第23話 新たな目標!展示会へ向けた挑戦の始まり
玲奈とのやり取りで、彼女の疑念が一度保留されたことで、智也は少し安心することができた。とはいえ、完全に気を抜くわけにはいかない。サークル活動が再び本格化し、次なる展示会に向けたプロジェクトが始まった。
サークル内では次の展示会が大きな目標として掲げられ、メンバーたちはそれぞれのアイデアを出し合いながら準備を進めていた。桜は、展示会に向けてさらにユニークな作品を作りたいと張り切っており、玲奈もその冷静さを失わずに自分の作品に没頭していた。
智也もまた、妹・彩香として参加している以上、何かしらの形でサークルに貢献しなければならないと感じていた。しかし、彼にとっては芸術の経験が少なく、作品を作り上げることが大きな挑戦だった。
智也はサークル部室にこもり、スケッチブックを広げてアイデアを練っていた。しかし、思うように形が浮かばず、筆が止まってしまうことが多かった。美術の経験がほとんどない智也にとって、自分の中にある何かを表現することは難題だった。
「どうすればいいんだ…俺にできることって何だろう?」
智也は何度も自問自答しながら、妹・彩香のアドバイスを思い出していた。
「自分の感じたままを描けばいいんだよ、難しく考えなくても。」
彩香の言葉はシンプルで、桜が言っていたものの受け売りであることは明白だったが、智也にとってはそれが重要なヒントとなっていた。彼は、何か完璧なものを作ろうとするのではなく、自分が感じたことや思いをそのまま表現することに挑戦しようと決めた。
そんな中、智也が悩んでいる様子を見かねた桜と霞が声をかけてくれた。
「彩香、何か手伝えることがあったら言ってね!一緒にやったら、きっともっといい作品ができるよ!」
桜はいつも元気いっぱいで、彼女の明るさに智也は少し気が楽になった。霞も、優しい笑顔で智也を見つめていた。
「焦らず、自分のペースで進めていけばいいよ。私たちも手伝うから。」
霞の言葉に、智也は心が温かくなり、もう少し頑張ってみようと思えた。サークルの仲間たちが自分を支えてくれるという事実が、智也にとって大きな励みになっていた。
時間が経つにつれ、智也も少しずつ自分の作品に向き合うことができるようになった。まだ自信があるわけではないが、他のメンバーたちと共に何かを作り上げるという目標が、彼を前に進めていた。
サークルのメンバーたちも、それぞれの作品に取り組みながら、互いにアイデアを出し合い、サポートし合っていた。次の展示会に向けて、サークル全体が一つの目標に向かって動き始めた。
玲奈との関係も、旅行後しばらくは特に大きな変化はなかった。
彼女は智也に対して特別な疑念を抱いている様子は見せず、普段通りに接していた。彼女の冷静さと洞察力は相変わらずだったが、智也にとってはその距離感がちょうど良いと感じていた。
「玲奈がこれ以上、深く突っ込んでこないのは助かるな…」
智也は内心で安堵しつつも、常に気を張り続ける生活に慣れていくしかないと感じていた。
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