくない。
昔ローエにも言われてた気がするなぁ。
可愛いって。
っていうか、娘らはどんな顔を想像してたんだろ?
「次はわたくしですわね。ローエですわ。みんなに会えて本当に嬉しいですわ」
「カティアだ。あとでいろいろと話を聞かせてほしい」
「フランベールです。みんな……大きくなったね。会えて本当に、本当に嬉しいよ」
震えた声で言うフランベールは、すぐに涙を流した。
三人の子供を前にし、ずっと堪えていたようだ。
つられてローエとカティアも涙を流し始めた。
そんな妻たちを見たら、俺まで涙が溢れそうになった。
それもそうだ。
こんな奇跡に立ち会っているんだから、涙を堪えろって方が無理なのかもしれない。
親が揃って涙を流すので、子供たちはかなり自己紹介がヤリづらそうだった。
「カーティスです」
「グロリアよ」
「レミーベールです」
自己紹介を淡々と済ませた子供たちだったが、よく見れば三人とも目が赤くなっている。
彼らもつられていたようだ。
堪えていた涙が、少しずつ溢れて来ている。
するとカーティスは母を慰めるように優しく抱き締める。
グロリアはローエに抱きつかれ、驚きながらも抱き締め返す。
レミーベールも同じく。フランベールに抱きつかれてそれを受け止めた。
みんなもう我慢の限界だったようだ。
みんなが抱きしめ合って涙を流している。
フォルス家が、誰一人と欠けずにここに集った。
俺は今、凄い奇跡を見ている。
そして思う。
俺も誰かと抱き合って泣きたい。
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