第二章 第五話 恋バナブーム

 俺は見川さん(以下、千尋ちひろ)と付き合ってから1ヶ月たっていた。

 俺達は順調で、何度かデートなんかにも行っていた。

 千尋は付き合ってからイメチェンした。長くて目元が見えなかった前髪を切り、ロングヘアーから、ミディアムヘアーにした。

 確かに俺の好みではあるが、わざわざ切らなくても良かったに。千尋は充分可愛いから。

 気付いたら俺は千尋に夢中になっていた。

「ピロン♪」

「やっほ! 明日って会える?」

千尋からLINEが来ていた。返事はもちろん

「良いよ いつもの公園?」

「うん! 10時に来て!」

「了解」

「楽しみ〜!」

 本当に楽しみだ。

 でもなんだろうか。どうしても桜田さんの笑顔が頭から離れない。

 まさか……。

***

 はぁ、良かったぁ。みこが無事に仲直り出来て。本当に良かった。

 ……そういえば、健太先輩は見川先輩と順調だろうか。もう私には関係ないのだが、思春期の女子には気になるらしい。私の斜め前の席で女子が群がり、乙女らしい会話をしている。あの先輩はああ、あの先輩はこう、と、良く飽きないものだな。

 「恋バナ」は最近のブームなのか、皆すっかり夢中だ。中には顔が赤くなっている程興奮している子もいる。そんなに楽しいものなのか。

 ……わからん。とりあえず、本を読もう。

 「キーンコーンカーンコーン……」

 もうこんな時間。そろそろ帰るか。

〜〜〜

 「あ、健太先輩! こんにちは」

昇降口で、健太先輩に会った。

「あ、桜田さん、こんにちは。ずいぶん遅いね」

「はい……、本を読んでたらうっかりこんな時間になってて」

「あはは、また?」

 そういえば、初めて会った時も遅くに会ったっけ。ちょっと懐かしい。

 健太先輩は、見川先輩とどうなんだろう。うまくいってるのかな。

 「先輩、見川先輩とはどうですか? 順調ですよねー」

思い切って聞いてみた。

 そんな踏み込んだ質問にも笑顔で返してくれた。

「うん、明日会うんだ。楽しみなんだ」

「へぇ、いいですね! 楽しんで下さい」

「ありがとう」

 なんやかんやで一緒に帰ってしまった。先輩には彼女がいるのに!

 またね、と言う先輩、ちょっとだけドキッとしたな。って私! 人の物は取っちゃだめだめ。

***

 久しぶりに桜田さんに会った。

 俺は滅茶苦茶嬉しかったが、桜田さんはそうでもなさそう。少しがっかり。

 俺の一方的な話もずっと笑顔で聞いていてくれる、あの優しさは天使か、女神か。

 

 


 

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