祝福されし少年
ダラダラ鳥
プロローグ 彼に祝福を
人間は古来より意味が分からず、理解できない現象には何かと理由をつけたがる生き物だ、その最たるものが「神」である――――
その惑星の広大な台地面積を占める大陸「ジアース」には二柱の神がいた。
様々な災害などの試練を与える「試練の神」へ―レスと人に様々なものを授ける「授けの神」クレイ。
最初この2神は秩序的に試練を与え、豊作や幸運を授ける神であった、そう認識されていた。
しかし、人は物事を都合のいい解釈をし利用するものだ。
その結果それら二柱を主神としてあがめる宗教として成立したのが「オーベス教」である。
「この世すべての不幸はへ―レス神による克服すべき祝福、この世すべての幸福はクレイ神による甘受すべき祝福である」これがオーベス教の主軸となる固定観念である。
やがて大陸には人間の文明が発展し、集落ができ、村ができ、そして最終的には国ができ国同士で食料、領土を求めて争いだす。
各国の王たちは神たちを利用した。
王たちはこう発言した「戦争はへ―レス神がもたらす最上の祝福でありこの戦いに勝利したものたちだけにクレイ神による富や名声からなるすべての祝福が与えられる」
この発言により神々は変性した。
人は狂ったように争い続けた。
より多くの祝福を感じ、より多くの幸福をつかむために。
神とは人が形を与える存在だ、人の信仰により神はそのありようを変える。
神もまた狂った。
へ―レス神は無秩序に気まぐれに、強制的に不幸をばらまき始めた。
クレイ神は不平等に、無責任に幸福を与え始めた。
一部の人間が神の狂乱を指摘するが、私利私欲に満ちた人間たちは一分の人間を切り落とす。
大陸は2000年間争いの絶えない大地と化した。
◇
人が争い初めて2000年目に2柱の狂神は宿命的に一人のまだ生まれる前の生命に執着し始めた。
それがいつもの気まぐれなのか無責任なのか、はたまた最後の「理性・秩序」なのかは誰にもわからない。
祝福されし少年の名は「フォル」
彼が生まれて名づけられた数日後、「試練の神」は言いました。
「彼に祝福を」
フォルの生まれた村には落雷が発生し、彼の家に落ち炎上しました。
続けて「授けの神」は言った。
「彼に祝福を」
家が炎上しきった後焼け跡にフォルだけ無傷で発見された。
発見されたフォルは孤児院を兼ねる教会に預けられ、祝福された人としてもてはやされる。
でも祝福は終わりらない。
落雷が落ちたその日から彼は神に翻弄される人生を送ることとなる―――
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