第2話 モンスターって怖いんだぜ

 ガサッガサガサガサ!


 まずい!遠吠えの声を聞きつけたのかなんか来た!

 俺は自分のうかつさを呪った。


 いきなり草むらから顔がヌッと出てくる。

 犬?いや、狼だなこれ、犬にしては顔が凛々しすぎる。


 とりあえず俺は気合いを入れてスキルを発動する。

 スキル『尻尾振り』発動!


 俺は全力で愛想を振りまく!


 気に入られなければ、即エサ行きになる!

 持ってくれ!俺の尻尾!

 うぉぉぉぉぉぉぉ!


 くっ、成功したかどうか分からねぇ!


 こうなったら一か八かにかけるしかない!


 くらえ『へそ天』!


 沈黙が流れる、実際はそんなに長い時間じゃ無いのだろうが、俺には悠久の時を刻む時間だった。


「グルルル」


 勝った!


 デカい狼は俺にひと声かけると踵を返した。


 全身の力が抜ける。

 危なかった。


「ガウ!」

 うわ!ビックリした!


 なんだ、立ち止まってこっちを見ている。


 うーん、雰囲気ついてこいって言ってるのかな?

 どうしようかな?


 ここに居るよりは良いか。

 俺はチョコチョコと狼の後ろをついて歩き…狼デカすぎて歩いてたら間に合わん!

 早歩きでついて行った。



 しばらく、ひたすら狼についていく。

 ペースが落ちるどころか少し上がったせいで、周りをみる余裕も考える余裕もない。

 思ったけど、俺って豆柴のさらに子犬じゃね?


 狼が無茶苦茶デカいんだけども。

 でも、豆柴自体が小さいしなぁ。


 他に比較対象がいないから分からんな。


 狼の後をついて行ったら、二匹のでっかい小鬼に遭遇した。


 あ、いや、変な表現なのは自覚してるよ。

 でも、狼と比較すると小鬼なんだよね。


 見るからにゴブリンって感じ。

 でも、俺と比較すると無茶苦茶デカい。


 これで確定だな。

 俺って超小型サイズだわ。


 豆柴の幼犬だね。


「グルゥ」

 ん?


「グルルゥ」

 え?


「ガルルルゥ!」

 えぇぇぇ!あれに攻撃してこいって言うのぉ!

 でもこの空気感は絶対、お前も攻撃しろだよなぁ……。


 攻撃するスキルもないんだけど……。


「ガウッ!」

 分かったって!分かったから!


 こうなりゃ、ヤケクソだ!

 おりゃ!まーめーしーばークロォォォ!


 ポフッ

 待てい!、爪攻撃で出ていい音じゃねぇだろ!


「ギャギャギャギャ!」


 うん!効いてないね!

 とう!全力逃走だ!


 ひゃっはー! 脚が短いから全然早くないぜー


「ガルゥ!」

 お!狼が一撃でゴブリン倒した!

 その調子で次のやつも……うおうい!スルーしてんじゃねぇよ!


 こっち来たじゃんか!

 しょうがない!いくぞ!必殺の噛みつき攻撃、豆柴ファング!

 

 ハムッ

 うん、知ってた。

 爪があれで、噛みつきだけ強力とか無いよねー


「ギャッ!」


「キャンキャンキャンキャン」

 グハァ!腹蹴られて思わず声が漏れてしまったぜ!


 痛ってぇ。


「ガルゥ!」

 一撃でゴブリンを倒した。


 なんだったんだあれは……。

 お!おおお!おおおおおお!


 経験値的何かが身体に入ってきた!

 うぉぉ!溢れる全能感!


 レベルアップみたいなシステムが、あるのかこの世界!

 恐らくだが戦闘に参加しないと経験値は貰えないだな。


 そう考えればこの狼の行動は理解出来る!


 なんでか分からないけど、この狼は俺を鍛えてくれるみたいだ!

 よっしゃー!ラッキー!


 え!?


 狼が今倒したゴブリンに近づいて行く。

 なーんとなく嫌な予感がするけど。


「ガフッガフッガフッ」

 あ、やっぱりお食事は生肉ですよねぇ。


「バウッ」

 え、俺も食えって?


 あ、いやー、えー、いや、でもー。


「バフッ!」

 そっかー、いやー、でも、そうだよなー。


 食わないと死ぬもんなぁ。


 意を決してゴブリンに喰らいつく。


 初めて食ったゴブリンはとってもとってもマズかったです。

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