指ハート ほか
過言
指ハート
「ハートってさ。きもいよな」
「何急に」
こいつはこういう、突拍子もないことを言うのが好きらしい。
知り合ってまだ1週間だが、これで3回目だ。
僕もそういうのは嫌いじゃないからこそ、こうして交流を続けているわけだが。
「だってさ。英語でheartってどういう意味か知ってるか?」
「ハートだろそりゃあ」
「それ以外にもあるだろ馬鹿!」
「バカはお前な。……心?」
「あ〜〜それもある!けどそうじゃないんだよ俺が言いたいのは!」
「何が言いたいんだよ」
「だからさ!heartって心臓のことじゃんかって話!」
「……ああ……」
こいつの言っていることがようやく理解できた。
要は、心臓がカワイイのシンボルになってるのが意味わからん、ということらしい。
「心臓ってきもいだろ!?」
「まあ、きもいな。内臓だもんな」
「すなわちハートはきもいんだよ」
「……一理あるか」
「ほんとになんで、心臓のデフォルメマークが可愛いってことになってんだろうな。しかも全国の女子高生とかがさ、こぞって手とか指でハート作るんだぜ?意味わからん。キスのエフェクトがハートなんだぜ?愛し合う二人の間には心臓がいくつも飛び交っているんだぜ?」
「……それ以上聞くとハートマークを純粋な目で見れなくなりそうだからやめろ。……つうかなんで急にそんなこと思ったわけよ」
「そりゃあハートが目に入ったからに決まってるだろ。ほらこれ」
見せられたスマホの画面に、
「JK必見!?新型指ハート!」という文字が並んでいて、
その下には、
左右各十本の指でリアルな心臓を形作る女の子の写真が載っていた。
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