前のエピソード――第19話　憑依

　戦後、武田家の領地では一時的な平和が訪れたが、その陰では新たな脅威が生まれつつあった。三条殿は、戦場での経験から得た自信と神々の教えを胸に刻みながらも、まだ成し遂げなければならない使命があることを悟る。彼女の前に立ちはだかるのは、ただの敵ではなく、信虎が隠し持っていた秘密――武田家の崩壊に繋がる陰謀の一端だった。

　三条殿は、信虎に仕えていた古参の武士、曽根昌久から、彼の死に際に告げられた言葉を思い出す。「武田家の裏に隠されたもう一つの真実を見よ。それが家の運命を左右する」と。彼女はその真実を探るため、密かに行動を開始する。周囲には、彼女が戦の疲れで身を引いたかのように見せかけるが、実際はその裏で、さらなる知恵と力を磨いていた。

　再び神々との邂逅が訪れる。今度は伊吹山ではなく、甲府の城内にある神聖な祠で、彼女は禍々しい気配を感じ取る。その場に現れたのは、両面宿儺の霊だ。彼はかつて語った言葉とは裏腹に、今度は三条殿に試練を与える。「運命は、選択により大きく左右される。今、選ぶべき道は一つではない」と告げ、彼女に新たな選択を迫る。

　三条殿が探り当てたのは、武田家内に巣食う内通者たちの存在だった。彼らは密かに敵勢力と通じ、武田家の崩壊を狙っていた。その中心にいたのは、信虎に近い一人の家臣だった。この裏切りの事実を前に、三条殿は苦悩する――この情報を誰に伝えるべきか、晴信であろうか？それとも彼女自身の手で裁きを下すべきか？

　三条殿は決断を下す。彼女は再び自らの剣を取り、内通者たちに立ち向かうことを選ぶ。武田家の未来のため、そして信虎との戦いを超えた新たな使命を果たすため、彼女は自身の力を試す新たな戦場へと向かうのだった。

　### シーン 19: 密かな計画

三条殿は、内通者たちの動きを監視するために信頼できる家臣たちを集めた。彼女は、彼らに秘密裏に調査を行うよう指示を出し、内通者の手がかりを掴むための計画を練る。彼女の決意は固く、武田家の未来を守るためには、何が何でも真実を暴かなければならなかった。

### シーン 20: 暗闇の中の陰謀

数日後、三条殿は内通者の一人が、敵勢力との接触を計画していることを突き止める。彼女は、敵の拠点を突き止め、そこに潜入する決意を固めた。夜、静まり返った城内から、彼女は音もなく姿を消す。彼女の心には神々の教えが宿っており、運命を変えるための力が湧いていた。

### シーン 21: 敵の根城へ

三条殿は敵の隠れ家へとたどり着く。そこには、内通者たちと共に敵の軍勢が集まっていた。彼女は周囲を伺いながら、隙を見つけて一人ずつ仕留めていく。心の中で、「真の力は心の中にある」との教えを繰り返し、自らの恐れを克服していく。

### シーン 22: 決戦の時

ついに、三条殿は内通者の首謀者と対峙する。彼はかつて信虎の信任を受けていた男で、彼女に冷ややかな笑みを浮かべていた。「お前ごときが武田家を救えると思っているのか？」と挑発する彼に、三条殿は毅然として答える。「私がこの家を守る。それが私の使命だ！」

### シーン 23: 終わりなき戦い

二人の戦いは激しさを増し、周囲の敵も巻き込まれていく。三条殿は神々から授けられた力を駆使し、内通者の巧妙な罠を打破する。彼女の剣は光を放ち、決して引かない強さを持っていた。ついに、内通者を討ち取った瞬間、彼女は勝利の声を上げる。

### シーン 24: 新たな平和の兆し

戦いが終わり、三条殿は武田家に戻る。彼女は家臣たちに勝利を伝え、家の存続を守ったことを報告する。晴信は彼女の勇敢な行動を称賛し、共に新たな時代を築くことを誓う。信虎の存在は依然として影を落としていたが、三条殿は希望を持って未来を見つめる。

### シーン 25: 未来への道筋

三条殿は、これからの武田家の運命を背負う覚悟を決める。神々からの教えを胸に、彼女はさらなる成長を遂げていく。彼女の旅は終わらず、未来には多くの試練が待ち受けているが、彼女は確信を持って進む。自らの力を信じ、心の声に従い、彼女は新たな使命を全うするために歩き出すのだった。

　天文8年（1539年）に発生した大雨・洪水、蝗害、そしてその後の飢饉と疫病は、戦国時代の日本に甚大な影響を及ぼした。この凶事は特に京都を中心に広がり、多くの民が命を落とした。社会の基盤が崩れ、人々の不安が高まる中で、朝廷や幕府は効果的な救済策を打ち出すことができず、民衆の苦悩は深まるばかりであった。

その中で、三条殿と大井夫人という2人の名高い女性が、困難な時代に立ち上がる。三条殿は朝廷の中心に位置し、祈祷や写経を通じて人々の救済を願う。彼女は政治的にも影響力があり、飢饉の対策に尽力した。しかし、政治的な混乱や幕府の無力さにより、思うように状況を改善することができなかった。

一方、大井夫人は甲斐の地で武田信虎の妻として、領内の飢饉対策を積極的に進めていた。彼女は農民たちのために食糧を提供し、病人を介抱するための施設を設けるなど、実際の行動で人々を支えた。しかし、飢饉に苦しむ民の間で不満が高まり、彼女の息子である晴信（後の武田信玄）は、父信虎に対する反発を強めることになる。晴信は家臣たちと共に、この未曾有の危機を打開するための行動に出る。

天文10年（1541年）、ついに晴信は父信虎を追放し、甲斐の地を自ら治めることを決意する。飢饉や疫病がもたらした混乱の中で、彼の決断は地域の支配体制に大きな変化をもたらし、その後の武田家の繁栄へと繋がっていく。

こうして、歴史の波に翻弄されながらも、三条殿と大井夫人はそれぞれの場所で民を守るために戦った。しかし、彼女たちの努力だけでは、時代の流れを変えることはできず、大きな犠牲が伴った。それでも彼女たちの行動は、後の世に語り継がれ、戦国時代における女性の力と意志を示す象徴となった。