第20話「この世界にも、当然だが下ネタはある」

 この世界にも、当然だが下ネタはある。

 しかし、貞操が逆転しているのだから、その内容はかなり異なっている。

 

「ねぇねぇ、ちょっと自分の左手の手首掴んでみて」


 本日の授業が終わった放課後。

 教室の隅で、一人の女子が周りの目を気にしながら、コソコソと同じグループの女子に話しかける。

 あぁ、今日も面白い下ネタが聞けるんだなと、俺はその話にこっそり耳を傾ける。

 これだけでなんで下ネタの話と分かったかって?


 彼女はクラス1の下ネタ好きだ。

 そんな彼女がこそこそと女子を集め、俺の胸元をガン見してる時の大倉さんのような表情をしているんだ。言う前から会話の内容が下ネタだって分かる。


「こう?」


 グループの女子の1人が、言われたままに手首を掴んでみせる。


「うん。それで掴んだ方の手をグーパーしてみ」


「うん。これがどうしたの?」


 よく分からないと言った様子で、手首を掴んだ女子が、手のひらを開いたり閉じたりしている。


「男がイク瞬間のチ◯コってこんな感じらしいよ」


「えっ、マジ!?」


 それを聞いた周りの女子たちが、同じように手首を掴んで手のひらを開いたり閉じたりを繰り返し始める。

 同じように聞き耳を立てていたのだろう。近くにいた女子グループもコソコソと同じように手首を掴み、開いて閉じてを繰り返し始めた。


「待って待って、これってどれくらいの速度でやれば良いの?」


「最初は結構早い速度で、途中からゆっくりにしていく感じ」


「うわっ、えっろ!!」


 あまりのくだらなさに笑いそうになってしまう。

 あれだな、前の世界では、車やバイクに乗って時速60キロで走ってる時に手を出すと、風圧が丁度おっぱいの感触だってのが昔流行ったけど、それの男女逆転バージョンのようなもんだろうな。

 イキった女子が「そういや前やった男がこんな感じだったわ」とか言い出すのに風流を感じてしまう。


「はぁ? お前処女じゃん?」


「しょしょしょしょ、処女ちゃうわ!」


 そして始まる処女検定。

 イキった女子が必死になればなるほど、周りが面白おかしくいじり始める。

 この世界の、こういうところは本当に貞操が逆転しただけって感じがあるな。

 正直交じって猥談に興じたい気持ちはある。俺も男だからね、下ネタは好きだよ。 


 ただなぁ、それやると男子の目が厳しくなるんだよな。

 あまり悪目立ちし過ぎてイジメの対象にされるのだけは勘弁。


 とはいえ、ちょっとだけ、本当にちょっとだけ興味があったので、こっそり自分の机の下で手首を掴んで閉じたり開いたりしてみる。

 あー……うん。思ったよりリアルだなこれ。

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