第3話 第二の人生は私がファンタジーだった


 さて、なぜここが異世界か分かったかというと、私にはネコミミとしっぽがあるからだ。


 ……頭の可哀想な子だと思わないで。


 前世の記憶を受け継ぎ、自我がはっきりと戻り、大パニックを起こした次の日、お母さんは私の大事を取ってお仕事を休んでくれた。

 お母さんが休みだと分かったのは、状況確認の後だけど。


 とにかく、朝起きた時からゆっくり一人の時間が取れた私は改めて状況確認をした。




 その結果――


 「え? なにこれ? 私ってもしかして獣人?」


 口からあほっぽい言葉が出た。


 ついでに声やしゃべり方が幼くなってて驚いた。




 もうこれどう見ても地球じゃないよね。

 ネコミミっ子は大好きだけど、まさか私がなるとは夢にも思わなかった。


 お母さんも私と同じネコミミとしっぽがあるし、住んでる家は研究所のようにも見えない。

 人体実験で生まれたキメラや、人体改造された人造人間ってことはないはず。

 前世にはVRはあったが、仮想空間にフルダイブできるような代物ではなく、ヘッドマウントディスプレイをかぶって体感するレベルであった。つまりVRの世界ではない。


 これだけで条件がそろえば異世界なのは確定的に明らかだよね。

 第二の人生は私自身がめっちゃファンタジーだった。


 そんなわけで、この世界は異世界だと分かった。




 状況確認中にネコミミとしっぽに気づいたときはとにかく衝撃だった。




 まず気づいたのはしっぽの存在だ。


 朝起きてベッドから降りた後、きょろきょろと周りの様子を見まわした。


 そんな中、ふいに手の甲にもふっとしたものが触れた。

 もふっとしたのは毛の棒であり、どう見てもそれはしっぽだ。


 なんでこんなところにしっぽが?


 次の瞬間、私は無意識にしっぽをむんずと掴んだ。

 その時の衝撃はたぶん生涯忘れない。




 「――ッ!!」




 幸い声は出なかったけど息が止まった。

 びびっと電流のようなすごい刺激がしっぽから背中まで走った。




 しっぽはかなり敏感だった。

 結構痛かった。


 前世の猫はしっぽを触られるのを嫌がるわけが理解できてしまった。




 しっぽはちょうどお尻の割れるところくらいから生えている。

 しっぽは自分の意志で自由に動かせた。

 前世に無い部位なだけに例えるのが難しいが、たぶん腕を動かすイメージが一番近いと思う。


 しっぽの毛は髪の毛みたいに生えている。

 しっぽの皮膚は毛に覆われて見えないけど、慎重にかき分けて見たら頭皮が一番イメージに近かった。前世のシロクマみたいに毛の生えている部分の皮膚が黒くなくて良かった。


 ちなみに、私の髪の毛としっぽの毛は銀色、つまり銀髪だ。わずかに青みを帯びているようにも見える。髪の毛はストレートで長さはボブ。顎よりちょっとあり、肩にかからないくらいだ。

 さらに手足や腕の肌の色は、前世のロシア人のモデルみたいに色白ですごくきれい。


 まだ私が子どもだからか分からないけど、毛は細く絹のような手触りだ。

 力加減を間違えなければしっぽを触っても問題ない。セルフでもふれる。

 いつまでももふりたくなるほどステキな手触りで嬉しくなった。

 絶対に毛並みは整えよう。




 私は美肌と銀髪により、テンションが有頂天とか言語がおかしくなるレベルで思わず小躍りした。




 その後、ちょっと落ち着こう思い椅子に座った。

 ここで新たに分かったが、椅子に座るときはしっぽをお尻の下敷きにしないように気を付けないといけない。

 下敷きにすると地味に痛い。

 急に冷静になった。




 椅子に座った後にネコミミの存在に気づいた。


 誰も見てないけど小躍りした照れを誤魔化すため、無意識に手を頭に伸ばしたら毛に覆われたふにゃっとしたものに触れた。

 同時に頭に触られた感覚があった。

 触れてるふにゃふにゃはなんか動いてる。


 恐る恐る頭の上を調べるように触ると三角形の物体がある。

 頭の上にある三角形、棒のようなしっぽ、ここから導き出される結論は私でもわかる。




 この三角形、絶対ネコミミだと思う。




 前世の人間の耳だった部分は触っても何もなく髪の毛に覆われているだけ。

 耳の位置が違うし触った感じだと頭蓋骨の形は違うのかも。

 人間の耳が無くその部分は髪の毛で覆われてるので違和感あるけど、まぁそのうち慣れるでしょ。


 前世のマンガやアニメ、ゲームでは人間の耳とケモミミの2組を持った獣人が描かれている作品があったが、私の耳はネコミミだけだ。

 私は獣人の耳はケモミミの1組だけ派だ。

 2組の耳を持つ作品を否定する気は一切ないが、私の趣味じゃない。

 ちゃんとした意味のある設定を持った作品ならいいが、設定が無い場合は2組ある理由が分からない。用途が謎だ。

 個人的に猫獣人の耳はネコミミだけあればそれでいい。つまり私はとても満足だ。


 それとネコミミは目が動くみたいに無意識に動く。

 もちろん自分でぴこぴこ意識的に動かすこともできる。

 私は前世の人間の耳を動かすことができなかったので、ネコミミを動かせる感覚はすごく不思議な感覚だ。




 こんなネコミミとしっぽを持つ獣人が今の私だ。

 ちなみに、ネコミミとしっぽ以外、触って確かめた眉毛、目、鼻、口の顔パーツ、見て確かめた手足や指、胸におなか、お股やお尻など、前世の人間と差は分からなかった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る