ネコミミ娘に転生したので楽しく気ままに生きたい
星川 咲季
■第1章 異世界の日常編(3歳)
第1話 ハローワールド
「ただいま」
私は力なく家のドアを開けて入り靴を脱ぐ。玄関から少し進み、手探りでボタンを押す。
明るくなった部屋には誰もいない。荒んだ部屋にげんなりする。
いつものようにカバンを適当に置き、一直線にベッドへ向かい倒れこんだ。埃が宙に舞う。
「疲れた……」
横を向き机の上にある写真をぼんやりと眺める。
数年前に親友と一緒に旅行に行った時に撮った写真だ。
写真の中の私と親友は笑顔でピースをしている。
「そういえば最近寝る以外に何もして無いなぁ……」
数年前に起きた世界経済が傾く銀行倒産ショックのせいでどの会社も瀕死だ。
もれなく私の会社もあおりを受けてブラック企業に大変身。潰れないだけましなのだろうか。
能力も容姿も一般人な私はクビにならないようにするのが精一杯。
多少は努力できたり真面目だったりしても、それだけだ。
「あー、ぐっすり眠って休みたい。旅行に行ける元気と時間がほしいー!」
今年も親友との休みの都合がつかないどころか、休み自体がほとんどない。ひどい。
「会社辞めて旅行に行きたい……」
でも会社を辞めてのんびり旅行を楽しめる懐事情じゃないし、結局頑張るしかないのかな……。
「もうお風呂は明日の朝でいいや」
私は起き上がり、のそのそと最低限のことを済ませた。
ひたすら瞼が重たい。何とか瞼が閉じる前にお布団に入り込めた。
しばらくすると頭痛がし始めるが今はひたすら眠い。
だんだん酷くなってきている気もするが、抗いようのない眠気だ。
寝れば治るだろうと思ってるうちに私は意識を手放した。
――――――――
暖かい……。
気づくと頭痛は治まっていた。
手足や体に全く力が入らない感じがする。それ以前に全身の感覚があいまいで動く気配がない。
意識はあるけど、体が動かないって金縛りかな。
金縛りって確か頭が半分起きてるけど体は寝てるってやつだったような……。
ダメだ、眠気でぼんやりとした頭じゃ考えがまとまらない。
辺りは暗いけど、暖かいし、ひたすら眠いし、まだ夜なら寝よう。
……まだ暗いし、相変わらず力が入らない。
しかも全然寝足りない。
意識がぼんやりするせいか考えることにもすごい時間がかかってる気がする。
「――…… ――――………… ――…………」
なんか心地いい音が聞こえる気がする。
誰かが語り掛けてくるような、歌を歌ってるような、聞き取れないけどすごく穏やかな気持ちになる。
あ、これ、夢だ。
私はすごい快適な夢にいるんだ。
相変わらず暖かい中にいる。
私の夢はかなり長続きらしい。
時間の感覚がまるでない。
意識が夢と現を行ったり来たりするような感覚だ。
いくら寝ても寝足りない。
きっと疲れた心を癒す時間が必要なんだって体が言ってるんだよ。
いったいいつまで続く夢か分からないけど不思議と不安は一切感じない。
穏やかな気持ちで眠気に身を任せ、ずっとこのままこうしていたい。
そしてあるとき、突然全身を物凄く圧迫された。とても寝てられない。苦しい。
しばらくして謎の圧迫された痛みから解放されると急にひんやりとした外気を感じた。
びっくりして思わず声を上げた私は――
「おぎゃぁ! おぎゃぁ、おぎゃぁ!」
全く言葉にならずさらに私はびっくりした。
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