5.

「四之宮様のお子さん、そろそろ産まれるぐらいでしたっけ?」

「そうですね。お医者様も今のところ順調そうだから、予定日辺りに出産出来そうと仰ってました」

「そうなんですねー! 無事に産まれることを祈ってます!」

「ありがとうございます」


心からそう思っていると分かる袋田に対し、寂しそうに微笑んだ。

無事に出産するまでが姫宮の仕事。それは、たまにつわりで悩まされる時はあるものの、ひとときの幸せを引き離される瞬間。

絶望に堕とされるのなら、代理出産を辞めてしまえばいいと思うが、定期的に訪れる発情期ヒートのせいで、やれる仕事が制限されてしまい、探すのが難しいというのが主だが、先述から言っている通り、この性で良かったと言えたひとときの幸せを味わいたいからだ。

なかなか子宝に恵まれずにいる人の手助けにも、その小さな宝と出会えて幸せそうな顔をしている姿を、自分に投影したりして。


この先もきっと、このような生活をしていくのだろう。


「あそこのベンチで休みましょうか」と袋田に促され、そちらに足を向けようとした時。


「⋯⋯御月堂様」


袋田が何か言ったようだが、横切った車の音に掻き消され、姫宮の耳には聞こえず、「何か言いました?」と聞き返した。

すると、道路側を見ていた袋田はハッとした顔になり、


「あ、いえっ! なんでもありません! 行きましょうか!」

「え、ええ⋯⋯」


背中を押す袋田に促され、姫宮は共にベンチへと赴く形になった。

座った二人はそれから、変わらぬ袋田の話に相槌を打ちながら、穏やかな時間が刻一刻と終わりを告げるのをひしひしと感じつつ、過ごすのであった。

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