第15話 早朝のローエ
素晴らしい夜食を過ごした。
カティアさんという超絶美人といっしょに食べた【ドラゴンバーガー】は最高でした。
そんな感想を胸に、満足いっぱいの俺はベッドで横になった。
これから毎晩カティアが料理を作りに来てくれる。
夢のようだ。
でも……本当に甘えて良かったのだろうか?
いやでも、こんなチャンスは滅多に……いや一生に一度有るか無いかだろうし。
せっかくのカティアさんからのご厚意だし。
コンコンコン……
んん?
今度は誰だ?
俺は目を開けると、窓から陽射しが。
「あれ!? もう朝になってる!」
俺ってばいつの間に寝たんだ!?
ぜんっぜん寝た気がしないんだが!
コンコンコンコン!
玄関のノックが強くなった。
んー、なんか……S級騎士になってから毎朝ノックされてる気がする。
今日は誰だ?
ローエさんかな?
それにしては優しいノックだったが。
「ゼクード隊長? 起きてますの? ローエ・マクシアですわ」
ホントにローエさんだった。
今日はどうしたんだ?
「はーい」と応えて俺はベッドから降りた。
いつ寝たのかすら分からない身体はやたら重くて気だるい。
それでもローエさんを待たせまいと玄関を開けた。
するとそこには相変わらず緑の鎧とマグナムハンマーを装備したローエが立っていた。
「おはようございます。ゼクード隊長」
目が覚める美しい笑顔での出迎えだった。
やはりローエさんは純粋に綺麗である。
「おはようございますローエさん。今日はどうしたんですか?」
「ええ。わたくしパンを焼きましたの。隊長にも食べてもおうと思って持ってきましたわ。ちゃんと朝食を取ってますの?」
ぇ、ええ!?
今度はローエさんが俺にパンを焼いてくれたの!?
なにこれ怖い。
やっぱりもうすぐ死ぬのかな俺。
良いこと起こりすぎ。
「いえ朝食はいつも食べたり食べなかったりぃ、ですね」
「やっぱりそうなんですのね。朝食を疎(おろそ)かにすると身体に悪いですわ。はいこれ」
渡されたのは上等な白パンだった。
焼きたてで暖かく、香りも豊かだ。
これがローエさんの手作りパンとは凄い。
その辺のパン屋にも負けないレベルだ。
「ぁ、ありがとうございます!」
「ふふ、良くってよ。あとこれも」
もう1つ渡されたのは小さなガラスビン。
中には黄色みのある固形物が入っている。
これ、バターだ!
「こ、これバターじゃないですか! 白パンだけでも贅沢なのにこんな!」
「あら? 遠慮はいりませんのよ? 最近多めに乳が出たんですの。それくらいどうってことないですわ」
「ち、乳が出た!? ほんとですかそれ!」
俺は思わずローエさんの豊満な胸の膨らみに目がいく。
たしかに乳が出そうなサイズだ。
「人間の乳でもバターって作れるんですね」
「は? あ! ちょ! どこ見てますの!」
ドゴン!
「ぐほ!」
まさかの腹パンチ。
防御性能0の寝間着装備だから死ぬほど痛い!
「わたくしの乳ではありませんわ! 赤ちゃんもいないのに出るわけないでしょう!」
「は、はい! すいませんでした!」
顔を真っ赤にして怒るローエさんは可愛かった。
そんな可愛い一面を見れた代償に腹をやられたが問題ない。
ちょ~っと吐きそうな程度のダメージだ。問題ない。うぇ。
「まったくもう……」
頬を赤くしたままローエは俺の家の中を一瞥した。
なんだろ?
何か気になるのかな?
「……ところで隊長」
「なんでしょ?」
「これからわたくしが毎朝パンを焼いて持ってきて差し上げますわ」
「え!?」
毎朝パンを焼いて!?
毎朝!?
カティアさんどころかローエさんまで。
「ま、毎朝って、毎日持ってきてくれるんですか?」
「ええ。わたくしパンを焼くのは得意なんですの。これから毎日しっかり朝食を食べて体調を万全に整えておくのですわよ?」
「そ、そんな……毎日はさすがに悪いですよ」
嬉しいんだけど、毎日ってぜったいにローエさんが面倒だと思う。
ローエさん自身になんのメリットもないしこれ。
「もぅ……年下のくせに遠慮しなくていいのですわ。先輩からのご厚意はちゃんと受け取っておきなさい?」
「は、はい。なんか、すみません……」
「それでその、その代わりという訳ではないんですけれど、隊長にお願いがありますの」
お願い?
なんだろう?
なんかローエさんモジモジしてるし、もしかして!
か、彼氏になってほしいとか!?
「お願いですか? 俺に出来ることなら何でも致しましょう!」
さぁローエさん。
いつでもいいですよ!
答えはもちろん『いいんですよ!』ですよ!
「そう言って頂けると嬉しいですわ! 実はわたくし【S級ドラゴン】の爪を手に入れたいんですの」
「いいですよ!」
ん?
S級ドラゴンの爪?
彼氏じゃないの?
いかん。即答&安請け合いしちゃったけど大丈夫かな?
「さ、さすが隊長ですわ! ありがとうございます!」
心底嬉しそうにローエは深々と頭を下げてきた。
うん。
思ってたのとだいぶ違う展開だけど、なんかローエさん喜んでるし、まぁいっか。
「とりあえずS級ドラゴンと戦うときは爪の破壊を視野に入れてほしいって事ですよね?」
「そうですわ! そうですわ! 隊長の斬撃ならきっと簡単に破壊できると思いますわ! ぁ、もちろんわたくしも支援しますわよ!」
「それは良いんですけど、なんで爪なんか必要なんです?」
「……ええ、わたくしにはひとり妹がいまして」
ローエさんにも妹いたんかーい!
カティアさんとローエさん普通に『お姉さん』なんだ。
だから二人とも妙に作るの上手なのか。
「ぃ、妹さんがいらっしゃるのですか。それはきっとさぞやローエさんに似て美しい妹さんなんでしょうね」
「手を出したら叩き潰しますわよ?」
「あ、はい」
カティアさんと同じ反応だ。
妹を守るお姉さんたち怖い。
でもそれが素敵だ!
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