オチる短編ミステリー

ワンダルピー

第1話 息苦しい生活

朝、目が覚めると決まって洗面台へ向かう。顔を洗ってから一日をスタートさせるのだ。私はあるときを境に息苦しい生活を送るようになった。理由は分かりきっている、あの嫌な上司のせいだ。寝室から洗面台に向かう途中で昨日終わりきらなかった仕事のことを考えるとどんどん息苦しくなっていった。眠い目をこすりゆっくりと洗面台についた私は鏡に映る自分の顔を見たが、目の前がかすんでよく見えない。だが、いつの間にか肩で息をする程に息苦しかった私はそれどころではなかった。右手で自分の胸をぎゅっと押さえて覚悟を決めた。ダメだ、このままだと死んでしまう、あの会社辞めよう。そう思い、今日だけは頑張れと自分を鼓舞して、会社に向かった。会社について私は昨日の残りと今日さらに増やされた書類の山で頭が痛くなっていた。案の定上司は「仕事が遅い」だの、「ミスが多い」だのと文句が止まらない。仕事を押し付けるだけ押し付けて自分は椅子にのんびりと座っている上司を睨んでいると、頭痛がさらにひどくなっていった。もう我慢できないと私は上司のもとに歩いていった。目はきっと充血していただろう。しかし私の思いとは裏腹に足はだんだんと遅くなり、いつの間にか地面と体がくっついて目の前が真っ暗になっていた。辛うじて意識のあった私は何故か苦しいという気持ちより、温かくて気持ちいいという感情に変わっていた。「~、~、起きて、~、~!」だんだんと薄れゆく意識の中、私の名前を呼びながら肩を揺する同僚の声が聞こえてきた。起きるわけないのに。



・・・



××時○○分、~さんの死亡を確認しました。死因はお風呂での睡眠による溺死です。

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