第15話

錆びた扉の開く音がした。







息も絶え絶えに突っ伏したまま、目線だけを必死に上げた。


屈強な格子の向こうにある鉄製の扉が開いていた。


そしてドアのすぐ手前に、薄汚れた白いスニーカーが見えた。


その上に伸びる、色褪せたジーンズ。


恐らく、男の人の足───。







その足ははたと立ち止まると、暫くわたしを観察していた。


だけど──。


何か訳の分からない言葉を叫んで、慌てたようにまた扉の向こうに駆け出して行った。







苦しみながらも、今の状況を把握する。


あのスニーカーの叫んだ言葉、日本語じゃなかった。


多分…多分だけど。







───あれは、中国語だ。

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