偉人によるバトンパス 〜太平洋戦争で勝利せよ〜

雨宮 徹

今度は織田信長だってよ

「今回は、織田信長に転生してもらいます」



 なるほど、織田信長ね。かなり有名どころじゃないか。これなら、太平洋戦争での勝利をグンと引き寄せられる。俺は心の中で「よっしゃ」と叫ぶ。



 問題は前回の聖徳太子の時に整備した法制度がうまく機能しているかだ。自分なりに次の時代への下地は作っておいた。



 さて、戦国時代に行きますか。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「信長様! 信長様!」



 誰かが俺を揺さぶっている。なんだか、体がひんやりとしている。どうやら、床に寝転がっているらしい。いつまでも寝転がっているわけにもいかない。まずは情報収集だ。



「ああ、信長様! 心配しましたよ! いきなり倒れられるのですから」



 そんなこと言われても、転生したんだもの、仕方がない。文句は転生させた女神に言ってくれ。



「お前、誰?」



 目の前の人物は「信じられない」という表情で俺を見てくる。そりゃあ、立場が逆なら同じ反応するわ。「こいつ、狂ってる」って。



「私は明智光秀です」



 はあ? 明智光秀!? あの、本能寺の変で織田信長、つまり、俺を殺した? やばい、今ここで反乱分子を殺さなければ、俺がやられる!



 俺は近くにある刀を手に取る。しかし、近くにいた側近らしき人物に止められる。



「信長様、まさか人殺しをするおつもりですか! 人殺しをすれば、無期懲役、もしくは死刑に処せられますぞ! いくら、信長様だからといっても、特別扱いはできません」



 人殺しをすれば死刑! 現代ではそれが当たり前だ。でも、今って戦国時代じゃね?



「信長様、確かに私が悪かったかもしれません。しかし、私を切ってしまっては、信長様の目指す『この国を潤す』ことを実現できません!」



 へえ、俺ってそういう立場なのね。



「でもさ、今お前を切らなくちゃ、お前が反乱を起こして、俺が殺されるんだぜ?」



「信長様、何をおっしゃっているのですか? 聖徳太子様がこう定められたでしょう。『国家転覆を狙ったものは、死刑に処す』と」



 なるほど。確かにそんな法律を定めた気もする。じゃあ、光秀が反乱することはないか。念には念を。一応、スパイをつけておこう。



「みんな聞いてくれ。俺は自由な商売を認めようと思う。その名も『楽市楽座』だ!」



 周りにいる家臣たちは口を開けてポカーンとしている。どうだ、俺の頭の柔軟さ、いや歴史知識に恐れ入ったか!



「先ほど同じことを言われたような……」 



「信長様は頭の病気にかかったのかもしれん」



 何やらブツブツと言っているが、それ全部聞こえているからな!



「ともかく、経済を潤すんだ! そうしなければ、外国に舐められる。タイムリミットは一年だ」



「一年!?」「そんな無茶な」



 まあ、普通そう思うわな。楽市楽座だけじゃ無理だろう。だが、俺には秘策がある。銀行を設立するという作戦が。さて、いっちょやってやりますか。

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