第12話

「聞いてる?アゲハ?」






突然視界に飛び込んで来た、2つのあどけないどんぐり目。


まさに童顔という言葉がピッタリな、友達のユイのものだった。






「──あれ、なんだっけ?」


ユイの話しなんて全く聞いてなかったわたしは、少し慌てた声を出す。


「まったく、何見てたのよ。」


ユイは顔をしかめ、わたしが凝視していた先に目をやったけど、別に目ぼしいものも見つからなかった様子でまたこちらに向き直った。







「コウ先輩、今日も来てるねっ、て話してたんだよ。」


そう答えたのは、もう一人の友達のユリナ。


肩下まで垂れた、綺麗な栗色の巻き髪を気だるげに指先で弄びながら、チラリとわたしを見た。






「ああ、コウ先輩。」


わたしはそう答え、廊下の方に目をやる。


なるほど、今日も見えた柔らかそうな薄茶色の髪の毛。


長身の身体を廊下の壁に持たせかけて、じっとこちらを見ている。


こちら、と言っても何を見ているのか分からない、ただわたし達のいる教室にぼんやりと視線を向けている。

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