乙女ゲームの主人公に惚れられて親友になれません!
@shionn-0125
プロローグ 謎のナンパ女サラ・パルモ・ライラックとの出逢い
いつのまにか自分の性格がきらいになって、
自分の顔がきらいになって、
他人が好む私が好きになった。
アンジュという、天使を意味する名前を持つ私にとって、人を魅了するのはこの若くてハリがある身体と整った顔があれば全く難しいことではない。
男性には身体を、女性にはさらに心を預けてみると
大抵の人は私のことを見てくれる。
軽い愛を育んで、私はそれでいいのだ。
でも。
でも、私だけを求める人間はどこにもいない。
性愛でも友愛でもなんでもいいから私だけの独り占めできる想いが本当は1番欲しいんだ。
「今日はもう終わりにしようかしら‥」
寮監にバレるのも厄介だし、そろそろ‥
「あ、あ、あのっ!!!!!
私たちどこかで会ったことないですか…!」
街の雑音にも負けない声が正面から聞こえた。
こんな夜の街には似合わないかわいい女の子が
私の目を見てそう言ったような気がする。
「…えーと、‥あ。私に言ってるの?」
「っ!はい‥
どこがでわ、わたひとお茶しませんか…!」
暗がりでも分かるくらい顔を赤くしている。
「そう…。ずいぶんと可愛いナンパね。
会ったことがあるかは分からないけれど、
あなたのこと教えてよ。」
「…ねぇ、もう帰らない?
あなた明日は早いって言ってたじゃない
送るから、ね?」
バーに入ってからどれくらい経っただろうか。
この子の名前はサラ、
サラ・パルモ・ライラックというらしい。
髪色はきれいな紫色で2つに縛ってまとめている。
初対面なのに本名を教えてくれて警戒心のない子だなと思った。
それにしても中々お酒強いな、この子‥。
もう10杯は超えているはずだけどケロッとしていて、私があそこでなにをしていたのかとか、好みのタイプだとか色んなことを質問してきた。
何時間経っただろう、
20杯目を超えたあたりでやっと帰る気になったのか
「お姉さん。こんな時間に私みたいな可愛い子が外歩いてたら危ないですよね??
だから家まで送ってください。」
と堂々とした態度で言ってきた。
元々一緒に帰る予定ではあったけど、いざこんなふうに言われると少し置いていきたくなってきた。
年下に見えたというのもあって私がお会計をすませ、
知り合いに目配せをしながらバーをあとにした。
「ここでいいかしら。」
「はい、だいじょうぶれす‥。」
サラの家の前で足を止めた。
彼女は今ホテルの一室を借りているらしい。
この勢いで口説いてしまってもよかったけど、
あどけない彼女にするには気が引けた。
「明日の用事は大丈夫そう?」
「それはだいじょうぶ!
うまくいくようになってるなので!」
ふらつきながらも自信満々な様子だった。
「そう。じゃあ、またどこかで会いましょう」
「…んふふ、そうですね!
じゃあまた今度、あんじゅさんだいすきです〜」
「えぇ、私もすきよ。」
抱きついてきたサラの瞼にキスをしてそのまま別れを告げた。
大げさに手を振る彼女を背に私は寮へと足を進める。
無邪気な子どものような不思議な娘だった。
ナンパの理由も分からずじまいだったけど、追求するほどのものじゃない。
…でも、私あの子に自分の名前なんて教えたっけ?
私もあの娘の勢いに流されて、
お酒にのまれてしまったのかもしれない。
乙女ゲームの主人公に惚れられて親友になれません! @shionn-0125
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