じゃれ禍

いい

『路面のパトロン』

帰り路は無暗に変えるべきではないという話なんですが、それに遭遇したのはバイトの帰り道だった。泥酔状態の客を介抱したり追い返したり散々な労働をして足取り重くいつもの帰り道じゃない方を選んだ。


車一台通れるかも怪しい、街灯がまばらに立つ閑散とした住宅街。

昔は遊具が置いてあった跡だけのある空き地に、誰か寝ている。

先の尖った高そうな革靴のつま先が、地面を向いているのが街灯の灯で辛うじて見えた。


うーわ、なにあれ。思わず顔を顰めつつ気付かれたら嫌だな…と思いゆっくりと静かに歩いて何事もなかったかのように通り過ぎようとしたその時、


「わたくし、しえんを!しえんをしています!」


大声で叫び出した。

声は野太い男性の声で、ヤバいと思って足早に通り過ぎた時に、ザリザリ変な…地面に体を擦り付けてる様な音がして。

それで、ああ人身御供かって思って。


そう思った事自体が気持ち悪くてもう、ね。





いい/みそか

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