第5章 - 夢の世界での再会
私は、夢見る者たちから教わった方法で、意識的に夢の世界へ入っていった。目的は、過去の恋人と再会し、夢の世界の呪縛を解く方法を見つけることだ。
意識が徐々に薄れていく。現実世界の感覚が遠のき、代わりに不思議な浮遊感が全身を包み込む。そして、私は夢の世界へと足を踏み入れた。
目を開けると、私は見覚えのある場所にいた。色褪せた紫の空、ぼやけた輪郭の建物。そう、ここは前の夢で見た光景だ。しかし、今回はより鮮明に感じられる。まるで、この世界に対する私の感覚が研ぎ澄まされたかのようだ。
時計塔を目指して歩を進める。風が頬をなでる感触、足元の石畳の堅さ、すべてが現実以上にリアルに感じられた。すると、塔の前に一人の女性が立っているのが見えた。私の心臓が高鳴る。
近づいていくと、その姿が次第にはっきりとしてくる。長い黒髪、儚げな表情、そして深い瞳。間違いない、前世の恋人――。夢の中で再会した彼女だった。
「よく来てくれました、美智子」女性は、優しい笑顔を浮かべる。その声に、懐かしさと切なさが込み上げてくる。
「あなたは……」私が呟くと、女性は頷いた。
「私の名前は夢華。かつてのあなたの恋人です。そして、夢見る者たちの一人でもあります」
夢華と名乗った彼女は、私の手を取った。その瞬間、様々な記憶が走馬灯のように駆け巡る。かつての私たちの出会い、共に過ごした日々、そして別れ。すべてが鮮明に蘇ってきた。
「あなたを助けたい」私は必死に訴える。「夢の世界の呪縛から、解放してあげたい」
夢華は、悲しげな笑みを浮かべた。「私たちは、もう長い間この世界に囚われています。でも、あなたには希望があるのよ」
「どういうことですか?」
「呪縛を解く鍵は、私たち夢見る者の力の結集です」夢華は真剣な眼差しで語り始めた。「皆の想いを一つにすることで、夢と現実の境界を越えることができる。そして、その力を持つ者こそ、あなたなのです」
夢華の言葉に、私は息をのんだ。夢見る者たちとの絆が、ここまで私を導いてくれたのだ。そして、その絆こそが、呪縛を解く鍵なのかもしれない。
「一緒に、皆を夢の世界から解放しましょう」私は決意を込めて言った。「そして、あなたともう一度、現実の世界で会いたい」
私は、夢華の手を強く握りしめた。彼女もまた、私の手に力を込める。
「私はあなたを信じています」夢華の瞳に、希望の光が宿る。「必ず、この呪縛を解き放ちましょう」
そのとき、私たちの周りで不思議な現象が起こり始めた。空が明るくなり、建物の輪郭がはっきりとしてくる。まるで、夢と現実の境界が薄れていくかのようだ。
「始まったわ」夢華が呟く。「あなたの力が、この世界を変えようとしています」
私は深呼吸をし、目を閉じた。心の中で、夢見る者たちの想いを感じる。彼らの希望、悲しみ、そして解放への渇望。すべてが私の中に流れ込んでくる。
「さあ、行きましょう」私は夢華に告げた。「皆を救うために、そして私たちの新たな物語を始めるために」
二人で力を合わせれば、必ず道は開けるはずだ。私は、そう信じていた。そして、その信念が現実となる瞬間が、今まさに訪れようとしていた。
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