第二章 第七話 過去
私は健太先輩へのもやもやした気持ちを心の奥隅に隠して、忘れる事にした。
いつまでももやもやしててもつまらない!
まだ少しだけ考えてしまうけれど、本を読めば忘れるはず。きっと本なら私を励ましてくれる。
そう思って本を開いた。
いつでも期待通り、私に色々な感情を教えてくれた本。
〜〜〜
私が8歳の時の7月7日。
私は母と七夕祭に行っていた。父は珍しく休日出勤していた。
私は七夕で思いっ切り楽しんだ。りんご飴を食べたり、パレードを見たり、短冊に願い事を書いたり……。
母とテンション高めで帰ってきたら、留守電がたくさん入っていた。
その日はいつも休日出勤の時は17時には家にいる父がまだ18時になっても帰っていなかった。
留守電を再生する時、嫌な予感がした。
「ピー。メッセージを再生します」
そのメッセージは、父が車にはねられて意識不明の重体だと言っていた。
私も母も、信じられなかった。
あんなに元気にお弁当を持っていった父がはねられたなんて……。
私達は急いで中央病院に行った。
「お父さん! お父さん! 聞こえる?
私は必死に叫んだ。叫んで叫んで叫びまくった。
でも返事はしてくれなかった。
だからずっと父の温かい手を握っていた。
目覚めてくれる事を願って。ずっと、何時間も何時間も。
そうしたら21時頃に、奇跡的に意識が戻った。
「お父さん! 明美だよ! 聞こえる?」
父は弱々しい声で
「あ、けみ? あぁ、明美……。ごめんな、ごめんな、本当にごめんな……」
「何で? 何でお父さんが謝るの?」
「ごめんな、明美の中学生になる姿をみてやれなくて。立派に大人になる姿を見届けられなくて」
「……お父さんは元気になって、私のご飯、食べるんでしょ? 一緒にお酒、飲むんでしょ? ねえ!」
「お父さんはもうすぐ死ぬ。だから、頼みを聞いてくれ」
私はゆっくりと頷いた。
「明美、お前はまっすぐ、純粋に生き……」
突然、父の動きが止まった。
機械がピーピーなっている。何? 何でお父さん何も言わないの? 何で息してないの?
「お父さん! お父さん!」
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