第98話:暴殺雷鬼
順調にとも言える速度で上の階層を目指しながら、椿さんとシバルと共にダンジョンを進む。やはり日本の昔噺で出てくるような魔物が多く、いた中には土蜘蛛っぽい奴や大百足もいた。
「……今日は本当にレアな敵が多いでござるね」
「普段は湧かないんですか?」
「……ござるなぁ」
それはどっちだろうか?
流れ的に多分肯定の方だと思うが、椿さんは椿さんで思うことがあるのか考えながらも先に進む。話を聞く限り次の七階層でこのダンジョンは終わるらしいが……。
「なんだこの魔力?」
ふと……その瞬間に感じたのは圧倒的な暴の気配と純粋な殺意。
ミソロジアで何度も感じた既視感のある神威すらも覚え、バチリっと一瞬だけその音を聞き、感じた魔力にそれが此方に迫っている事を理解して。
「――シバル防御頼む!」
シバルの奴もそれを感知したのか、既に防御態勢に入っていたようで、ダンジョン上層から迫るその魔法は完全に両断することが出来たが。
「よくヴァジュラの一撃を防ぐな――まぁ次は死ね」
続くように来る雷の連撃が、シバルのみを狙って何度か飛来した。
迫るのは雷の槍、鋭利に作られたそれを防げないシバルではないが……相手の出力はおかしく……シバルに防御を迫らせる程だ。
「――【雷耐性強化】【鋭撃強化】【速度&防御強化】」
穴が空いた際の煙のせいで敵の正体は分からない。
声は一瞬聞こえたが、それで判断するなら男。
それに過去のペルセウスの例を考えれば、それに該当する敵の可能性すらある……故に手加減は無用、シバルを強化しつつこの場を一度乗り切る事を考えろ。
「あ゛? ……今の魔法サモナーか?」
次の手を考え、ダインスレイブを触媒に氷の魔法を使おうとすれば……相手が今の魔法でこっちのことに気付いたようで、一度矛を収めた。
そして煙の中から金髪碧眼をした強面の男が現れ、俺を値踏みするように見る。
「……なぜ逢魔殿がここに?」
「灼刀? あぁそういや、ここお前の管轄か――でそっちのはなんだ?」
「狩谷霊真、サモナーだ。なぁ、あんたはなんであんな魔法を俺達に撃ったんだよ」
シバルだから斬れたものの、あれは明らかに殺す気だった。
……純粋な殺意と暴の気配、異世界で慣れたから察することも出来たがあの魔法は無遠慮に撃つ物では決してない。
それに、なぜか――俺の中にいる召喚獣の一人がどこまでもこいつに殺意を向けていて、先程から喚べコールが凄いことになっている。
「ッ――……まぁあれだ。下の階層から化け物の気配がしたからな、自衛だよ自衛――生きてたから良いだろ?」
相手は一切悪びれず、そんなことを言ってから完全に俺等に興味を無くしたのか、そのまま上の階層に戻ろうとするその男。
「それとだ、ここのボスはもう狩ったからお前等は帰れ」
「……逢魔殿、拙者の質問に答えていただきたい。貴殿の管轄は別の場所でござろう? それに、拙者達に言う事がある筈でござる」
「殺そうとして悪かった……これでいいか? 俺、暇じゃねぇんだよ」
「それは明確に殺意があったと認めたということでござるな?」
「……はぁ、面倒くさ。じゃあ、あれか? ボスの素材を渡せば良いか?」
露骨に怠そうな態度で、そういった彼の眼からは俺等に対する興味を感じない。
椿さんはそんな彼に一歩も引かず、殺意すら籠もった眼で彼を睨み付けている――その様は、普段の温厚な彼女からは想像出来ないものだった。
「まずは霊真殿とシバル殿に謝罪を、被害を受けたのは拙者ではないので」
「……あーはいはい、魔法撃って悪かったな」
「俺は良い――シバルは」
「こいつは不快だ……吾は戻っておく」
普段はそんな態度を取らないシバルまでも露骨に悪態をつき……あろうことかそのまま俺の中に戻ってしまう。
魂の世界に意識を向ければ、頭痛を覚えるほどに喚べというコールが重なっていたのが……その相手が普段大人しい奴なので、違和感が凄い。
「――本当にサモナーかよ、なら悪かったな」
「別にいい、それよりあんた……覚醒者か?」
それに……この男からは慣れ親しんだ原典の気配がするのだ。
俺はミソロジアという世界で召喚獣となった皆とずっと関わってきた。
故に濃い原典の気配というのには覚えがあり、この男からはそれと似たような気配を感じる。それこそ、大和さんに聞いた第一覚醒者に当てはまるような……。
「ってことはお前もそうか。そういや、サモナーが一人Sランクに行ったって聞いてたが……お前がか」
そこで初めて、こいつに興味を持たれたような感覚を覚えた。
さっきの虚無とは違う明確なその感覚、値踏み……それこそ魂の中まで見透かすようなその視線。俺も俺で、こいつから感じる原典の気配にあり得ない雷の姿を見た。
だって、それは……俺の恩人のものの筈だったから。
「まあいいわ、とりあえず素材は放置してるから売るでも加工するでも好きにしろ」
「……逢魔殿はどうするので?」
「言っただろ、暇じゃねぇから帰る。んじゃな、灼刀に新入り」
そういった彼は、ダンジョンを下り……そのまま姿を消してしまった。
残された俺達は、そのまま言われたとおりというか上を確かめるために階を上がれば、そこには殆ど破壊尽くされたダンジョンの一部屋が残っている。
「……やはり、噂通りの人物でござるな」
部屋の中心を見て、椿さんがそうこぼしたのだが……そこにあったのは巨大な天狗らしき者の死体だった。倒されたばかりなのか、まだ魔石にもなってないそれ。
完全に体が破壊されており、それどころか中心部には無理矢理空けたような大きな穴が空いている。そこには僅かに雷の魔力が残っており、何でこれをやったかを理解してしまった。
「……なぁ、さっきの奴は?」
「【
それが彼女から教えられた情報。
暫くして魔石になった天狗は、よく見る転移石をその場に落とし……姿を消す。
これ以上はやることもなく……帰るしかなくなった俺達は、そのまま転移石を使ってダンジョンから出ることになった。
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