24.


「ご懐妊、おめでとうございますー!!!」


玄関を安野に出迎えられ、「少々用があるのですが、よろしいですか」と言われるがまま、ダイニングへと向かうと、四人が揃ってそう言ってくる。

クラッカーの煙が漂い、紙片が散らばった。

煙が普段より敏感に感じたのであろう、控えめに咳をすると、「大丈夫ですか、姫宮様」「やっぱりダメだったじゃない」「⋯⋯煙たい」など様々な言葉が飛び交った。


「⋯⋯いえ、ごほ。つわりが少々あるみたいで、いつもなら気にならない臭いまで気になってしまうのです。ですから、気になさならないでください」

「それこそダメですよ。私達は、姫宮様が快適に過ごして頂くためにいるのですから、当の本人が遠慮するところではございませんよ」

「はい、すみませ──」


江藤が不意に、何かを口に入れてきた。

サクッとした食感と同時に、酸味とホクホクとしたじゃがいもらしい味が舌に乗った。

驚きのまま咀嚼し、喉に通してしまう。


「⋯⋯これは」

「クラッカーの上にサワークリームとジャガイモを混ぜた物です。美味しいですか?」

「はい⋯⋯」

「それは良かったです」

「姫宮様、朝食はほぼ食べていらっしゃらなかったので、もっと食べやすい物を作ったんですよ」


「パーティ仕様っていう意味もあるのですけど」と上山うえやまが続けて言った。


「食欲が湧かないのもつわりの症状だと聞きました。ですから、無理して食べようとはせず、なんなら雰囲気を楽しんで頂けましたら、幸いです」


部屋を見せつけるように手を指し示す流れで、辺りを見回した。

壁に沿って、輪っかにし、連なった飾り付け、天井に丸い物、ハート型、星型など様々な形と色が浮かんでおり、普段食事しているテーブルには、先ほど口に含んだ物の他に、サラダや果物など、妊婦の姫宮のことを考えた料理が華やかに、かつ、賑やかな雰囲気を持たせている。

病院にいたのは、ほんの数時間だったはずだ。そんな短時間の中でも、ここまで用意をしてくれるだなんて。

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