第139話 トレント無双と厚い雲

 パッパカ パッパカ モグモグ

 パッパカ パッパカ モグモグ



 リオンに乗って山道を登る。たまに隣に来ておにぎり食べながらネギ坊と遊ぶ猫。その行為が悪い燃費をさらに悪くしてることに早く気づいてほしいのだが。


「いいのいいの、ストレージ減らしとかないとお肉入らないし」


 当たり前のように俺の心の声に答えてくる猫。


 いや、言っとくが、猫君が狩れる肉は限られてるのだが? あと15秒×1回しか攻撃性能持てない事分かってんのか? 非常にコスパが悪いのだが?


 言いたいことが溢れてくるがここは無言で。



「いたよ、トレントとリス」


 消えて戻ってきたと思ったら敵情報を教えてくる。なんだ、索敵してくれてたのか。いらんこと言わんでよかった。



「じゃあ、行こうかリオン」

『フンスフンス♪』


 リオンがスピードを上げる。【疾走】レベルが上がってから体感でもわかるくらいにリオンのスピードが上がっている。上り坂も関係なくパッパカと疾走する。


 そして数秒間疾走するとトレントが見えてきた。相変わらずぬいぐるみの移動販売かってくらいリスを枝にズラリと並ばせ器用に移動しているトレント。


 前は姿を見ただけで逃げていたが、今日の俺は一味違う。何を隠そうトレント用の武器があるのだ。



【超除草ダーツ】

 植物特攻ダーツ。刺さった対象を枯れさせる。



 マークス工房でダーツ作るときに【超除草剤】も混ぜて作ったものだ。これ作ったらネギ坊が『こっちに向けるなよ』と念を押してくる程の危険な仕上がりとなっている。


「狙撃!」


 とりあえず一発狙撃してみる。


 グサ


「キュキュ?」


 リスが乗っかっていたトレントがみるみる枯れてポリゴンになる。足場がなくなったリスたちが慌てて周りの木に飛び移っていく。


「逃がさんよ」


 次々とリスを【狙撃】しまくっていく。ミーナが調べた掲示板情報では、このトレントとリスの組み合わせは、リスたちが陽動で立ち回っている間にトレントが枝でなぎ払いをしてきたり幹で頭突きしてくるという連携が厄介らしい。しかもリスはトレントがいる限り無限湧き。トレントの巣穴からどれだけでも出てくるという。なのでトレントを先に倒すことが求めれらるのだが、トレントはHPも多く物理に強いため、【伐採】系スキルもしくは【炎】系の魔法がないと厳しいとのこと。連続して陽動してくるリスの相手をしながらのトレント討伐にプレイヤーたちは四苦八苦しているらしい。


 で、まあそう言う事ではあるが、つまりはトレントさえいなくなれば陽動と言っても直線的に向かってくるリスだけという訳で。それなら今の俺にとっては雑魚同然だ。


 しかし、よもやあのリスを雑魚と呼べる日が来るとは。人生…小人族生わからないものだ、うん。



ピンポーン

『星獣リオンのレベルが上がりました』



ピンポーン

『特定行動により【自動照準】のスキルを習得しました』



 最後の二匹がなかなか攻撃してこず、周りをあちこち逃げ回ってるのを【遠見】で狙いをつけていたらやっと待っていたアナウンスがやってきた。


 【自動照準】と【狙撃】のコンボがあればリスはもやは移動するどんぐりと毛皮でしかない。



「やっぱスプラのそれってチートだよね」

「…そっか?」


 いやいや、一撃死と隣り合わせがチートとかあり得んだろ。それに今は敵との相性がいいだけだ。範囲攻撃なんかされたらすぐに死に戻るんだぞ。制限時間ありとはいえ攻防双方チートの猫に言われたくない。


 それでもドロップとピエロダーツを拾い集めながら「俺ってもしかしてチートなのか」と自問してみたがやっぱりそんなことはないという結論に至った。ゴブリン戦で何とかなったのはネギ坊素材と白馬バフと白金貨のおかげなのだ。俺一人でなんとかなった場面なんて一度もなかった。


 ま、そんなこと言いながらトレント&リスには無双するのだが。




ピンポーン

『星獣リオンのレベルが上がりました』


ピンポーン

『特定行動により【狙撃Lv4】のレベルが上がりました』


ピンポーン

『星獣リオンの【疾走Lv3】のレベルが上がりました』


ピンポーン

『星獣リオンのレベルが上がりました』


ピンポーン

『特定行動により【狙撃Lv5】のレベルが上がりました』



【トレント薪】×18

【古樹液】×1

【どんぐり】×121

【毛皮】×8



 いやー、倒した倒した。ドロップもたんまり溜まった。ドロップが多すぎて途中からどんぐりを拾うのは放棄しちゃった。


「放棄したどんぐりってリスの餌になったりするのかな、それともどんぐりの木が生えてくるのかな、ミーナさんどう思う?」


「…ねえ、もしかしてスプラって地図読めない?」

「そんなことない」


 俺が流れるはずのない冷や汗を感じながら現実から目を背けようとしていたらミーナさんから恐れていた言葉が発せられる。高まる緊張を隠しながら平然を装う俺。


 これまで地図を見ながらトレント無双を続けきたのだが、実は現在、俺たちは山の中で遭難中である。


 と言っても、遭難中と思っているのは俺だけ。ミーナは全く地図が読めないらしく、全部俺に任せているためこれまでは気付いていなかった。それがどうやら気づいてしまったらしい。


 なぜ、遭難なんかしているのか。それは全部このどんよりとした曇り空が悪いのだ。山に入ってからずっとこんな天気が続いている。なので、太陽の位置がまったくわからん。つまり、方角がわからん。


 で、実は今、俺は猛烈に焦ってもいる。なぜか? ミーナ用の弁当が底をつきかけているのだ。そして俺のピエロダーツも残り15本。100本あったのに森大鹿とか食いしん坊狼とかリスのぬいぐるみ屋とかによって一気に数を減らしているのだ。1本で5回使えると言ってもこの辺の大量のリスを相手には心もとなくなってきた。



「ミーナ、ちょっと弁当節約しようか」

「え、もしかして?」


「ちょっと心もとないかな」

「じゃあ帰ろうか」


「そうだね…」


 遭難中とは言えんな。どうしよ。



 とりあえず山を下っていれば遭難中とは思わないだろう。




ピンポーン

『特定行動により【狙撃Lv6】のレベルが上がりました』



【トレント薪】×2

【古樹液】×1

【どんぐり】×52

【毛皮】×1



「ねえ、スプラさん。ここ、どう見ても違うよね」


「え、そうかな?」


 ぐ、クソ上司にミスを報告するのが怖くて隠してしまったあの時の苦しさが蘇ってくる。くそ、俺はまた同じ間違いを…。


「あのさ、結構前から道に迷ってるんでしょ?」

「え、あ、そう思う?」


 ああ、やっぱりバレてるよな。これはダメだよな。道に迷った挙句に誤魔化すために嘘までついて。幻滅するよな。…こりゃパーティー解散かな。ま、俺がやらかしたんだし、仕方ないわな。


「はあ…。わたしってそんなに怖いかな?」

「え、こ、怖くはないけど?」


「なんか、みんなそうなんだよね。みんなわたしの前だと弱さを見せようとしないっていうか。わたしそんな心狭い様に見えるのかな」

「…」


「で、わたしが弱さを見せるとすぐに離れてく。…友達いないんだ、わたし」

「へ?」


 え、何? 意味がよく分からん。あ、もしかして俺が友達少ないだろうって事を凄く遠回しにディスってるのか? 


「スプラはさ、そばにいるって言ってくれたじゃん。だからわたし見せてるよね。食い意地張ってるとことか、自分勝手なとことかさ」


 あと、待ち合わせ遅れた事で100万G巻き上げられ、オーバーオール作れって言われて銀の斧の前で称号発動させられたり。あと、食い逃げの事隠してたり、謝りに行くの散々渋ったりとか。


「…なんか、無性に腹立ってきたんだけど、なんか文句ある?」

「ないです」


「…でさ、スプラも弱さ見せていいんだ。むしろ見せてくれないと、こっちも安心して見せられないっていうか。疲れちゃうんだ。だからさ、道分かんないんでしょ?」

「…はい、道わかっていません」


 こりゃミーナの方が1枚上だ。コミュ障の俺は対人経験が少なすぎる。


「そっか、ありがと、言ってくれて。じゃあさ、バーベキューでもしよっか? 肉あるし石板もあるんでしょ? 薪も」

「あ、その手があったか。ミーナ流石」


「そりゃ、それに気づいてなけりゃとっくに大暴れしてるわよ」

「…大暴れ?」


 なんか不穏な事をサラッと言ってきたけど、まあ、今はバーベキューだな。あのアウトドアツールの逸品に役立ってもらうか。


 無骨石板と薪を取り出してネギ坊の爆炎草で火を付ける。石が熱くなってきたら【森鹿モモ肉】を乗せていく。いい音を立てながら肉が焼け、肉の脂の香ばしくいい匂いが食欲をそそる。その様子にかぶりつくように並んで魅入る猫と小人。うん、やっぱり、うまいもんを一緒に食うっていろいろ解決するんだな。そんな二人がいざ肉を食おうとした時。


「じゃあ、いただきま…」


「うわー、ちょ、助けてくれーー」


 肉汁たっぷりのこんがり焼けた肉を前に不穏な声が響いてきたのだった。




❖❖❖❖レイスの部屋❖❖❖❖


あーあ、小僧、お前モンスターAIの育成の大変さ知らねえだろ…。

生態系の中でトレントとリスが連携するようになるにはかなり時間と労力が要っただろうに。

トレント作成者泣いてるだろうな~。

なんか呑気に肉焼いてる姿が鬼に見えてきた。


――――――――――――――

◇達成したこと◇

・作成:【超除草ダーツ】

・トレント&リスに無双する。

・リオン:Lv8、【疾走Lv4】

・習得:【狙撃Lv7】

・獲得:【トレントの薪】×20、【古樹液】×3、【どんぐり】×173、【毛皮】×6

・山で遭難してミーナにバレる。

・ミーナのコミュ力に敗北する。

・無骨石板で焼肉する。



◆ステータス◆

 名前:スプラ

 種族:小人族

 星獣:リオン[★☆☆☆☆☆]

 肩書:なし

 職業:斡旋員

 属性:なし

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:1

 器用:1

 知力:1

 装備:男の隠れ家的オーバーオールセット

 固有スキル:【マジ本気】

 スキル:【逃走NZ】【正直】【勤勉】【高潔】【献身】【投擲Lv10】【狙撃Lv7】new!【引馬】【騎乗】【流鏑馬】【配達Lv10】【調合Lv10】【調薬Lv10】【匙加減】【火加減】【下処理】【創薬Lv4】【依頼収集】【斡旋】【料理Lv5】【寸劇Lv1】【鍛冶Lv2】【遠見】【念和】【土いじり】【石工Lv2】【よく見る】【乾燥】【雄叫び】

 所持金:約1000万G

 称号:【不断の開発者】【魁の息吹】【新緑の初友】【自然保護の魁】【農楽の祖】【肩で風を切る】【肩で疾風を巻き起こす】【秘密の仕事人】【秘密の解決者】【秘密の革新者】【秘密の火消し人】

 従魔:ネギ坊[癒楽草]



◎進行中常設クエスト:

<薬屋マジョリカの薬草採取依頼>

<蜥蜴の尻尾亭への定期納品>

●特殊クエスト

<シークレットクエスト:武器屋マークスの困り事>

〇進行中クエスト:

<眷属??の絆>



◆星獣◆

 名前:リオン

 種族:星獣[★☆☆☆☆☆]

 契約:小人族スプラ

 Lv:5

 HP:160 (+30)

 MP:220 (+45)

 筋力:20 (+6)

 耐久:18 (+6)【+42】

 敏捷:45 (+15)

 器用:19 (+6)

 知力:27 (+9)

 装備:赤猛牛革の馬鎧【耐久+30、耐性(冷気・熱)】

  :赤猛牛革の鞍【耐久+12】

  :赤猛牛革の鐙【騎乗者投擲系スキルの精度・威力上昇(小)】

 固有スキル:■■■■ ■■■■

 スキル:【疾走Lv4】【足蹴Lv1】【噛み付きLv2】【運搬(極)】【水上疾走Lv1】



◆契約◆

 名前:ネギ坊

 種族:瘉楽草ゆらくそう[★★☆☆☆]

 属性:植物

 契約:スプラ(小人族)

 Lv:1

 HP:10

 MP:10

 筋力:1

 耐久:1

 敏捷:0

 器用:1

 知力:5

 装備:【毒毒毒草】

   :【爆炎草】

   :【氷華草】

 固有スキル:【超再生】【分蘖】

 スキル:【劇物取扱】【爆発耐性】【寒気耐性】

 分蘖体:ネギ丸【月影霊草】



《不動産》

 畑(中規模)

 農屋(EX)


≪雇用≫

 エリゼ

 ゼン

 ミクリ

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