第39話

さっきまで、呉月くんの影が伸びていたその場所は、今はただただオレンジの光に照らされるばかりで。





―――雲の向こうにいるような、自分の手には届かないあの人





ぱっと頭に浮かんできたのは。





皆から崇拝されてて

容姿超端麗で

このクラスのエースで

偏差値モンスターで

袴が似合いすぎてて

彼女を大切にしていて






―――不器用な、呉月くん。






この前までは、ただの憧れだったのに。



憧れが恋に変わるのなんて、ほんの一瞬。ただ一言交わしただけ、それだけでもいい。それは、自分でも気づかないくらい早く訪れる。





彼女いるって、大切にしてるって、知ってるのにね。



こんなにも、こんなにも胸が苦しくて。





もう、こんなの――――。

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