3 中級魔獣【ボランザ】討伐任務
中級魔族【ボランザ】。
ゲーム本編では魔王軍が使役する強力な魔獣の一体として登場する。
序盤においては中ボス格、中盤から終盤にかけては主人公パーティが強くなっていくのに比例して、雑魚へと格落ちする敵だ。
とはいえ、下級魔族である俺からすれば、圧倒的に格上と言っていい相手だろう。
【ボランザ】は四足獣型のモンスターであり、強固な装甲と口から吐く火炎弾が主な武器になる。
通常攻撃はダメージが半分以上カットされ、しかもHP自体が豊富にあるため、簡単には倒せない。
ただし――。
「首の後ろに装甲がついていない部分があって、そこを集中的に攻撃すれば、比較的短時間で、多少火力が劣るキャラでも倒すことができる――だったな」
俺は脳内で【ボランザ】の攻略法を繰り返した。
奴の弱点をつくことで、下級魔族である俺でも倒すチャンスが生まれる――。
そして【ボランザ】を倒すことができれば、大量の経験値を得られるはずだ。
今よりも、もッと大きな力を得るために。
強くなって俺自身を、そしてラヴィニア隊長を守るために。
俺は必ず【ボランザ】を倒してみせる――。
討伐任務には各騎士団から志望者が集められ、全部で三十人ほどの隊が編成されていた。
第七騎士団3番隊からは俺の他に四名が参加するということだ。
で、その混成部隊は現在、とある山のふもとの草原で待機していた。
この先に目標である魔獣がいるのだ。
と、
「お前がゼルか」
俺の前に一人の美少女がやって来た。
ショートヘアにした銀髪に褐色の肌、勝ち気そうな顔立ち。
小柄な体に露出の多い黒衣をまとい、その体つきは引き締まっていた。
左右の腰に一本ずつ剣を下げている。
二刀流スタイルだろうか?
「俺はミラ。新米は先輩である俺の命令に絶対服従だ。いいな!」
俺っ娘の美少女兵士か……うん、アリだな全然アリ。
「返事はどうした!」
「は、はい!」
俺は慌てて返事をした。
しまった、つい見とれてしまった。
「ボーッとすんじゃねーぞ、ったく」
「すみません、見とれてしまって」
俺は思わず本音をもらしてしまった。
「ハア? み、見とれたって、あたし……じゃなかった、俺にか!?」
ミラが顔を真っ赤にした。
意外と初心らしい。
っていうか、今『あたし』って言いかけたよな?
もしかして、俺っ娘はキャラ作りか……?
ゲームではこの第七騎士団は速攻で全滅するし、台詞らしい台詞さえ出てこないから、各兵士のキャラ付けなんて全く分からない。
こうして見てみると、意外とキャラ立ちしてるっぽいな。
「なんだよ?」
「いや、えっと……」
思わず口ごもると、なぜかミラはまた顔を赤くした。
ベタだけど萌えるよなぁ、うん。
と、そんな俺をミラがにらみ、
「またあたしに見とれてたのかよ!?」
「ミラ先輩、一人称違ってる」
「えっ? あ、そっか、俺だった……うん、俺って言わなきゃな」
「別に『あたし』でいいんじゃ……」
「ハア? 俺は『俺っ娘』に憧れてるんだよ!」
「そ、そうなんだ……」
あ、しまった、敬語忘れてた。
「……ま、敬語はいいや。俺も堅苦しいのは苦手だ。けど、俺の方が先輩だし、強いからな。敬意は払えよ」
「了解」
俺は苦笑した。
「お前が新米のゼルか。俺はバロールだ」
と、次に俺に話しかけてきたのは、すらりとした青年だった。
外見年齢は二十代半ばくらいか。
金髪碧眼で眼鏡をかけた生真面目そうな顔立ちだ。
「ちなみに俺は今でこそ第七騎士団に身を落としているが、かつては栄光の第一騎士団に所属したこともあるんだぜ」
「第一騎士団……ってすごいんですか?」
「すごい! めちゃくちゃすごい!」
バロールが身を乗り出した。
眼鏡の奥の瞳が爛々としている。
「新入りのお前は知らないかもしれないから言っておくと、魔王軍の騎士団うち最強のメンバーが集うのが第一騎士団なんだ。俺はそこに所属していた。その意味が分かるな?」
「元エリート……ですか?」
「ぐっ……『元』か」
バロールが顔をこわばらせた。
おっと、しまった。
『元』は余計だったな。
「すごいキャリアってことですね!」
「そう、そのとおり! 分かってるじゃないか!」
たちまちバロールは上機嫌になった。
うん、なんというか……分かりやすい人だ。
人じゃなくて魔族だけど。
あと二名はどこにいるんだろう――。
と、周囲を見回したところで、
「目標への接近を開始する。各自、隊列を崩さず前進――」
今回の作戦を取りまとめるリザーナ隊長が指示を出した。
理知的な雰囲気の三十代半ばくらいの女だ。
まあ、例によってそれは外見年齢の話なので、実際には数百歳とかだと思うが。
俺たちは三列になり、進んでいく。
魔獣の予想出現ポイントは、この先の草原だ。
「――いた」
草原を無防備に歩いている魔獣。
ちょうどこちらに背を向けていて隙だらけだ。
「でかいな……」
俺は小さくつぶやいた。
全長は30メートルを超えている。
弱点を剣で斬りつけたところで、あんなデカいやつを倒せるんだろうか?
今さらながら不安になる。
「――いや、倒すんだ。最初に決意したじゃないか」
俺は自分を奮い立たせた。
と、
リザーナ隊長が手を挙げた。
『今から三分後に』
『一斉攻撃』
魔獣に気づかれないよう、ハンドサインで俺たちに指示を与えるようだ。
『同時に散開、包囲して逃がさないようにする』
『そのうえで確実に仕留める』
「了解だ、リザーナ隊長……」
俺は口の中でつぶやいた。
心臓がドクンドクンと早鐘を打っている。
やっぱり緊張する。
前世では味わったことのない『命懸けの戦い』だ。
演習といっても実戦と大差はない。
一つの判断ミスで死ぬかもしれない。
上手く立ち回らなければ死ぬかもしれない。
せっかく生まれ変わったのに、今回の生も突然終わってしまうかもしれない――。
それらの恐怖が俺の体をガチガチにこわばらせていた。
「……いや、大丈夫だ」
『攻略法』通りに戦うんだ。
必ず【ボランザ】を倒してみせる――。
****
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