少しだけお昼寝をしてから、わたしは先生と一緒に先生のアトリエに行った。先生のアトリエはとても綺麗で、物が少なくて、お日様のいい匂いがして、それからその部屋の真ん中には一枚の絵が置いてあった。(その部屋はどうやら、お外にある花壇のところの横にあった大きな窓のある部屋のようだった。先生が白いレースのカーテンを開けると、お日様の光りがアトリエの中を優しく包み込んだ)

 その一枚の絵の題名は『ふとっちょな小鳥』という名前だった。それは先生の自画像だった。でも、自画像と言っても、今の大人になった先生の絵ではなくて、もっと小さな子供のころの、今のわたしと同じ年のころくらいの先生の絵だった。わたしはその絵を見て、先生から絵のことを教えてもらう前に、絵の中にいる子供の先生を見て、この絵は先生の絵だとなぜだかすぐに(疑問に思うこともないくらいに自然に)わかった。

「この絵はね、私の初めての絵本のふとっちょな小鳥のもとになった絵なんだ。私がプロの絵本作家になってから、心を込めて、初めて描いた絵でもあるだよ」とふとっちょな小鳥の絵の前に立って先生は言った。わたしは先生の絵本が大好きだったから、ふとっちょな小鳥の絵を見て、すごく感動した。

「どうかな? 感想は?」とじっと絵を見ているわたしを見て先生は言った。

「すごくいい絵だと思いました。とっても感動しました」と先生を見てわたしは言った。

 四角いキャンパスの中で色とりどりの咲き乱れる花の中で、にっこりと可愛らしい顔で笑っている女の子。その女の子には先生の面影がたくさん、たくさんあった。小さな絵の中で笑っている女の子はとっても幸せそうに見えた。

「でもさ、なんだか、ちょっと遺影みたいじゃない?」と先生は言った。「いえい?」とわたしは言った。「お葬式のときに飾る写真のこと」と先生は言った。その先生の言葉を聞いて、そんなこと全然思っていなかったから、わたしはすごくびっくりしてしまった。でも先生はそんなわたしのことにあんまり気がついていないようだった。

「さあ、それじゃあお腹もいっぱいになったし、よく寝たし、絵を描くことを始めましょうか? 私も早くあなたの描く絵が見てみたいの」と先生は何事もなくそう言って、アトリエの隅っこにあった椅子を移動させたり、壁側の棚のところに置いてあった絵の具を持ってきたりして、絵を描く準備を始めた。「はい。よろしくお願いします」と言って、わたしも持ってきた大きな荷物の中から絵を描く道具を取り出して、絵を描く準備を始めた。

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