26.


パーティの最中、御月堂の子どもの話になった。

どんな子どもが産まれるのか。きっと御月堂様に似て、凛々しい顔立ちのお子さんですって。まだ性別が分からないんだよねー。でも、どちらであっても、可愛がりたいですね、私が!


あちらこちらから話が飛び交い、部屋以上に賑やかになっていく中、そういう場に入ったことがなかった姫宮は、最初こそは慣れなかったが、安野を中心に自然と話を振ってくれるものだから、輪の中に入れたように思えて、表情こそ出なかったものの、自分なりに楽しめたと思えた。


今回のつわりは、肌や匂いが敏感に感じたり、若干の食欲不振だったが、お腹が大きくなるにつれて、それらが少しずつ落ち着いてきた。

そうして、同時に感じる胎動に、改めて自分のお腹に子どもがいるのだと実感し、より一層この子のためにやってあげないとと、話しかけたり、歌を聞かせたりとそんな毎日を過ごしていた。


今日も、自室で話しかけていると、ドアをノックしてきた。

断りを入れて入ってきたのは、見慣れた安野だった。


「姫宮様。松下さんがお見えになりました」


事前に松下が来ることは伝えられていた。

もう来る時間だったのかと思いつつも、「分かりました。今そちらに向かいます」と重たい体を上げようとした時、「そのままにしてください」と松下が部屋に入ってきた。


「妊婦の方を無理にさせるわけにはいきませんから」

「ですが、お客様ですから、お手間を取らせてしまっているようで⋯⋯」

「いいえ。この程度でしたら大したことではありませんし、何よりもそこまで大切に育ててくださっている姫宮様の方が大事です。ですから、お気になさならないでください」


にこりと、愛想の良い笑顔を見せられ、押し合いへし合いしていても仕方ないと思い、「すみません」と返した。


「何かと都合が悪く、なかなか機会がありませんでしたが、大きくなりましたね。半年過ぎになりましたかね」

「はい。順調に育ってますよ」

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