えっちなゲームの世界にTS転生したら幼馴染が竿役間男だった件について
カラスバ
第1話
寝取られで脳を破壊される者は多くいる。
しかし俺の場合最初から寝取られ性癖を持っていたのでその脳が破壊されるというのが良く分からない。
あるいは最初の時点で破壊されたのか。
なん、だと……?
そして一言に寝取られと言ってもそこにはいろいろなジャンルが存在している。
催眠、お薬、時間停止、触手。
人によってはそれは寝取られじゃねえと突っ込む過激派もいらっしゃいますが、俺に関してはすべてウェルカムでした。
性癖が広いとも言う。
ともあれ寝取られと言っても色々なタイプがあり、そしてその中でも割と広範囲の性癖をカバーしている名作エロゲが存在した。
『闇に蕩かされる愛しい花束』というタイトルのエロゲだ。
現代を舞台にしたエロゲですが、普通にファンタジー要素が出てくるゲームでもあります。
いや、なんで現代が舞台なのに触手が存在してて間男が催眠とか時間停止させてるんだというツッコミはしてはいけない。
エロければ良いのだ、エロければ。
このエロゲが秀逸なのは程よいストーリーと抜き要素が両立している事だろう。
寝取られにはやはりバックストーリーがないと面白くないが、それがくどいと正直面白くない。
そして抜き要素は当然あった方が良いのだが、あり過ぎるとダレる。
そのバランスがちょうど良く、だからこのゲームは寝取られエロゲというニッチなジャンルでありながら神作エロゲとして多くのエロゲーマーから認知されたのである。
あるいは多数のエロゲーマーの脳を焼いたとも言う。
さて。
それはさておき、話は変わるがこういう話をされた事はないだろうか?
『生まれ変わるならばどんな世界が良い?』という質問だ。
これはつまるところマンガとかゲームの世界に転生してみたいかって質問だ。
勿論好きな創作物に転生したいものは多いだろうが、しかし場合によっては例外がある。
例えば死にゲー世界とか。
そりゃあもう当然である。
そんな死にやすい世界に転生したいと思う奴はそうそういないだろう。
その点、エロゲ世界と言うのはなかなか答えが別れると思う。
女性の性欲が旺盛な世界とかに転生してヤりまくりたいぜ! とかそんな希望を持つ者もいるかもしれないが、しかし俺の意見は「お前、転生しても陰キャだぜ?」である。
つまりは女の子と話せるのDTって事だ。
ただまあ、エロゲ世界の住人ってみんなえっちで美少女だし、眼福だからって理由だけでも転生する理由にはなると思う。
だから、と言ってはなんだが。
俺は転生するのならば『闇に蕩かされる愛しい花束』の世界には一度行ってみたいと思っていた。
それは俺が男で、もしかしたらワンチャンあるかもとか思っていたからとも言う。
ちなみにこのワンチャンというのは、間男のおこぼれを預かってヒロイン達と○○出来るかも、とかそういうゲスな奴である。
そんな最低な願望を抱いていたからなのかは分からないが。
俺は気づけば、『闇に蕩かされる愛しい花束』の世界で女の子になっていた。
そう、TS転生って奴だ。
まさか女の子になるとは思ってもみなかった。
これじゃあヒロインとナニするとか以前に間男の餌食になる可能性が高い。
もしくは乱○に参加させられるとか。
そんなの、イヤなんだが?
だからさっさと原作の舞台であるこの街から逃げ出したいのだが、しかし子供の一存で引っ越すなんて事は出来る筈もない。
それならせめて、原作から離れていよう。
そう思っていたのだが。
「よお、遊びに来てやったぜ!」
家の近くにある公園で、ベンチに腰かけていた『私』に大声で声を掛けてくる奴が走り寄って来る。
顔を上げると日焼けした肌の如何にもわんぱく坊主って感じの男の子がいた。
――彼の名前は、毒島黒男。
未来のヤリチン竿役間男である。
現在12歳の少年だ。
今はわんぱく坊主って感じの見た目をしていて、イケメン。
その上成績優秀。
如何にもスポーツ得意ですって見た目をしてるのに学業も得意とかなにそれチートか?
チート野郎なんだよなぁ。
そのハイスペックさに関しては原作で思う存分発揮されておりましたとも。
彼は別にその催眠能力と時間停止能力があったからセフレハーレムを築き上げられた訳ではないのだ。
しかし、とはいえ気になる事はある。
その催眠能力と時間停止能力は一体どこからやって来たのだろうか、とか。
いやまあ、原作では女の子をメロメロにする触手生物とかお前絶対ファンタジー産でしょって奴が登場したりするので、そういうのはやっぱり突っ込んだら負けな気もするけど。
せめて警戒はしておきたい。
どうやら今はまだそういった能力に目覚めている様子はないけれども。
いたって普通の、ちょっとエッチなところがある12歳の少年だ。
「よ、よお雛木」
「別に、歩夢で良いっていつも言ってるじゃん」
「あ、歩夢……それじゃあ、いつも通りにさ。あっちで『挨拶』しようぜ?」
挨拶?
ああ、そう言えば、まだ私達挨拶してませんね。
面倒臭いですけど、だけど礼儀知らずにはなりたくありませんし。
はぁ……
ベンチから立ち上がり、彼と共に公園の端にあるトイレ、その陰になっているところに移動する。
ここなら彼以外の視線はない。
うん、挨拶するにはもってこいだ。
「じゃ、挨拶するね」
そして私はいつも通り満面の笑みを浮かべて彼に言う。
「おはよう、大好きだよ!」
幼馴染と二人きりの時は大好きって挨拶しなくてはならない。
常識だからやってるけど、いちいちこんな挨拶をしなくてはならないのは面倒臭い。
「う、ぅ……いやいやなんでもないなんでもない! も、もう挨拶終わり!!」
「はぁ……?」
なに慌てているんだろ。
私はただ挨拶しただけなのに、変な奴。
将来はヤリチン間男だし、頭の構造が変なのかもしれない。
あるいはそうじゃないと催眠能力が目覚めないとか。
恐いな、催眠に掛けられないように精神能力とか鍛えておこう。
それで防げるかどうかわからないのがまた恐いけど。
「じゃ、じゃあさ。喉乾いたから『水飲ませてよ』」
「……黒男、貴方面倒臭がり過ぎじゃない?」
「い、良いじゃん!」
彼に差し出されたペットボトルを渋々受け取った私は「はー」と溜息を吐きながらキャップを外し、それから中身を口に含んだ。
スポーツドリングの少ししょっぱくて甘い味を感じながら口を窄め、黒男の顔、その唇に近づけていく。
まったく、二人きりの時は本人が望んだら口移しで飲み物を飲ませなくてはならないとか大変だ。
常識とは言え、やる方は大変なのだ。
いっその事、彼に直接飲んで貰った方が楽なのだけど、それは流石に非常識だろうし……
「や、やめっ!」
しかし、彼は何故か口が触れるよりも前に待ったを掛け、それから私の手からペットボトルを奪い取った。
「やっぱなし! 『なかった事にする! それに対して違和感を覚えない!!』」
……ごくごくと顔を真っ赤にしながら勝手にペットボトルのスポーツドリンクを飲む黒男。
相変わらず、挙動不審だ。
時々私の前でそんな風になるのだが、一体どういう事だろう?
私は首を傾げつつ口の中のスポーツドリンクをこくりと飲む。
あれ、そういえば私、何でスポーツドリンクを口に入れてたんだっけ?
……ま、良いか。
「それじゃあ、挨拶も終わった事だし今日も遊ぼう、黒男」
「あ、ああ。今日もモンブレだよな」
「後もう少しで大型アップデートが来るし、それまでにブレイカーランクを上げないと」
「……いつも思うけどさ。折角外に出てるんだからスポーツとかするのは」
「私に死ねと?」
それこそ、私に催眠術を掛けない限りそんな事はしない。
まあ、今のところ催眠術に目覚めた形跡はないのでそんな事は不可能なんだろうけど。
「へへっ」
「何にやにやしてんのさ」
「いや、今日も歩夢。可愛いなって」
「それ、他の女の子にも言ってるでしょうが」
まったく、お調子者なんだから。
「歩夢は特別だよ」
それもまた他の女の子にも言っているでしょ。
私は「はー」と溜息を吐くのだった。
ああ、暑い。
もうすぐ季節は夏だ。
既に私は半袖ミニスカと防御力の薄い格好をするようになっている。
もう女の子になって12年なので、今更その事を男として恥ずかしいとは思わない。
女としては、どうだろう。
いや、別にどうも思わないな。
黒男に見られている事も察しているが、それに関してもどうも思わない。
そもそも異性として見ていないからだと思う。
多分パンツとか見せたり、あるいはキスをしたりする事になったら拒否感を覚えたりするかもしれないけど。
だけどそんな事は絶対にしないだろうしなー。
将来的に彼がヤリチン間男に覚醒したとしても。
そうなったら、私以外のカワイイ女の子に目が行くようになるだろうし、そうなったらいよいよもって私も暇になるだろう。
ヤリチン間男の幼馴染として、そう言った未来に行き着くのは阻止すべきかどうかに関しては、今のところ保留。
だって、現状ちょっとエロいだけのわんぱく坊主なのだし、私が出る幕はないだろう。
何か、キッカケがあるのだろうか?
ともあれ、私は私が何よりカワイイ。
いざとなったら保身に走らせて貰うぜ。
それはそうと、喉が渇いた。
私は黒男の持っているスポーツドリンクを見、それから彼に「それ、飲ませてよ」と言う。
「なっ、それ間接キスだろうが!」
「貴方、そんなこと気にしているの?」
どうやら恥ずかしいらしい。
まったく子供だなー。
こんな様子じゃ、女の子にエロい事をするのはまだまだ先かもしれない。
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