第9話 公式生放送
「三、二、一、どうぞー」
スタッフさんのその言葉で、遠藤さんがしゃべりだす。
「はいどうも、公式生放送でーす! ゲームセンター版プロデューサー、遠藤がお届けしまーす。今日は重大発表がありますよ!」
カメラの裏でスマホを触っている私は、配信のコメント欄を確認する。
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・どうもー
・遠藤さんだ
・重大発表?
・わざわざ言う!?
・いつも重大発表しかないんだが
・発表楽しみ
……
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「まずはいつも通り新曲の公開から! スライドお願いします」
この合図で放送画面が切り替わり、三つの曲名が表示される。いつも通りの放送の滑り出しだ。
「この三曲が来週実装されますー!」――
生放送が始まってから三十分ほど経っただろうか、いよいよ私の出番だ。
「さて、皆さんお待ちかね。重大発表の時間だぁ!」
配信にスマホは持ち込めないので、もうコメント欄は見ることができない。
「さて、まずはスペシャルゲストに出てもらいましょう! MAKIさん、どうぞー!」
その言葉で、私はカメラの表へと歩みだす。
「こんにちは、先日の
「今日は我らが日本チャンピオン・MAKIに関するね、発表があるんですよ。スライドどうぞ!」
カメラの奥にある配信確認用のモニターの表示も切り替わる。
『トッププレイヤーVS最強の機械 プロジェクトOne Night Dream』
画面を切り替えた直後、遠藤さんが待つことなく話し出す。
「JMGFでMAKIが言っていたこと、覚えてる? 『機械を超越したい』って発言してたんだよね。私たちゲームメーカーもその目標、応援しようってことになってね。詳細は次のスライド、どうぞ!」
さらに画面が切り替わる。
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プロジェクトOne Night Dream詳細
・日本チャンピオンMAKIと正確な機械、一夜限りの夢の対決!
・機械でも反応が難しいほど超高速の楽曲を書き下ろし&それを使って対戦
・普段のゲームとは異なり、100万分の1秒単位で正確なタイミングからずれた時間を計測
・一曲通してずれた時間の合計で勝負!
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そこには、私がこれから行う対決のルールが記されている。
「いやー、準備も大変だったんですよ。特にずれた時間の計測! このために超高性能のカメラを用意して、人力で判定するんですからね!」
そう、最初に断られた理由である「判定が出来ない問題」も、遠藤さんに寄せられたコメントも参考にしつつ何とか対応できたのだ。関連各所には感謝しかない。
「さてMAKIさん、意気込みのほうは?」
遠藤さんに話を振られて私も喋りだす。
「機械の真似事はつまらない、それは音楽ゲームでも同じ。それを身をもって証明して見せます」
「はい、ありがとー。そんな事を思うまでゲームをやり込んでくれて開発チーム一同、感謝していますよ! もちろん放送を見てくれている皆にも感謝してるからね!」
「すみません、そろそろ時間です」
カメラの裏のスタッフさんに言われて、遠藤さんが締めに入る。
「おっと、もう終わる時間だね。それじゃあ次の生配信は
「はい、OKです」
この合図で放送は完全に終了。
控え室に戻ってスマホを見たら、私の名前がトレンド入りしてた。
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日本のトレンド
・MAKI
・プロジェクトOND
・VS機械
・100万分の1秒
・デウスエクスマキナ
トレンド投稿
・MAKI、人間やめる気で草
・マシンでも処理できない曲をやるってマジ!?
・シンプルに音ゲーの神である機械を超えようとするのは尊敬する
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普段は政治や経済ニュースアカウントなどもフォローしている私のSNSが、One Night Dreamの話で一色になっていた。
そうか、私はここまで大きな事をしていたのか。
それは自信となり、私の身に降り注いだ。
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