第11話 早朝、インターネットの片隅で

 社会人ゲーマーの朝は早い。

 そりゃ当然だ。無いゲーム時間を強引に捻出しているのだから、朝は早いし夜は遅いに決まっている。


 朝起きたら真っ先にやること、それはゲーム情報の収集だ。

 時間が限られているからこそ、段取りよく行動しなければならない。比較的時間がとりにくい朝に情報収集をすべて終わらせてしまい、ガッツリと時間のある夜に集中してプレイする。こうすることで時間を有効活用できるのだ。


 情報収集を上手に行うコツとして、SNSを活用するというのが挙げられる。同じゲームをプレイする人同士でグループチャットを結成し、学生などの時間的余裕のある人に最新情報を共有してもらうといった手法だ。私も例にもれず、グループチャットのメンバーだ。ルーティーン通り、チャットルームをチェックする。


『プロジェクトOne Night Dream、詳細発表!』

『ここMAKIさんいるし、曲の内容ちょっとくらい教えてもらえないかなぁ』


 チャットの中に踊るその文字を見て、私に期待しているのがうかがえる。

 ちなみに守秘義務の関係があるのでここのメンバーよりも早く詳細は受けっとているが、伝えることはできない。彼の発言自体まぁ軽い冗談の類だ。


 話題はその後もプロジェクトONDの話で持ちっきりだ。


『機械でも対応できないほどの素早い曲、きっと難しいんでしょうね』

『MAKIさんでもできるのかなぁ……?』


 その後はだんだんと『MAKIは機械に勝利するのは難しい』といった雰囲気が立ち込めてきた。


 しかし、その流れを打破する文章があった。


『MAKIなら、大丈夫だ。俺の認める、最高のライバルなんだからな』


 その発言の投稿者は、なんとSKYさん。同じチャットに所属しているのは知っていましたけど、私と同じく社会人で忙しいので自ら発言することは少ないんですよね。


 私はちょっとビックリしながらも、チャットログの続きを読む。


『SKYさん、プロポーズのつもりですかw?』

『そんなのじゃねえ。俺はMAKIを信じる。むしろ俺たちは信じることしかできないんだよ』

『いい返事がもらえるといいですね』


 チャット上ではSKYさんの発言が完全にネタとして認識されているが、私にはその言葉が本気のものに感じられた。


 あの時のゲーセン、そして今日のチャットルーム。

 ――むしろSKYさんのために全力で戦う。そのくらいの心意気でもいいのかもしれない。


 信じられているのなら、たっぷりお返ししてあげないといけないと思ったから。

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