第6話 オルコ
栗毛で顔のほとんどが白い馬がいる。ダダ星人みたいだ。彼女は歩くのが遅い。ふてぶてしいのか、早く歩けないのかわからないが…そのため隣の厩舎にいたが、こっちに移動して来た。こっちの厩舎は、パドックも、ウォーキングマシーンも隣の厩舎より近い。時間の節約のためだろう。それ以外はおとなしく、顔以外は存在感はない。
今日、彼女の馴致が始まった。洗い場に、入りたくないと駄々をこねている。後ろから箒で煽ると立ち上がり、あわや後ろにひっくり返るところだった。それからは、地道に時間をかけてやっていたが、やはり馬を持つ人間を変え、後ろから地面の砂などで投げつけて、煽りはじめた。人間と馬の攻防が始まった。1回入ったが、向きを変えた途端出て来た。また入らない。そこに、牧場のラスボスが来た。ボスが引き手を持つと馬は落ち着いた。そして、ゆっくりゆっくりなだめ、洗い場の床のにおいを嗅がせたり、少しずつ引っ張り、そんなことをしているうちに入った!そして向きを変えた。出て来ない。成功だ。そして、ラスボスがいなくなり持ち手が変わった途端、洗い場から勢いよく出て来た。また入れようとしたが、無理だった。初日だったのでそこで止めた。
彼女のお父さんは、有名なクセ強めの栗毛の怪物だ。だから彼女をオルコと呼ぶ。
2日目、今日も洗い場に入らない。
3日目、青草をあげるから洗い場に入ろうよ作戦。なんとなく入りそう。でも入らない。強制的に後ろから箒で煽って入れた。
4日目、強制的に箒で煽って入れた。洗い場で向きを変えた途端出ようとするから、馬の前で、箒を持って1人立っていた。力で抑え、脚を洗う。日に日に、時間がかからなくなっている。
思うに、この馬洗い場に対して恐怖とかそういうのはないっぽい。なんせ、あっちこっちよそ見して、落ち着いてる。洗い場入って出れないことを知るとおとなしい。ただ、人の言う事を素直に聞くことが嫌な感じ。こじらせ女子だ。バタバタ暴れることもしない。まぁ、歩くのが遅くてこっちの厩舎に来たわけだから、俊敏な馬とは思えない。おっとり系の馬だと思いたい。素直にそう思えないのは、お父さんの姿がチラつくからだ。
昨日は洗い場にもすぐ入って脚も洗っておとなしい。だが、洗い場から馬房まで帰ってくる時、政治家の牛歩かっ!ってくらい遅い足取り。疲れたの?そしてその後、お客さんが来てオルコが連れて行かれた。普通よりゆっくりめだが、すたすた歩いている。そしてもう少しでお客さんのところというところで、立ち止まる…そしてまた歩き出し、無事に仕事をおえる。なんだろう、すんなり事が終わらない。おもしろい。彼女最高!
そして今日、背中に人を乗せて戻って来た。
これからが、本番ですなぁ。頑張れぇ〜。
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