終末ダンジョンライフ!無職おっさんが神話級スキルで人生大逆転!?魔改造したもふもふで世界最強に成り上がる!
Yuki
第1話 もふもふを魔改造してみた(小並感)
俺の名前は佐藤太郎――――もう一度言おう......佐藤太郎だ。35歳無職独身彼女いない歴=年齢。まるで呪文のように唱えることができる。いや、もうこれ呪文というか呪いだろ。家族や友人、社会からも見放されてしまった哀れなチェリーボーイと呼んでほしい。もうボーイという年齢でもないんだが。ハローワーク通いは日課になっているが、もはや職が見つかる可能性はゼロに等しい。仕事なし、恋人なし、友達もいないし貯金もない。ないない尽くしのこの人生......オーマイゴッド、私の神よ、あなたはもう死んでしまわれたのですか? まあ、これが現代社会に埋もれたおっさんのリアルライフだ。
今、俺が何をしていたのかというと――――賢者タイムだ。男性諸君ならこの意味が分かるだろう......女性の皆さんは見なかったことにしてくれたまえ。パソコンデスクには冷えたインスタントラーメンが放置されている。長年鍛え上げてきた俺の息子なら三分でフィニッシュも余裕かと思ったんだが......まだまだ修行が足りていないな、と俺は賢者タイム特有の達観的な視点で、他人事のように考える。近年のオカズの進化は目を見張るものがあり――――と脳内で語ろうとした時、スマートフォンが鳴り出した。どうせまた迷惑メールに違いない......やっぱりな。『あなたに神話級スキルが当選しました!』とか訳のわからない文面が見出しに書かれている。今時誰がこんな詐欺メールに引っかかるんだ。俺はまだこんなのに引っかかるくらいボケてねえぞ! せめて見出しを宝くじ当選か、一千万円差し上げますにでも変えて出直してこい! それならメールの本分くらいは開いてやってもいいかな......?
「はぁ......マジで俺、やべえな」
一人で押し問答して悲しいったらありゃしない。賢者になったせいで今日はもうハローワークに行く気すらしなかった。昨日も一昨日も同じことを言ってた気がするが、俺は今を全力で楽しむんだ。明日のことは明日の自分に任せよう。テレビもネットニュースも暗い話ばっかりで、また円安になったとか税金が上がったとか、気が滅入っちまうぜ。鬱陶しくてチャンネルを変えてみると、生中継でおかしな放送が流れていた。
「突如現れた謎の空間の裂け目が世界各地で――――」
よく見てみると、まだ時間は昼のはずなのに現場中継されている場所は薄暗い。俺は三日間部屋を出ていないしカーテンも閉めっぱなしだったから気付かなかったけどまさか――――。
俺は半信半疑で外へ出た。そこには異様な光景が広がり、もう俺の知っている町ではなくなっていた。巨大な空間の裂け目があちこちで出現していて、奇妙なモンスターがその辺をうろうろ歩いている。俺が驚きのあまり口をあんぐり開けていると、不意に目の前にポップアップウィンドウが現れた。
『スキル等級"神話”スキル名”魔改造”を取得しました』
「え、なんだこれ......? ゲームか?」
あれ、もしかして幻覚? 瞬きしたらいつの間にかなくなっている。なんか”神話級”とか言ってたけど設定が壮大すぎるだろ。もしかしてこれあれか?俺だけ異世界に来ちゃったみたいなそういう展開?それで神話級のスキル上げますってなんだそのご都合主義! しかもスキル名が魔改造って物騒すぎるだろ。絶対人間に授けるようなスキルじゃないって。俺もしかして人間側じゃなくてモンスター側の味方だったりする?
俺がどうしたもんかと頭を悩ませていると、玄関先にどこからともなく小さなふわふわの生き物が現れた。おお、なんだこの全身もふもふな生き物は! 白い小さなウサギをもっと丸っこくしたとてつもなく愛らしいデザインをしてるじゃないか! まさかこれもモンスターなのか......?
「ごめんな......もふもふは好きだけど、うちはペット禁止の賃貸なんだ。恨むなら大家を恨んで――――って、こんな世紀末ワールドになったんだからそれどころじゃないのでは?」
なんてこった。三か月滞納していた家賃を払わなくていいのか! 悪魔のようなリポ払いともこれで永遠におさらばだ!
「よし、もふもふよ。お前をうちでペットとして飼ってやろう!」
俺の言葉に反応したように、もふもふとした生き物はぴょんと跳ねて足元に寄って来た。まるで仲間になりたいと言わんばかりの態度。もしやこれはペットではなく戦力として役立つのでは? でもこいつに魔改造使うのかぁ......無性に撫でたくなるこのフォルムがごっついバケモンになったりしたら嫌だなあ。
その時、階段から俺の住んでいるアパートの二階にモンスターが現れた。間違いない......緑色の肌に二足で歩く小柄な体型、あいつはゲームや異世界で定番のゴブリンだ。俺はもふもふを玄関の中に入れ、急いでドアを閉める。どう考えたって今の俺たちがあいつに勝てるはずがない。運動もしていない冴えない中年おっさんの身体スペックなめんなよ!冷蔵庫にはもう食料は残ってないしカップ麺も尽きている。食料調達するにはゴブリンを倒すのが大前提で、道中でも厄介な敵に会うかもしれない。
「もふもふ......お前、本当に戦えるのか?」
もちろん返事なんて返ってこない。ただ、じっとこちらを見つめている。まあ、ほかに打つ手もないしこいつに賭けてみるしかないか。俺は恐る恐るスキルを使ってみることにした。使い方なんて全く知らないが、何とかなるだろ。
「もふもふ! 魔改造だ!」
次の瞬間、もふもふの体が淡い光に包まれた。
「おお、すげえ! ただし頼むから化け物にはならないでくれ!」
光が収まると、もふもふはただのもふもふではなくなっていた。ほんの少しだけ大きくなったが、大きさはそれほど変わらない。まだ両手の平に乗るサイズをキープしている。その代わり、頭の先っちょから金色に輝く角がおまけ程度に生えていた。
「お、おお......なんだか少しだけ強そうになったじゃないか! ゴブリンには全然余裕で負けそうだけど!」
化け物にならなくて済んだのは幸いだが、これではとても現状打破できそうにない。これってステータスみたいなものは見れないんだろうか? スキル貰った時にはゲームみたいなポップアップウィンドウが出てきたから多分いけそうな気がする。
「ひらけごま!」
なんとなくふざけてみる。というか今の若い子はこの合言葉を知っているんだろうか。こんなところでジェネレーションギャップってやつを感じておじさんは悲しいよ。
・名前:もふもふ
・種族:ちびウサギ
・スキル:滅びの雷、雷光石火、天候支配
・攻撃力:1000(以前は10)
・防御力:1500(以前は15)
・速度:2000(以前は20)
「バケモンじゃねえか! ってかひらけごまで見れるのかよ!」
もふもふしているだけの存在とは思えない圧倒的な力。こりゃ確かに改造どころか魔改造だ。いやもしかしたらこれくらいのステータスでようやくゴブリンと渡り合えるのか? でも滅びの雷とか天候支配とか明らかに物騒なスキルなんだよな......。
「す、凄いぞ、もふもふ! もしかしてお前今ならあいつを倒せたりするのか?」
「もふ!」
おお、喋った! 意思疎通までできるようになったのか! 任せろと言わんばかりに胸まで誇らしげに張りやがって......おじさん感動して泣いちゃうよ。そうと決まれば後は邪魔者を始末するだけだ。俺は愛らし気なもふもふを手に乗せて、意気揚々と玄関を開けた。
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