第10話:実践試験

学園のロビーの中は人で溢れかえっており、笑顔で結果を待ち遠しくしているものや、失敗して絶望しているような者もいた。

そして俺は筆記試験を終え、昼休憩をしていた。

アリシアの方は筆記試験が遅れてしまい、少し終わりが遅れてしまっているようだ。

まあ、あんな簡単な筆記試験なんて誰でも高得点狙えるだろ。数学なんて前世の小学生の5,6年くらいの範囲だったわ。

...それにしても...


「あぁ....一人って寂しい。」


アリシアといつも一緒にいるからか、いざアリシアがいなくなると寂しくなるもんだ。

だからこそ日常は大切にすべきだと、こういうときに実感させられる。

別に亡くなってしまったとかの話じゃないんだけどさ。てか何考えてんだ...


暇つぶしに俺は、経済について学習できる本をバックから出して、筆箱からは一つの羽ペンを出す。


「ねえ。君、なに読んでるの?」


俺はその声を聞いて、とっさにその方向へと向いた。


「経済...凄い難しそうな本を読んでいるね」


緑色の髪と、黄色の目が特徴の少女がいた。

服は水色のワンピースで、どこかの貴族の子かなと思った。

まあ、貴族の子なんだけど。


「あえて嬉しいです。モモ様」


モモ・シルエッティ ゲームのヒロインの一人で、最弱クラスとも言われていた。

才能はあるのだが、その才能をうまく使えない。そう攻略本には書かれていた。

そして、その才能を開花させるのはシナリオ的には不可能だと言われているくらい難関な設定らしい。


「うん、ありがとう。それでこの本はどんな本なのかな?」


「これは、マクロ経済を学べる本で、マクロ経済というのは例えば国家レベルや街、市町村...いや、都レベルとかの広くみた経済の流れだね」


「つまりは?」


「国家クラスの経済だね」


モモはよくわからないと言った感じで頭を抱えて唸っている。

そもそもそうだ。経済学なんてものはこの世界は普通は学ばない。

学ぶものなど本当にその専門職に受かりたいということで学ぶものだけだ。

主に財政の幹部クラスしか学んでいないんじゃないかな?


「う〜ん。よくわからないや。今度会ったときにちゃんと教えてほしいな。」


「うん。じゃあまたね」


モモはその前にという感じで俺の目の前に近づき、「あなたの名前は何?」と聞いてくる。

「お....私はリオ。名字はないから名前だけだよ」


「ありがとう。リオ。じゃあまたね〜」


俺はモモと離れ、また経済の本に没頭する。



「ごめんね〜リオ〜。待たせちゃって」


「仕方がないよ。それより、試験はどうだった?」


アリシアはにや〜っとにやけて、自己採点を見せてくる。

そこには合計点数300点中246という高得点?をたたき出していた。

まあ、いちおう200点が通常の平均点なのでかなりの高水準だ。


「凄いじゃん。アリシア」


「えへへ!リオは?」


「298点で.....一つだけ符号書き間違えのミスをしてしまった....」


俺は地面にうなだれ、絶望する。あの文章問題の単位を本当は一羽二羽と数えないといけないのに一匹二匹と数えてしまった。


「え...298点ってトップクラスの中でも上位の点数じゃん。こんなことなんてあるの?!」


「いやいや、あの問題とかそこら辺の子どもでも解けるでしょ」


「いやいや...無理無理」


アリシアは何を言っているの?っという感じの顔でこちらを見てくる。

頼む。人を頭おかしいみたいに見ないでくれ...

すると、近くの場所から声が聞こえてくる。


「筆記試験をした生徒たちは実践試験を行います。生徒は全員第3演習場に移動してください」


と、言われたので話を一度やめて、演習場に向かう。



広い演習施設のようなところに1列に並ぶ的がおいている。



「ファイアボール」


綺麗なスーツを身につけた一人の男子生徒がそう言うと、手のひらに魔力がたまり、火の玉が生まれる。その火の玉を的にうち放っているが様子が見えた。

その火の玉は的を焦がし、的を少し黒くしていた。


「レアール、単位数29」


「おおおお!!」


試験官がそういうと、その男子生徒は喜んで大はしゃぎする。が...

え、あんなのが30付近だったの?

俺はその的の損傷具合を見て、言葉を失う。

あの的には基礎魔法の結界がまとっているが、普通は基礎魔法クラスの結界はファイアボールで余裕で破壊できるはず。

あ、違うわ。ゲームの目立つキャラが強すぎるんだわ。


「ウィンドボール!」


「ライト・アロー」


その他の生徒たちも次々に放っていく。だが、なかなか的を破壊しきる力が出ていない。何なら後者の生徒なんて傷ついてないやん。


「ケフレ、単位数21!カラム、単位数17!」


え〜〜。単位数20以下なんてあのゲームで聞いたことがねえ。


「アリシア・ヴァレンティノ、入って下さい」


「わかりました。リオ、行ってくるね」


「了解。見てるね」


アリシアは、演習場の奥に試験官といっしょに向かい、その打つ場所へと立つ。

そして、アリシアの周りが少しゆらぎ、閃光が地面に駆け巡る。

その様子を見た生徒たち、試験官達はアリシアに注目が向かう。

この魔法は、現在のアリシアの使える最大級の雷魔法であり、特殊魔法と呼ばれるランクの魔法だ。

アリシアは手に全ての魔力を集め、そして放つ。


「ライトニング!!」


その瞬間、室内に大きな光とともに、遅れて落雷音が発生する。

やがて、パリパリと余韻が消えてきた頃に的を見ると。

的はなくなっていて、的周辺の地面は真っ黒く焼け焦げていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る