絵にはその人の色が出る

「今日は皆さんに二人ペアになってお互いを描いてもらいます」

 取り敢えず梨久と組むか。

「梨久組もうぜ」

「良いよ」

 行き良いよくズバッと行く感じか。それとも繊細に行くか。観察しているとたまに目が合うと逸らしてしまう。

 今の自分の状態を見つめ直すならこの授業は、最適なのかもしれない。

 暇さえあれば梨久を眺めていることが、多くなってきた今日この頃。

 自分の変化に戸惑って歩みを止めてしまうが、時の流れは止まってくれない。

 だからこそ絵を通して自分を知りたい。

「いい絵ですね」

「……ありがとうございます」

 美術の先生に話しかけれ少しびっくりした。

「相手のことを思う気持ちに溢れていて、心が温まるような作品ですね」

「……はい///」

 授業だから仕方ないけど、めちゃくちゃ語源すんだが。しかしまぁ恥ずかしいけど、先生のおかげで客観的な視点からの意見を貰えた。

「相方さんの栃森とちもりさんは絵からも愛がこぼれ落ちそうですね」

「え!?」

「驚かれなくても」

「先生!?」

「ではまた〜」

 一言も発することが出来なかった。聞いては聞けない事柄を聞いた気がする。ドラマなら君は知りすぎたと言って始末されるタイプのやつだ。

「梨久は、可愛いやつだなぁ」

「や、やめろ〜」

 梨久の愛ってどの種類なんだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る