昼飯
「なぁ、そろそろ昼ご飯食べない?」
少し遅めの朝食が1時半すぎにようやく消化された俺は、 翔太と快誠に提案する。
「そうだな、俺も腹減った。じゃあ、どこ行く?それともウーバーする?」
「今の時間はどこも混んどるし、ウーバーにしよ。」
快誠はそう言うと、携帯を取り出してアプリを開く。
「何にしようかなぁ?」
快誠が楽しそうに選び始める。
「あっ、てか、2人とも知っとる? さっきネットニュースで見たんやけど、今朝近くの交差点で強盗があって、男の人が刃物で刺されたらしいで。」
快誠は急に強盗事件のニュースを話し始めた。
「えっ、なにそれ知らない。怖っ。」
「俺も知らない。何その事件。」
俺達は突然のニュースに少し戸惑う。
「それって、いつ、どこで起きたの?犯人捕まってんの?」
この家の家主である翔太は快誠に質問攻めする。
「詳しいことは書かれてへんけど、5時半頃に、△丁目の交差点で20代の男性が腹を刃物で複数刺されて倒れているところを通りかかった人が発見したんやて。犯人は捕まってへん。」
俺も翔太も顔が少し強張った。
「まぁでも、すぐ捕まるんちゃうかな。目撃した人は今んとこおらんみたいやけど、防犯カメラには映っとって、顔はわからんけど、服装はしっかりわかっとるらしいし。」
「そうか、それならまぁ、大丈夫か。」
俺はすこしホッとした。翔太も少し表情が和らいだ。
「でも、家の近くでそんな事件が起きるなんて怖いな。いきなり腹を包丁で3回も刺されるとか嫌すぎる。やっぱりウーバーにしといて正解だったわ。」
翔太がつぶやく。
「ホンマやな。怖すぎるわ。あと、因みに服装は、白地に黄色と青の花柄のようなシャツに、グレーのパンツらしいで。」
「ふーん。目立ちそうな感じだな。それならたぶん、すぐ見つかるな。」
翔太はまだ少し不安そうな表情をしていたが、俺は更に安心した。
「まぁ、そうやな。でもなんかこの服装、お前のお気に入りのやつと似てへん?お前、もしかして。」
快誠がニヤニヤしながらこちらを見る。
「やっぱり、言うと思った。馬鹿か、俺がそんなことするわけないだろ。ぶっ飛ばすぞ。」
「ヤバい、怒った。俺、死ぬかも。」
快誠は更にニヤニヤしながら呟いた。
「おい、本当にぶっ飛ばすぞ。」
俺は更に言い返す。
「おい、やめろ。不謹慎だぞ。それより早く何食べるか決めろよ。」
翔太が割って入って来た。
「せやな、悪かった。」
「悪い、俺も乗っかってしまった。」
俺達はすぐに謝り、昼ご飯決めに戻る。
丁度その時、
「続いてのニュースです。今朝、20代の男性が何者かに刃物で刺される事件が発生しました。」
テレビで事件のことが放送される。
「事件があったのは今日の朝5時30分頃、品川区〇〇町△丁目の交差点で、都内に住む大学生の山﨑光輝さんが何者かに包丁で腹部を3回刺されたということです。」
俺達はそのニュースを聞いて、とても驚いた。
「おい、この山﨑光輝ってあいつじゃないよな…?」
「いや、違うだろ。」
翔太と俺は顔を見合わせる 。
「いや、わからへん。そういえば俺、今日の朝あいつにLINEしたんやけどいつまでも既読にならへんねん。いつもはすぐに返してくんのに…。」
快誠が暗い表情でつぶやく。
三人とも暗い表情になり、黙り込む。
「なお、山﨑さんは刺された数分後に、偶然通りかかった人に発見され病院に運ばれ、一命を取り留めたということです。」
ニュースの最後にアナウンサーが発した。
俺達はその瞬間、とてもホッとした。
「あぁ、生きてたか…。」
「生きとる!ホンマ良かった!!」
快誠と翔太が泣きそうな表情でつぶやいた。
俺も言葉が出ないくらいホッとした。
その後、俺達はすぐに光輝の家族と連絡を取り、病院へ向かった。
(答え)
翔太は事件のことを快誠から聞くまで知らず、快誠は腹を刃物で複数回刺されているとしか言っていないが、翔太は包丁で3回刺されたと知っていた。また、光輝が一命を取り留めたと知ったとき、生きてたか…と少し変な言い方をしている。 もしかしたら、翔太が犯人なのかもしれない。ただ、犯人なのだとしたら、友人という近い関係で疑われやすいのに、なぜ目立つ格好で犯行に及んだのだろう…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます