新と古の詩(スケッチ)

夢ノ命

第1詩 【未明の星の住人】


堡塁(とりで)の上から


暮雲(ぼうん)が吼(ほ)えたてる




しりきれとんぼに



「まったく まったく」 と


さんざ 舌を巻きながら



ようし と


鳳梨(ぱいなっぷる)をくわえる男



黒ばんだ手で


日がな 黒パンを喰(た)べている



栗毛の愛馬が死んだのだ と


遠く こんな……昨日とは……


言いかけた言葉が



変にもつれ紛(まぎ)れ繰り言(ごと)……


黒ゆりは 一家(ひとや)の庭に



ちゃんと 咲いている



其処へ 黒パンの屑を撒いてやろう



千々にくろぼしが 死んでゆきかかると



男はうつぶした



銀の泪を羽ばたかせた 夜の夜



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新と古の詩(スケッチ) 夢ノ命 @yumenoto

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