嫌われ王女は強かった 2

 リアムは足元に指人形だったモノを見つけた。


「なんだコレ」


 それを拾い上げてじっくりと見ていると音を立てて燃え、炭へと化した。

 彼の手は燃えていない。この光景に全員が困惑していた。ミアも、リアムも…目の前で起きた惨劇を見ていたエリスも…


 その時、困惑する貴族達の後方からゆっくりと拍手をする音が聞こえた。拍手する者は拍手しながらゆっくりと前に近付いて来た。貴族達はその者に道を開けるように避けた。

 茶髪に帽子を被った中性的な若者、その足元には白い子ギツネが歩いていた。子ギツネ、シルヴァはエリスの元に行き、彼女は抱き上げた。誰もシルヴァが見えてないみたい、全員茶髪の若者を見ていた。


「誰だお前…」

「相変わらずつまらない茶番劇、よく飽きずに続けられるわね」

「はぁ?!邪魔しないでよ!」

「邪魔なんてしてない、私は関係者だから」

「「!!」」


 若者はそう言って帽子を…いや帽子と茶髪のウィッグ外してリアムとミアを見た。

 それだけじゃない、その者が頭に着けていた物を外すのと同時に服装も変わった。

 そして…ミアとリアム、ルアンと国王夫妻、貴族達の目の前には青いドレスを着た翡翠の髪をした少女、本物のユリアスが立っていた。


 これには先程までユリアスに興味すら抱いていなかったレグユアスも驚いた顔をしていた。


「お前…その姿は」

「これが本当の姿と言ったら?」

「……」


 翡翠の髪に金色の瞳…これ程神秘的な容姿をした者はいない…。レグユアスはすぐにわかったのか、リアムとミアと同じ場所に行き、近付いてきてユリアスを見た。


「おい…まさか…」

「あぁ…祝福の所持者だ…」

「「!!」」


 見ていた貴族がボソッと呟いた事で全員がざわついた。

 国王は目を見開いてユリアスに触ろうとしたが横からミアが抱きつくように防いだ。


「ど、どういう事よお父様!祝福って何よ!」

「そんな…馬鹿な…」

「お父様!」


 溺愛する娘に目を向けず、翡翠の髪のユリアスをじっと見ている。彼の目は常にミアを見ていた、しかし今は冷遇していたユリアスを見てる。それが気にくわないミアは叫ぶように彼を止めていた。

 リアムは剣を落として震えていた。彼でも祝福について知ってるようだ。


 散々侮辱していた蛇の鱗がまさかドラゴンの鱗だったのだから。

 国王達の前には愛され王女と同じ顔があった…


 ミアは父を退かしユリアスを見てバカにしたように言い続けた。


「お姉様、そんな一目を引く容姿にして周りの目を浴びて楽しいですか?

 今だけですよ、そんな人間じゃない見た目で注目を浴びるのは。その内また今までみたいに気味悪がられるわ」

「馬鹿にするなら勝手にしな。あんたみたいに見た目だけしか取り柄がない心の醜い女と一緒にしないで。そうやって自分に夢中だった人間が自分じゃない別の人間に目を奪われてるのが気に入らないから私を侮辱するしかないのでしょ?

 だから言ったじゃない、ネタ切れなのねって」


 ユリアスは勝ち誇った顔で言い返した。図星を突かれたミアの表情が徐々に歪む。

 とうとうキレたミアはユリアスの胸ぐらを掴み平手打ちしようとした。


 その時だった。外から砲弾が放たれ城が破壊される音がした。


「「!!」」

「な、何事だ!?」


 攻撃は収まらない、ついには夜会を行ってるホールに撃ち込まれ天井と壁が破壊された。


「キャァ!!」

「に、逃げろぉ!」


 貴族達は血相を変えて逃げ出した。しかし彼らが出た先には武器を構えて待機していた帝国軍が逃げ道を塞いでいた。そしてその場から出てきた貴族全員を斬殺した。

 城だけじゃない、きっと今頃城下町の方も攻撃されてるだろう。


 何人もの軍人、騎士達がホールに入り武器をレグユアス達に向けた。

 国王達は何が起きたのかわからなかった。瞬く間にホールから出た貴族、使用人、騎士、兵士達が無惨にも殺されていた。

 夜に行われていた夜会、しかし辺りには炎が周り昼のように明るくなってた。


「無様な姿だな、やはり親子揃って口だけだったな」

「ア、アルベリク皇太子っ…」

 

 レグユアスはアルベリクとエルネスト、そしてやっと来たローレントを見て目を見開いた。

 散々自分達が勝つだろうと見下していた帝国に瞬く間に滅ぼされ、滅亡の縁に立たされた。

 エリスは彼らが来たことに安心したようだ。

 ユリアスはミアはの腕を掴み彼女を床に押さえ付けた。それにキレたリアムがユリアスに剣を振りかざそうとしたがローレントが思いっきり彼の腹に蹴りを入れ防いだ。吹き飛ばされたリアムは帝国の騎士達に瞬く間に拘束された。


 レグユアスはアルベリクに謝罪しユリアスに助けを求めた。ミアの婚約者のルアン、王妃は拘束されやり取りを見せられてた。


「ユ、ユリアスっ!我が娘よ!助けておくれ!お前を粗末に扱って悪かった!皇太子に攻撃をやめるよう言ってくれ!」


 ユリアスは国王を睨み付け、隠し持ってた短剣を取り出し彼が愛するミアの首もとに当てた。

 ミアは悲鳴を上げ国王はやめろと叫んだ。


 ユリアスは彼の言葉を無視し、狂気に満ちた笑みを浮かべて短剣をミアに向けて振りかざした。

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