第42話:久しぶりに仲間と会うと気まずいよね?

 とりあえず、転移してきた奴が着替えるまでの間俺達は部屋の外に出されて――その上で目に多大なるダメージを食らったカイザーをヒールしながら時間が過ぎるのを待った。


「なぁ……親友」


「なんだよ親友」


「おまえ……ラウラさんと会ったことないよな?」


「……完全に予定外だけどそれも後で話すわ」


 本当だったらもうちょっと順を追いたいが、なんでかラウラがいるのなら話が別だ。多分解説手伝ってくれるし、少し早めに伝えた方が良いだろう。


「それってお前の召喚獣が激昂してたのも関係あるよな」


「まぁ……そうだな――まあ今はそれはおいといて、カイザー大丈夫か?」


 相変わらずの鋭い勘に苦笑しつつも、目を抑えるカイザーに声をかける。


「すごく、痛い」


「ごめんなアルゴルが――あいつそこら辺厳しくて」


 何があったかは聞いたが……転移してきた瞬間にアルゴルの奴が蛇を使ってカイザーに目潰ししたのだ。あいつそこら辺に色々厳しいから行動としては分かるのだが、普通にカイザーが可哀想なのでとにかく責任を持って俺は治療する。


「入っていいでござるよー!」


 カイザーの治療が終わる頃、部屋の中から椿さんの声がしたので入れば――そこには着物に身を包む女性陣がいた。

 召喚獣である皆も普段とは違う装いで……和国ぶりのそれはなんというかとても新鮮だった。


 妙に時間が掛かってると思ったが、椿さんは全員分の着物を用意していたらしい。

 特に異世界で基本ドレスか鎧しか着てなかったラウラの和の物である着物姿は……マジで見たことなかったからびっくりしてしまう。


「…………なんだレイマ、文句でもあるのか?」


「いや……新鮮だなぁって」


「貴様と和国には行けなかったからな……それはそうだろう」


「……………………そう、だな」


 ……結われた銀の髪に黒い着物。

 月や兎の装飾が成されたそれはとても彼女に似合っている。

 ずっと着たいと言ってたことを覚えているから、それに対してなんて言っていいか分からず――どうしても言葉が上手く出てこない。


「あのすまぬでござるが、ラウラと霊真殿は初対面の筈でござるよな?」


「この世界ではそうだな椿ちゃん」


「………………昔言ってた異世界関連でござるか?」


「あぁ、そうなる」


 ……幼馴染だとは聞いていたが、ラウラはミソロジアの事を話しているのか。

 そうなると説明が楽だが、事前情報がない式達が頭に? を浮かべている……これもうちょっと後で説明したかったけど、少し早めに話した方が良さそうだ。


「えっと聞きたいことは色々あると思うが、誰から何を聞きたい?」


「…………ラウラさんとの関係」


「え、綾音……そこ?」


「事前情報とか抜きにして親しそうだから、霊真が私と式以外にそこまで心許すことないでしょ? それが例え別の霊真だとしても」


 ……俺が別の霊真だってことは式経由でペルセウスと戦った後に知られたのは分かるが、なんか斜めからの質問のせいで答えに困った。


「……仲間だった関係だな綾音」


「……だった?」


「あぁ……見届けることが出来なかった愚か者だ」


 意味深に笑うラウラ……相変わらずの説明不足にどう補足しようか迷ってしまうし、何より俺はどうして彼女がこの世界にいるかを知らない。 

 そして、それを聞いていいか分からないが……聞かなきゃいけないことではあるので、俺は決心してから口を開いた。


「なぁラウラ、お前がこの世界に来たのはいつなんだ?」


「今から十八年前だな、貴様と別れた後に私は気づけばこの世界に転生していたのだ――同じ名と姓を受け、人間として生まれ変わったというわけだ」

 

 ……それを聞き、なんと言えばいいかは分からない。

 此奴と異世界で最後に会ったのは魔王を倒す一年前の事で――目の前でいなくなったことを覚えているから。

 

「そう聞く貴様こそ、なぜこの世界にいるんだ? 話を聞く限り貴様がいた世界にダンジョンなる物はなかっただろう?」


「そこを今日説明するつもりだったんだよ、相変わらず変に鋭いよなラウラは」


「……言わない方がよかったか?」


「いやいい……そこは俺から話すわ」


 ラウラと話している間、完全に皆は置いてけぼりで……そろそろ限界っぽかったので、俺は一呼吸置いた後で口を開いた。


「まず最初に俺はこの世界の霊真じゃないのは分かるよな」


「まぁな、そもそも霊真に魔力はなかったし……それのせいでジョブもねぇ」


「全然違和感ないし、式の判断的に別の世界の霊真ってことは分かるけどね」


「まぁ、そこ分かってくれるなら助かる。で、正体なんだが……俺は魔法やダンジョンがない世界から来た霊真だな」


「…………ダンジョンがない、だと? そんな世界あり得るのか? そもそも、それだったら何故我が友は魔法が使えるのだ?」


 この世界の人からすると当然の疑問。

 ……それにそれを理解したカイザーだからこそ、俺が魔法を使えることに疑問を持ったようだ。やっぱり頭の回転が速いなと思いつつ、俺はそれについて補足する。


「……そこややこしいんだが、俺中学三年の時に異世界に召喚されてさ――そこで魔法を覚えてサモナー召喚師になった感じだ」


「それがラウラがいたミソロジアという世界でござるか……確か凄い世界でござるよな?」


「あぁ、ありとあらゆる神話の悪や邪神そして怪物達がいるとされる常識が一切通じないザ・ファンタジーな世界だよ」


「…………そういえばだレイマ、貴様がこの世界にいるということは救えたのか?」


「――もう、限界。知らないとはいえ、お前がそれを聞くのは許せない! 先にいなくなったお前が! 勝手に消えたお前が! 未だにますたの傷となっているお前が、この世界でのうのうと生き続けた事実で吐き気がする!」


 それまでずっと静観していたルナがそこでキレた。

 人がいるのにも関わらず……自重を忘れて能力を解放し、この場全てを氷河に落とす。止めに入ろうとも、それをソルによって静止させられ――俺の召喚獣達は皆同じ気持ちなんだろうということをなんとなく察してしまう。


「ねぇ、カグラだっけ? この家に戦える場所あるよね?」


「――訓練場ならあるでござるが」


 殺気を滾らせるルナの剣幕に押されて、椿さんがそう言った。

 ……声音に明らかにな怒気を含ませながらも、周りにあたらないようにする彼女はそのまま淡々と言葉を続ける。


「…………そこ貸して、一回ボコらないと気が済まない」


「おい、ルナ……流石に」


「ごめんねますた……これだけは譲れない。で、どうするのラウラ? 私と戦う?」


 ……そして、ラウラに向かって挑発して――鋭い視線をラウラに送った。


「――受けて立とう、聞きたいこともあるしな」

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