第20話

「出たよ、ノード!」

 タヴァーノは地図を見てそういう。

「どういうことだ?」

「いや、町の名前って魔法語関連が多いじゃん?」

「え、わかんない。」

 魔法語関連が多いじゃん?って聞かれても一般人は魔法語とか使えないから。

「とにかく、ノードは魔法語で”北”って意味なの。で、この世界の人は地名をすぐ魔法語で名付けるから、北にある町ならノードって名前が付きやすいの。だから、私は旅をしててノードって名前を何百回と見てるの。しかも、ノードって名前がついてる場所は十中八九大きい場所ではないからね?」

「なるほど、日本語における英語由来で名前を決める、みたいな名付け方をするのか。」

「そういうこと。ちなみにソグノは魔法語で”夢”、レアルタは魔法語で”現実”という意味があるわ。」

 ソグノはともかく、レアルタは”どうしちゃったの”って思うな。

「レアルタは我がアルベルジェッティ家が名付けた名前よ。」

「なんで現実って名付けたの?」

 やっぱり疑問に思っていたのか。

「いや、現実って意味があるのも今知ったぐらいだから・・・・ただ、レアルタは昔からアルベルジェッティ家の領域だからね。・・・・あんまり威張れる話でもなかったわね。」

「なるほどね。」

「おい、そろそろつくぞ。」

「あ、本当だ~。」

 マーラさんがぼーっとして何か言っていたけど・・・・まさか進行方向を意識していなかったとか言わないよな?

 それはともかく、今日中にノードにつけるといいな・・・・そんなことを思っていたときだった。

「あ、あの人」

 タヴァーノが指を指した方向を見ると、蛇の紋章がついた紺色のコートを着た人物がいた。うん、2連続で遭遇してるけど結構ツイてないか?

「もう、なんで待機期間があるだから休んでいいですかって言ったら”先に待機していつでも暴れられるようにしておけ”なの!?いい加減休みっていう概念を作ってよ!あれ、誰かに見られてる・・・・?ちょうどいいや、倒せるにしても倒せないにしても鬱憤晴らししてついでにうまい具合に休みの申請しよっと。本当は町を崩壊させたりとかしたくないし。」

 だから、なんで実行役の人が社畜なんだよ。自分の意思で入ったわけではないのか?悪の組織だから現代日本でいうブラック企業みたいなことしてるのか?

「各自、戦闘開始!」

「オスコリマ!」

「ゲッ、あの人たちか・・・・。」

 アドリアが中級闇属性魔法を放った瞬間、戦闘が始まった。相手は魔法を簡単にかわしていた。どうやら前にレアルタから逃げた人と同じ人らしい。前回は上級闇属性魔法を使ってきていたっけ。

 とりあえず俺も戦闘に参加しようと相手に駆け寄る。そして、きっちり防御無視になるまで溜め込んでから相手に切りつけた。

 相手は俺の攻撃をくらったあと、俺に反撃してきた。

「オスコリザ」

 闇属性魔法に接触してしまってHPをごっそり持っていかれる。倒れそうになったが、タヴァーノが治してくれるだろうからひたすら耐えることにした。

「レクペザ!」

 ほら、こんなふうに。しかし、闇属性魔法とぶつかっているのか回復量が少ない気がする。身体が少しつらいが、そんなことを言ってられる状況ではなかったため、もう少し耐えることにした。それが一番良くない決断だったとは知らずに。

 しかし、セスタさんが殴ったりマーラさんが弓矢を使って攻撃をしているというのに、一向に倒れる気配がない。どうしたものか、もう一回召喚させたほうがいいのかと思っていたときだった。

「オスコリザ!」

 一発防御無視攻撃を仕掛けた直後、カウンターのように飛んできた魔法をかわすことができずに、まともに喰らうことになってしまった。コルはタンクの仕事を十分に頑張っていたが、カウンターは防ぎきれなかった。俺は耐えきれなくなってその場に倒れた。

「・・・・そろそろいいかな?」

 それだけ言って相手は逃げていったが、俺は意識を失いそうになっていた。生まれて初めて、死にそうな目に遭っていた。闇属性魔法はあまり外傷をつけない。ただ、内側から意識をごっそり持っていく。そんな師匠の話を思い出した。

「ちょっと、嘘でしょ!?レクペザ!」

 光が俺に降り注いでいるが、あまり回復しなかった。今思えばスリップダメージもあって、回復魔法をかけられた直後からどんどんHPが減っていたのだと思う。そう、回復魔法の回復量を上回るほどに。

「お願いだから死なないで!メタス!レクペザ!」

 どう頑張っても回復量は追いつかず、当時はここで死ぬことを本気で覚悟した。

「・・・・ありがとうな。」

 確か、俺の最後の言葉はこの一言だった。

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