異世界サモナー、神話の怪物達と現代で無双する~俺と契約した召喚獣がどう考えても過剰戦力で重すぎる~

鬼怒藍落

第一幕:目覚めた世界もファンタジー

第1章:現代への帰還

第1話:開演

「これより叛逆の召喚士――レイマ・カリヤの処刑を執り行う!」


 ……人生なんかろくでもない。

 それが転移者、狩谷霊真かりやれいまの結論だった。

 中学最後の冬に落石に巻き込まれたと思ったら異世界に召喚され、サモナーの才能を持っていた俺は、元の世界に帰るために魔王討伐の旅に出た。


 そして三年という時間をかけた旅の中で、契約してくれた召喚獣と共に世界を救い――今この瞬間に処刑されそうになっている。


 腕には弱体化の呪いが付与された魔道具、首には魔力封じの首輪が着けられており、かなり厳重な装備で俺の事を封じていた。


 何が悪かったのか……そう思うも、答えはすぐにでた。

 魔王を倒せるほどのサモナーなんて危険に決まってるし、この世界の人からすれば恐れて当然。

 

 わかりはするも――助けてきた人達に、こうも敵意を向けられるのは慣れなくて、なんて言えばいいかの答えは出なかった。


 ……あぁ、ほんとにろくでもない人生だったな。

 

「なぁ王様、早くしろよ――時間かけても意味ないだろ?」


 今さら覆せない処刑という結末、足掻く理由も俺にはなくただ帰りたかったなと。


 でも、そんな俺にも心残りが一つ。


 残った召喚獣達は大丈夫だろうか? と少し心配になった。寂しがりやなあいつらが泣かなきゃいいけど……それにあいつらがこの世界の人を恨まなければいいなと、そんな事を願う。


「では、さらばだ――レイマ殿」


 ゆっくりと剣が振り下ろされる。

 不思議だった自分が死ぬというのに……恨みはあんまりなくて、やっぱり仲間達のことが心配で――ただ、もう会えないことが心残りで。


「――不甲斐ない主でごめんな、みんな」


 無意味に過ぎる俺の人生になんて価値などないと思ってた。

 でも俺と一緒に旅をしてくれて助けてくれた仲間と召喚獣達のことを思うと、自分はこの世界に来た意味があった、生まれてきた意味があったのだと、そう思えた。


 だからこそ、ごめんと……心の底から思って――痛みも感じぬまま俺の意識は途切れて消えた。


――――――

――――

――


「あの世って……思ったより暖かいんだな」


 白い天井、どこか見覚えのある景色をみてそんな感想を俺は浮かべた。

 死んだ瞬間の記憶があるはずなのに、どうして俺の意識はあるのだろうか?


 記憶に混乱はない……自分が召喚されて異世界を救い、そして処刑されたことも、全部覚えている。


 だからこそのこの違和感。

 なんで生きているんだというその疑問だけが頭の中を埋め尽くす。

 一応周りを見渡せば、ここは病院の一室のようで……その内装は自分が元居た日本の病室に似通っている。


「……これ、戻ってきたってことでいいのか?」

 

 あの出来事はすべてが夢だったのかと思えてくるが、俺の中にはあの世界での経験が全て残っていて、何より死んだ瞬間の感覚なんて忘れられるものではなくて……。


「まあ、わからないことを考えても仕方ないか」


 異世界に召喚されて、小説のような夢物語のような出来事を体験してきた身としては、このくらいのファンタジーでは早々驚かなくなってしまった。

 それに俺の召喚獣達ができることのほうがよっぽど意味不明だし。


「……とりあえず今は状況確認か?」


 そう思ってベッドから起き上がろうとしたのだが、その瞬間に鈍い痛みが襲ってくる。体の節々が痛くて――このままだとまともに動けそうにない。


「って――これ、骨折してるのか?」


 なんで病院にいるんだとはずっと思ってたが、この怪我なら納得だ。

 そもそも異世界に行く前に俺は事故に巻き込まれて瀕死だったわけだし……一応は理解できそう。


「……【ヒール】」

 

 ダメもとで使える回復魔法を使ってみれば、問題なく使えた。

 まじかと思うも、それによってやっぱりあれが現実だったと理解する。

 最期は最悪だったとはいえ、それでも自分の歩んできた道がそもそも『なかったもの』だったなんて思いたくもなかったし。


「そういえば、今っていつなんだ?」


 俺は三年の間を異世界で過ごしていたわけだし、時間がたってもおかしくはない。

 そんな事を思いつつ、凝り固まった体を伸ばし……わからないことだらけで気がめいりそうだったから病院の窓を開けたのだが。


「…………は?」


 そしてその瞬間に俺からそんな一言が漏れた。

 その窓から見える景色に広がっていたのは、異世界で見慣れたダンジョンのようなものだったから。

 しかもそれだけではない……空にはどう見ても現代日本にはいなかったような、魔物が飛んでいて――。

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