第25話 展示会当日、仲間との絆が生んだ成功

展示会当日がやってきた。サークルのメンバーたちは、これまで準備を重ねてきた作品を発表するため、早朝から会場に集まっていた。智也もまた、妹・彩香としてサークルメンバーの一員として準備に追われていたが、展示会が成功するかどうか、内心では不安を抱えていた。


展示会場は、大学の広々としたギャラリースペースで、多くの学生や教授、外部の来場者たちが訪れる予定だった。サークルのメンバーたちはそれぞれ自分の作品を展示し、全体のレイアウトや見栄えを調整していた。


「すごいね、思った以上に多くの人が来そう。」


桜が少し緊張した様子で話しかけてきた。智也も、展示会場を見渡しながらその大きなスケールに圧倒されていた。


「うん、みんなで頑張ったし、うまくいくといいね。」


智也はそう答えたものの、心の中では「彩香」としての自分がどれだけこの展示会に貢献できるか、まだ自信が持てずにいた。


サークルのブースには、桜の明るく大胆な抽象画、玲奈の細密な風景画、そして霞の穏やかな水彩画が並んでいた。それぞれの作品が個性を反映し、展示会場に彩りを添えていた。


智也もまた、サークルのコラボレーション作品に参加していた。自分の役割を果たすことができたことにホッとしつつも、周囲の才能あふれるメンバーたちと比べると、まだ自分に足りない部分が多いと感じていた。


「やっぱりみんなすごいな… 俺ももっと頑張らないと。」


智也はそう自分に言い聞かせながら、展示会場を歩き回り、来場者たちの反応を観察していた。


展示会が進む中、玲奈が智也のそばにやってきた。彼女はいつも通り冷静な表情をしていたが、その目はどこか智也を気にかけているようにも見えた。


「彩香、みんなの反応はどう?」


玲奈の問いかけに、智也は少し緊張しながらも微笑みを浮かべて答えた。


「うん、みんなの興味を持ってみてくれているよ。作品がすごくいいから、きっと成功すると思うよ。」


玲奈は智也の言葉を聞きながら、しばらく無言で周りを見渡していた。そして、ふと静かな声で言った。


「彩香も、いい作品を作ったね。あなたらしいと思う。」


その言葉に、智也は驚きと共に少し照れくささを感じた。玲奈から直接褒められることはあまりなかったため、その一言が智也の心に大きな影響を与えた。


「ありがとう、玲奈… まだまだ未熟だけど、みんなのおかげで何とかここまで来られたよ。」


智也はそう答えたが、玲奈の言葉が彼にとっては大きな支えとなっていた。


展示会は大成功に終わった。来場者たちからも好評で、サークルメンバー全員が自分の作品に自信を持つことができた。特に、サークル全体で取り組んだコラボレーション作品は多くの注目を集め、智也もその一員として自分の存在意義を感じることができた。


「本当に…このサークルに参加して良かった。」


智也は心の中でそうつぶやきながら、サークルメンバーたちと共に成功を喜び合った。


展示会が無事に終わり、智也の心に少し余裕が生まれた。しかし、玲奈とのやり取りの中で、彼女がまだ完全に疑念を捨てたわけではないことに気づいていた。玲奈の鋭い観察眼は、今後も智也の行動を見逃さないだろう。


智也はその疑問が頭から離れず、今後も玲奈との距離感に気をつけながら過ごすことになるだろうと感じていた。


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