第16話 *

駅のロータリーでスタッフの森と一緒にいる子供達は、親達と別れても寂しそうな表情も見せずはしゃいでいた。

その姿を見て、太陽は10日間をバイトのことだけ考えることを決めた。

自分の個人的な感情なんて子供達には何の関係もない。

これからの10日間が最高の夏休みの思い出となって欲しい。



バスの中で子供達と簡単な自己紹介をし合った。

太陽の方は、事前に参加する子供達の顔写真付のプロフィールを渡され、覚えておくように言われていたので、暗記したことと実際に会った子との照らし合わせになった。

子供達は小学3年生から6年生までの20人で、スタッフ3人に、大学生のバイトが太陽を入れて3人いた。

バイトは金井という同じ年の男子学生と、碓井というやはり同じ年の女子学生だった。


バスとフェリーを乗り継ぎ、小さな島へ着くと、用意されていたワンボックスカーに数人ずつ別れて乗って、まずは子供達を民泊でお世話になる家に連れて行った。そして最後に太陽たちは宿泊施設となる旅館に行って、荷物を片付けた。


森から、「とにかく怪我だけはないように、そこを一番気をつけてください」と、事前研修でも言われたことを再度念押しされ、再び子供達を車で拾って、海に向かった。


その日は海で泳ぐ子供達が怪我しないように監視するだけだったけれど、次の日からは確かにハードだった。


漁師と一緒に地引網で漁をした後、獲れた魚を公民館でみんなで捌いて料理をした。包丁を扱えない子供もいたので注意が必要だった。

公民館の中庭のようなところで、魚を串に刺して焼いたり、鉄板で焼きそばを作ったりした。

子供達に目を配りながらも料理の手伝いや片付けなど、休む暇もなかった。


それからの数日も、カヌー体験や、キャンプ、焚き火でのバームクーヘン作り、流し素麺やドラム缶風呂体験など、イベントは目白押しだった。


子供達は底なしの体力で、朝から夕方までフルで動きまわているのに、次の日にはリセットされて、疲れた素振りもない。



5日目くらいから、金井と碓井には目に見えて疲れが出てきた。

朝ご飯を食べる時も眠そうにしていたし、昼間は何とか元気に動き回っているものの、夕方には足取りも重くなっていた。


そんな中ただ一人、太陽だけが元気に子供達と駆けまわっていた。

一緒に遊ぶ子供達もそれがわかってか、太陽に懐いた。

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