第24話 真夜中のプール
時佳(ときか)は、静かな真夜中のプールに立っていた。冷たい夜風が肌に触れ、心地よい感覚が広がる。里菜(りな)に水着を預け、彼女は裸のまま、自由に水の中へ滑り込んだ。プールの水は思ったよりも温かく、彼女の身体をやさしく包み込む。
水中で優雅に腕を伸ばし、足を蹴り、静かに泳ぎ続けると、頭上には満天の星空が広がっていた。夜空に輝く無数の星々が、水面に反射してキラキラと光り、まるでプールそのものが宇宙と一体化したかのようだった。
時佳(心の声)
「美しい…こんなに静かな夜、いつまでもここにいたいな…」
その時、近くで水をかく音が聞こえた。振り向くと、里菜がゆっくりと時佳に近づいてくる。
里菜
「もう水着、着る?」
時佳は微笑みながら首を振った。
時佳
「もう少し、こうしていたいの。」
彼女の言葉は、まるで自分自身にも言い聞かせるようだった。まだ、この解放感を手放したくなかった。肌に感じる水の感触、夜空に溶け込むような静けさ…すべてが今、自分の一部となっているかのようだった。
そしてその瞬間、何かが彼女の内側で弾けた。時佳はふと、言葉にならない感覚に包まれた。星空を仰ぎながら、彼女は次第に深い悟りに引き込まれていった。
それは、彼女が今まで追い求めていた自由そのものだった。水に浮かびながら、時佳は突然気づいたのだ。自由とは、外的な条件や束縛から解放されることだけではない。自分自身の内なる声を聞き、心の奥底にある本当の自分を受け入れること。ありのままでいることを許すこと。今この瞬間の喜びや感覚を、心から味わい尽くすことが本当の自由なのだと。
時佳(心の声)
「自由って、こういうことだったんだ。何かに縛られないだけじゃなくて、自分の存在そのものを感じること。」
彼女は目を閉じ、星空の下でゆっくりと深呼吸した。その瞬間、彼女は全ての重荷から解放され、ただ自分でいることの幸福を感じていた。
遠くから里菜の声が再び聞こえてくる。
里菜
「時佳、大丈夫?」
時佳はゆっくりと目を開け、微笑んだ。
時佳
「うん、大丈夫。今、とっても自由を感じてる。」
その言葉は、今までの自分を超えて、新しい自分への扉を開いた瞬間だった。
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