第36話 玲奈の視点(6):迫る決断の瞬間

お泊り会が計画されたとき、私はこの機会を絶好のチャンスだと思った。


万が一男だった時に一緒に泊まるのは玲奈にとって好ましいことではなかったが、彩香ともっと近づくことができ、さらに彼女の本当の姿に迫ることができるはず。それに、男だからと言って何も知らない桜や霞を見捨てるようなこともできない。


温泉旅行で感じた疑念を確認するためには、彼女と長時間一緒に過ごし、リラックスした瞬間を捉える必要がある。お泊り会は、その絶好の機会だった。


お泊り会の夜、彩香は再び他のメンバーとは違う態度を見せていた。桜や霞がリラックスして布団に入り、はしゃいでいる中で、彩香は少し距離を置いていた。特に、寝る前の話題が体験談や恋愛の話に移ると、彩香は明らかに緊張した様子を見せた。


布団に入るときも、他のメンバーたちは自然にリラックスした雰囲気だったが、彩香は布団の中で微妙な距離を保ち、体をできるだけ隠すようにしていた。それは、まるで自分の正体がバレるのを恐れているような動きだった。


「やっぱり、彼女は男なのかもしれない…」


私の中でその確信がさらに強まっていった。


翌朝、みんなが帰る準備をしていたとき、私はついに決心した。この機会を逃すことはできない。彩香と直接話をするタイミングを見計らい、真実を確かめなければならない。


玄関で靴を履くとき、私は彩香のそばに立ち、静かに声をかけた。


「彩香、ちょっと話せる?」


彩香は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに微笑んで「うん、何?」と答えた。その微笑みの裏には、私が見逃せない一瞬の戸惑いが感じられた。彼女はきっと、私が何を言おうとしているのか察しているはずだ。


「昨日の夜、何かおかしかったよね。」


私はストレートに切り出した。彩香が一瞬固まるのを見て、私はさらに踏み込む。


「ずっと様子がおかしかった。寝るときも、話しているときも。普段の彩香とは少し違う感じがしたんだ。何か隠していることがあるんじゃない?」


彩香は言葉に詰まったようだった。彼女の顔には微かな緊張が浮かび、その瞬間、私はますます確信を持った。何かを隠しているのは間違いない。


「彩香、本当に大丈夫なの?もし何か悩んでいるなら、教えてほしい。私は…彩香のことをもっと理解したい。」


私はその言葉を静かに、しかし力強く伝えた。彼女に無理に問い詰めるつもりはない。でも、私は本当に彼女のことを知りたかった。


彩香の目が揺れ、彼女は視線を下に落とした。その姿を見て、私は彼女が限界に追い詰められていることを感じた。もうこれ以上隠し通すことができないと、彼女自身も気づいているのかもしれない。


彩香が答えようとしているその瞬間、私の心臓は激しく鼓動していた。彼女が何を言うのか、その答えを聞くのが怖い気持ちもあった。


もし、私が考えている通り彩香が男だったとしたら――私たちの関係はどうなるのだろう?


彼女が何を言うのか、その一言で全てが変わるかもしれない。私の直感が正しいのか、それとも私の思い過ごしだったのか。


私は息を潜め、彩香の口から出る言葉を待っていた――。

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