終末CODE

のべ

プロローグ

『西暦2765年、惑星コード。


 アジア人をルーツとする人々により発展したこの星は、地球時代から培ってきた優れた機械技術と、近年精錬技術が確立しつつある惑星特産の鉱石資源であるエーテルのエネルギーを軸とし、本格的な入植が始まってからものの300年で周辺星域の中での技術力・経済力トップの座に躍り出た。


 特に反重力の技術に関しては星域内最速で実用化を達成してからというもの、85年間コードの専売特許として在り続けており、各所に建造された浮遊都市は自然災害の影響を受けないことから経済・技術の中心となっただけでなく、数多の人類が夢にまで見たようなその未来的なビジュアルから惑星内外の人々の観光名所として圧倒的な存在感を持ち、発展が発展を生み続ける本惑星の栄華を象徴する存在である、

 はずであった。


 2年前の2763年、突如として惑星最大の浮遊都市であった青の都「ハル」にて特大規模のシステム障害が発生。


 あらゆる機械が動作不良に陥り、警備ロボットはどういうわけか人類に敵対し、人々を追い出すかのように暴力行為に走った。

 発展が発展を生み続けた都は、一転して損害に次ぐ損害に見舞われ続け、結果として最初の障害からたった一週間で都市機能修復不可の判断および都市住民への避難勧告が出され、そしてその数日後には全域が機能停止。

 

 巨大浮遊都市はあっけなく墜落し、70年の歴史に幕を閉じた。


 しかし事態はそれにとどまらず、ハルの墜落後も同様の現象が惑星中で発生した。


 この現象は症状が放射状に拡散したことから「瘴気」と呼ばれるようになり、「感染」の拡大を免れた地域はわずかであった。


 ハル以外の浮遊都市も比較的小規模な一つを除きほぼ全て機能停止・墜落の結末をたどり、いまや文字通り錆びれた鉄の無人島と化した。


 絶望の未来が生んだ人々の抗争や生活圏大幅縮小による食糧不足により、最初の瘴気発生からほんの2年で惑星コードの文明のほとんどが崩壊へ追いやられてしまった。


 瘴気の感染拡大が停止した現在でも明るい未来などというものが見える気配は無く、かくいう筆者も1週間先の命の保証も無いような生活を続けている。


 これは、悪運だけが自慢の、とある男女二人組の生存記録である。』




「あら、珍しく書き物ですか?ガラでもない・・・ ぷぷ」


「うるさいな。・・・諸々の生活記録のついでに、軽く趣味でやっていこうと思ってさ。それに遠い将来、この星を訪れた誰かが発見して貴重な文献になったりするかも、なんて」


「なら早々に鳥たちのディナーになったりしてしまわないよう、いっそう気を付けなければなりませんね。明日までの分でもう小麦パンが切れてしまいますわよ」


「わかってる・・・ そろそろそれなりのジャンクでも見つけてこないと俺たち二人、餓死一直線だよ」


「それじゃあ今日は先日話したレベル2の地域にでも出向きましょう!あわよくば感染ロボット達を斬り捨てて、そのパーツも生活の足しにしてしまいたいですね!せっかくあなたに作ってもらった武器も使わないともったいないですし!ふふふ・・・ コーヒー熱っっっ!!!」


「・・・まあたまには一発当てに行くのもありかね、逆に俺たちが物理的に一発ぶち込まれるなんてことだけ無いように祈っとこ」


「そしたら銅像でも建てて差し上げますわ。というかこのコーヒー、金属のような味がしますね。やっぱり今度からちゃんとしたものを買うようにしましょうか」


「残りのドリップバッグ使い切ってからね」


「チッ・・・」


「おい」




 今日もこの自由人お嬢様(元)とのその日暮らしのような生活が始まる。

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