サヨナラ

ひかり

第1話

何度夢にまで見ただろう。

何度願ったことだろう。

会いたかった人が今目の前にいる。


夏の終わりの風が吹いた。


夏の終わりの風は心地よいものだったはずなのに、心をざわつかせるような気持ちになった。


ずっと会いたかった。

ずっと顔を見たかった。

ずっと声を聞きたかった。


でも今の私の心がざわついているのには理由がある。


「終わりにしよう。サヨナラだけしにきた。」


彼は白地に赤いラインの入ったバイクを傍らに、ヘルメットを持ちながらそう言った。


そんなことで顔を見ることになるなんて考えてなかった。


彼が目の前にいるという夢にまで見た状況は、悪夢のように変わってしまったのだ。


「そんなこと言うために会いに来ないでよ。」


好きな人が目の前にいることが嬉しいのに、好きな人がつむぎ出す言葉は残酷で、私は振り絞るような声を出した。

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