第11話
「なあ、アドリアって・・・・死ぬ、イベントってなかったっけ?」
このときの俺の状態は深刻そうな表情と声色だったと思う。それに対してタヴァーノが答える。
「確か、あったわね。初めて会ったときには驚いたわ。アルテミス通りの金髪金眼なのだもの。あの見た目の人って本当にいるのね。」
アドリア・アルベルジェッティ。国境の大都市レアルタを統括しているアルベルジェッティ公爵家の令嬢で、アルベルジェッティ家の唯一の生き残りだ。いや、正確には唯一まともに生き残ったって言った方がいいのか。
顔はは真っ白な肌に、クリーム色のボブの髪に、蜂蜜色をした瞳だ。この見た目全部がアルベルジェッティ公爵家に生まれたことを示していた。
「でも、アルテミスの方ではアドリアって”THE・令嬢”っていう感じの見た目と性格をしていたよな?」
「そう、運命を完全コピーしているわけではない。もしくは、レアルタ崩壊で性格が変わってしまったとかかしら?」
前者ならともかく、後者なら悲惨すぎる。むしろ前者ならまだ希望を持てる。
それはともかく、アドリアは混乱するレアルタをうまくまとめて女性の公爵を務めることになる。0から1を生み出すようなことをしていた。そこにお転婆要素などなく、ただただ悩みながら政治をこなす立派な貴族、もはや”王族”だった。確かに攻撃魔法が使えたし、ダンジョンに一人で潜るときのNPCとして参加することもあった。まあ、俺は仲良し4人組でダンジョンに一緒に潜る人だったわけだが。
ちなみに、俺の前世の仲良し4人組の出会い方は、
そして、ある日に元の状態に近くなってきたレアルタに行くと、”アドリア様が誘拐された”というメインクエストを受けてアドリアを探すことになる。そして、見つけたときに死体を転がされて、これまた悪役NPCのセリフで”お前たちが遅くなったおかげでMP毒が効いて簡単に殺せたよ!がっはっは!”と言われてそいつらとボス戦になる・・・・そんな流れだった、はず。
そして、このクエストが終わるとミニゲームとして”レアルタ発展ゲーム”というのが遊べるのだが、このレアルタ発展ゲームというのはストーリー面の話で賛否両論ある。ゲームバランスはちょうどいいから、残念だと思った。
「あれ、MP毒ってなんだっけ?」
「名前の通りMPに対する毒よ。とってしまうとMPがだんだん減って最悪命に関わるわ。死ぬまでの時間は人によるわよ。人によってMPの量は違うから。」
「わかった。」
とりあえず、数日後にはここを出たほうがいいのか?崩壊する町にいると40%死んで40%は精神に異常をきたすから、ここを出たほうがいい気がする。
「とりあえず、ここを出る方針でいいよな?」
「うん、それでいいと思うわ。蛇の紋章がついた紺色のコートを着ているやつがいたら話は別だけどね。」
「そうだな、運命ぶち壊すぞ。」
ちなみに蛇の紋章がついた紺色のコートを着ているやつはヒドラの実行犯役で、実行犯は3人しかいない。まあ、アルテミスの設定と一緒だったらだけど。一人殺せたらかなり貢献できると思う。
「じゃあ、寝よう。」
「そうね。」
それだけ言ってタヴァーノはバリアを散らした。大変なことが起こる予感を感じながらも、心はなぜかわくわくしていた。今思えばようやく冒険できることがすごく嬉しかったのだと思う。
宿屋の部屋に帰って驚くほど早く眠った。
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