1話 海賊の日常

ブォォォ

青い空と海の水平線の狭間を一隻の船が目的を目指し航走していた。

その船の名は船『遊星する隼(プラネット・ファルコン)号』。

特徴は緋色いマスト、船首像は金色の隼、そしてメインマストはドクロマークの旗。

そう、ご存じの通り、ドクロの旗を掲げる船、海賊船である。

『遊星する隼(プラネット・ファルコン)号』を保有する、海賊団の名は『鉄火海賊団』、構成員数は30人でイストリア公国最強の海賊団とも謳われている。

そして、鉄火海賊団の船長は『海神(ワダツミ)の龍』という異名を持つ、有名な海賊だった。

海賊船 見張り台

鉄火海賊団 一番隊隊長

ヒビト・ハヤセ「…11時の方角から目的地のカルマ島(とう)が見えてきたぞ。」

ヒビトは皆に聞こえるように声を上げた。

ヒビト「あと30分くらいでつく。」

鉄火海賊団 三番隊隊長兼総長

ジンペイ・テツザキ「…ようやく、ついたか。」

甲板に置いてある木箱に座って、武器を磨いていたジンペイは手を止めた。

ジンペイ「…カンパチ、降りる準備しろ。」

ジンペイは隣で掃除をする船員に声をかけた。

鉄火海賊団 二番隊隊長

カンパチ・ミチナガ「…やっときたか。」

甲板ブラシで掃除するカンパチはジンペイに顔を向けた。

ジンペイ「……ちょっと、チュウジに伝えてくる。」

カンパチ「……じゃぁ、俺はお頭達に伝えてくる。」

二人は作業を中断し、動き出した。

鉄火海賊団 五番隊隊長

ハナヒコ・オトマ「………。」

甲板の隅にあぐらをかいて、ハナヒコは黙々とロープを結んでいた。




数分後

船内 調理室

鉄火海賊団 四番隊隊長

チュウジ・ネヅマキ「…これで354個目だな。」

調理担当のチュウジは樽に座って、354個目のジャガイモの皮をむき終えた。

355個目のジャガイモを掴んだ時だった。

ジンペイ「…おい、チュウジ。」

調理室にジンペイが入ってきた。

チュウジ「ジンペイか、どうしたんだ。」

ジンペイ「目的地が見えた、あと30分でつく。」

チュウジ「…やっと、ついたか。」

チュウジは作業を中断した。

そして、立ち上がり背筋を伸ばし、ストレッチした。

チュウジ「……お頭からの指示は。」

ジンペイ「……それはカンパチが聞きにいっている。」

ジンペイはそう言い、山のように積まれた皮が向かれたジャガイモを見つめた。

ジンペイ「何を作るんだ。」

チュウジ「…クリームシチューだ。」

ジンペイ「……にしてはジャガイモ多すぎないか。」

ジンペイはそう言い、大量に袋に詰めにされているジャガイモを見て、唖然とした。




船長室

赤いジュウタン、豪華な家具、シャンデリア、天蓋付きのベッドが置かれたどこかの国の王室のような豪華な部屋だった。

カンパチ「……お頭、副長、目的地が見えてきました。」

船長室のドアを開け、カンパチが入ってきた。

船長室のテーブルに座って、書類に目を通す人影が二つあった。

鉄火海賊団 副長

シリウス・ショークス「もう見えてきたか。」

シリウスは手を止めて、カンパチの方を向いた。

カンパチ「あと30分でつく。」

カンパチはシリウスの隣に座っていたもう一人の人物に声をかけた。

鉄火海賊団 船長

カズト・ミツギ「…カンパチ、船員達に伝えろ。」

カズトはそう言い、席を立ち上がった。

カズト「……下船する準備をしろと。」

カズトは愛刀の刀『翔陽(しょうよう)』を腰に差し、茶色いローブを羽織った。

シリウス「…今回、船を降りるのはカズトと俺、一番隊と二番隊、それから三番隊だ、ユウジと他の隊は留守番だ。」

シリウスはテキパキと明確な指示を出した。

カンパチ「…分かりやした。」

カンパチは軽く会釈し、部屋を出て行った。

カズト「……仕事内容は覚えているか。」

シリウス「……あぁ、今日の仕事は、魔王軍の幹部の退治だろう。」

シリウスはそう言い、愛用のサーベルとライフル銃を整備した。

ガラッ

すると、また扉が開いた。

船医 ショウキ・エイジ「……お頭、魔王軍幹部キングゴブリンとその部下の情報です。」ポイ

ショウキはそう言い、手に持っていた紙の束を渡した。

カズト「あぁ、助かる。」

カズトは紙束を受け取り、目を通した。

カズト「…北東の国で壊滅、大量虐殺か、大分悪いことしているな。」ペラペラ

カズトはボソボソ呟きながら、確認していた時だった。

ドォン

突然、船内に衝撃が走った。

シリウス「なんだ。」

カズト「……攻撃か?」

二人は動揺したが、バランスは崩さずたえた。

バタン

漁師 ダイナ・ボークス「…大変だ、お頭!」

慌てたダイナが部屋に入ってきた。

カズト「どうしたんだダイナ。」

ダイナ「…6時の方向に魔王軍です。」




魔王軍側

魔王軍の戦艦、5隻が『遊星する隼(プラネット・ファルコン)号』に大砲の銃口を向けていた。

そして、銃口から硝煙が出ていた。

先ほどの衝撃は、魔王軍の大砲のものだった。

一方、船内ではゴブリン達が声を上げていた。

ゴブリンA「ちっ、外れたぜ。」

ゴブリンB「…お前、撃つの下手クソだな。」

ゴブリンC「…もう一度、やんぞ。」

ゴブリン達はせっせと次の砲撃の準備をする。



見張り台

二匹のゴブリンが見張り台から双眼鏡で『遊星する隼(プラネット・ファルコン)号』を見張っていた。

ゴブリンD「……。」

ゴブリンE「……。」

双眼鏡で鉄火海賊団の海賊旗を見た、ゴブリン達は氷りついた。

ゴブリンD「…おい、あの海賊旗。」

ゴブリンE「…てっ、鉄火海賊団だ。」

ゴブリン達は顔が青ざめ、恐怖した。

何を隠そう、鉄火海賊団はある時、とあるイザコザで魔王軍の幹部を5人も潰したので、魔王軍の兵達に恐れられていた。

ゴブリンD「大変だ、あの船は鉄火海賊団の船だ。」

ゴブリンE「…100倍返しで攻撃してくるぞ。」

ゴブリン一同「なんだって!」

それを聞いたゴブリン一同に戦慄が走り、ピタリと動きを止めた。




遊星する隼(プラネット・ファルコン)号 甲板

カズト「…総員、戦闘準備だ!」ガラ

勢いよく扉を開けたカズトが甲板に出てきた。

その後ろからシリウスとショウキ、ダイナの3人が続いて出てきた。

カズト「…俺が大砲を防ぐから、お前らは反撃。」


シリウス「その必要はねぇよ。」


ライフル銃を手に持ち、サーベルを腰にさしたシリウスが低い声で呟き、カズトの言葉を遮った。

シリウス「…あいつらの相手は俺一人で十分だ。」

シリウスはそう言い、船のへりからライフル銃を構えた。

装弾数10発のライフル銃の銃口は先に攻撃してきた魔王軍の戦艦にむけた。

シリウス「…ウチにたてついたからには、きっちりと落とし前をつけてもらうか。」

シリウスはライフル銃の照準を定め

バキュン バキュン バキュン

と発砲した。

発射された弾丸は風の抵抗を受けることなく、直線を描くように飛んでいき、やがて、魔王軍の戦艦の船体を貫通すると同時に

ドン バコン ドォン

と大爆発を起こした。

なんとたった3発の弾丸で、敵の戦艦が3隻も撃沈されたのだ。

爆発した船は燃え上がり、辺りは一瞬で炎の海となった。

シリウス「……これでしまいだな。」バキュン バキュン

とまた、2回発砲したのだった。

そして、発射された弾丸は魔王軍の戦艦の船体を貫通し

バコン ドン

とまたも、戦艦は勢いよく火を噴き撃破された。

こうして、たったの一分弱で魔王軍の戦艦5隻も沈められた。

魔王軍の戦力はシリウス一人の手によって、後退した。

シリウス「…全艦、撃沈した。」

シリウスはそう言い、狙撃する構えを解いた。

シリウス「…あんな雑魚に全員で出張る必要はねぇ。」

弾薬ポーチから5発の弾丸を取り出し、ライフル銃に補充した。

カズト「…相変わらず、いい腕だな、シロウ。」

カズトは軽く微笑んだ。

ちなみにシロウとはカズトがつけたシリウスのあだ名である。

砲手 シュウスケ・スミゴウ「そうだぜ、シロウ。」バンッ

シュウスケはそう言い、シリウスの背中を叩いた。

シリウス「……死ね。」ボキ

シリウスはシュウスケの顔面に飛び蹴りをかました。

シュウスケ「グハッ。」

シュウスケは床に倒れた。

シリウス「…いつも言っているだろう、シュウスケ。」

シリウスはシュウスケを睨みつけた。

シリウス「俺をシロウと呼んでいいのはカズトだけだって。」

シリウスは険しい表情で呟いた。

『シロウ』というあだ名はカズト以外に言われると虫唾が走るらしい。

シュウスケ「…チッ、相変わらず、うるさい奴だな………そんなんでよく副長が務まっているな。」

頭に来た、シュウスケは挑発した。

シリウス「なんだと。」

シリウスは眉間にしわをよせた。

シュウスケ「…カズトと一緒じゃなきゃ、生きていけねぇ、クソカス野郎。」

シュウスケもシリウスを睨みつけた。

シリウス「…どうやら、もう数発、お見舞いしてやらねぇと分からねぇようだな。」

シリウスは腕を鳴らした。

シュウスケ「上等だ、今日こそ引導を渡して、俺が副長の座をいただく。」

シュウスケもそう言い、腕を鳴らした。

二人が火花を散らし、武器を抜こうとした時だった。

カズト「やめろ、馬鹿。」

カズトが二人の間に入り、仲裁した。

カズト「…いさかいも程々にしろ。」ギロリ

カズトは怖い顔で二人を睨みつけた。

そして、視線を別の方向に向けた。

カズトが向けた視線の先には、目的地の島は近づくと段々と大きくなっていった。

カズト「…くるぞ。」

カズトは腰にさしていた刀を抜いた。

すると、島の陰から魔王軍の戦艦が3隻、カズト達の船に向かってきた。


カズト「…総員、戦闘準備!」

カズトは刀を上に掲げ、士気をあげた。




数十分後

カルマ島 

人口は5000人の少し小さな島だが農業や漁業が栄え、田畑があり、風車と水車がたくさん建ち並び、資源豊富なこの島は魔王軍の攻撃を受けて、炎の渦に包まれていた。

現在、この島は魔王軍の幹部の一人、キングゴブリンのハインツが配下の部下を9000匹の部下を引き連れて、この島を襲撃していた。

ハインツ「ギャハハハ。」

ハインツは高笑いした。

ハインツ「…野郎共、島を燃やし尽くせ、財宝と資源を奪え、男は八つ裂きにし、女は犯せ!」


部下一同『うぉぉぉぉ!』


部下のゴブリン、オーク、コボルト、トロール達は腕をかかげ、雄叫びを上げた。

ゴブリンF「ひゃっはー、やっちまぇー!」

ゴブリンG「女は全員、犯しちまえ!」

ゴブリンH「ガキは捕まえて人身売買だ!」

ゴブリンI「この島の資源を全て、奪い取れ!」

羊小屋や家々などに火を放ち、島中を荒しまわった時だった。

バコン バコン バコン

突然、大砲の発砲音が響き

ドオン ドオン ドオン


部下一同『ぎゃぁぁぁ!』


無数の大砲の砲弾がゴブリン達の頭上に降ってきた。

ご存じの通り、大量の砲弾を島に向かって撃っているのは、遊星する隼(プラネット・ファルコン)号からだった。

ドオン ドオン ドオン

ゴブリンJ「…ぐはっ。」

ゴブリンK「大変だ、コボルト部隊が半分以上やられた。」

オークA「…オーク部隊はほぼ、全滅だ!」

雨霰の如く、砲弾は休むことなく降り注いできた。

しかも、魔王軍のいる場所を中心に

オーク大尉

ブータン「シールド魔法を展開しろ、陣形を立てな……うっ。」ズキュン

ブータンの頭に風穴があいた。

当然、その風穴は遊星する隼(プラネット・ファルコン)号からの狙撃の弾丸で出来たものだった。




遊星する隼(プラネット・ファルコン)号 甲板

バコン バコン バキュン バキュン

大砲は硝煙を出し、次々と発砲した。

シリウス「撃てぇぇぇ!」

シリウスの号令と共に、船から大量の砲弾と銃弾がカルマ島に向かって、飛来した。

大砲の砲弾は、島の住民に当たらないように的確に砲撃している。

シリウス(……魔王軍、幹部のコボルト少将。)バキュン

シリウスも自分の愛用のライフル銃で照準を定め、発砲した。

シリウスが定めている的は魔王軍の軍隊長や参謀、少将など中核メンバー達である。

シリウス「…そこっ。」バキュン

「ぐはっ!」

今度はコボルトの騎兵隊の隊長を狙撃した。

これで魔王軍の指揮は大幅に下がった。

ヒビト「流石だな、シリウス。」バキュン

隣でヒビトが同じようにライフル銃を構え、発砲していた。

ヒビトの狙撃はシリウス程じゃないが、的確に相手の頭を撃ちぬいていた。

更に隣では

射撃手 イノバ・パーロデル「左から崩すぞ」バキュン

追撃手 シユト・ラッゴ 「了解。」バキュン

探検家 ネロ・クロ―ド「じゃぁ、おれは右の群れをやる。」バキュン

重装兵 エイジ・ドウマ「承知した。」バキュン

他の狙撃メンバーも次々と魔王軍の兵隊を狙撃していった。

カンパチ「こっちも撃ちまくれ!」

大砲はカンパチが指示を出して、砲弾を撃ち続けた。



カルマ島 埠頭

ドオン ドオン バコン

埠頭に数えきれないほどの砲弾と銃弾に襲われ、大部隊の殆どが全滅した。

ゴブリン団長 ゴォウ「…第6師団と第14師団がやられた。」

ゴブリン料理長 ビーマン「…俺の部隊もほぼ全滅だ。」

ゴブリン伍長 ピッチ「こっちに降って、ぎゃぁぁぁぁ!」

次から次へと魔王軍が殲滅し、魔王軍の戦力は半数以下となった。

カズト「…シリウス、島の人達と周囲の警戒を頼む。」

カズトはそう言い、船体の手すりから身を乗り出した。


カズト「…行くぞ!」


カズトは強く叫び。

カルマ島に目掛けて、ジャンプした。

カズトは弾丸の如く、カルマ島の埠頭に向かって飛翔した。

オークB「……追い何かこっちに向かってくるぞ。」

ゴブリンL「……あれ、人じゃないか。」

ゴブリンM「……おい、あれって。」

一匹のゴブリンが顔を青ざめた、こっちに向かってくる人物が何なのか知っているのだ。


ゴブリンM「…海神(ワダツミ)の龍だ!」


ゴブリンMは悲鳴を上げた。

そしてそれを聞いた、他の魔王軍の兵隊達は顔を青ざめた。

ドオン

カズト「…ふぅ。」

カズトはカルマ島の地面に足をつけた。

カズト「…おい、魔王軍の手下ども。」

カズトは手に持っている刀を構えた。


カズト「…死にてぇ奴だけ、かかってこい!」


カズトは魔王軍の兵隊に刃を突き立てた。

ゴブリンN「…うっ、うろたえるな。」

オークC「……相手は一人だ!」

コボルトA「打ち取って名を挙げろ!」

コボルトB「やっちまぇ!」

魔王軍の兵隊達は四方八方にカズトを取り囲み、襲い掛かった。

カズト「…。」バリバリ

すると、カズトの身体から赤い稲妻が出現した。

赤い稲妻はカズトを包み込み、纏った。

この稲妻はカズトの能力である。

カズトは刀にバリバリと鳴り響く赤い稲妻を纏わせ


カズト「……龍玉(りゅうぎょく)。」ビュン


魔王軍の兵隊達に大きく振りかざした。

そして刀の刀身から巨大な斬撃を放った。

斬撃は一瞬にして、コボルトやゴブリン達を一瞬でぶった切りにし、血飛沫をあげた。

カズトの放った斬撃はそのまま飛んでいき、周囲の建物や木々、更には山さえも切られていた。

ゴブリンO「……なんて、威力だ。」

ゴブリンP「……今の斬撃で半数以上やられたぞ。」

ゴブリンQ「……これが海神(ワダツミ)の龍。」

魔王軍の兵隊達は顔を青ざめ、怯えた。

カズト「……まだ、やるか。」

カズトは怯えた魔王軍の兵隊達に剣を構えた。


オークD「……やっ、やっちまぇ!」


オークの一人が威勢を上げ、カズトに襲い掛かった。

ゴブリンR「そうだ、相手は一人だ。」

コボルトC「足り囲んで叩きのめせ。」

オークE「…アイツの首には高い懸賞金がつけられている、一生遊んで暮らせる大金だ。」

士気を取り戻した魔王軍の兵隊達も後に続くように、突撃した。

カズト「…ふぅ。」

カズトはため息をした。

カズト「…やるか。」

カズトも首を狙おうと襲ってくる魔王軍の軍勢に向かって行った。

カズト「…『調和(シンクロ)』スキル、調和衝動(シンクロ・インパルス)。」

カズトはスキルを発動させ、活気あるかの如く、体から熱気があふれだした。

そして


ドオン


大砲の衝撃の如く、衝突した。


魔王軍一同『ぎゃぁぁぁぁぁ』


カズトに力負けし、魔王軍が押されていた。

カズト「…遅い。」

カズトは素早い、身のこなしと剣捌きで次から次へと魔王軍の兵隊達を倒していった。

そんなカズトの背後を狙うものがいた。


とある建物の屋上

狙撃ゴブリン長 ウィートン「…けっ、調子に乗りやがって。」

ウィートンは身を隠し、息を潜め愛用の狙撃銃の銃口をカズトに向けた。

ウィートン「…一撃で終わらせてやる。」

ウィートンは引き金に手を置こうとした瞬間

バキュン

ウィートン「…なっ、バッ………バカな。」バタン

頭を狙撃され、倒れた。




ゴブリンS「…ぐはぁぁ。」

ゴブリンT「援軍だ!」

ゴブリンU「…こっちに兵を回、いやぁぁぁぁ。」

ゴブリン達が次々に血を流し倒れていった。

シリウス「…ったく、一人で先走りやがって。」

そこにいたのは右手にサーベル、左手にライフル銃を持ったシリウスだった。

しかも、激しく憤怒していた。

ちなみにさっきのウィートンの狙撃はシリウスのものである。

カンパチ「二番隊は逃げ遅れた、島の住人の救助に回る!」

ヒビト「…一番隊はカズトを援護するぞ。」

ジンペイ「…副長に続け。」

背後から、隊長格のジンペイ、カンパチ、ヒビトの三人があとに続いた。

3人の背後にはそれぞれの部隊の隊員達が集っていた。

ちなみに、彼らは船に積んであった小舟に乗ってここまでやってきたのだ。

シュウスケ「隊長に続くぞ、カズトを援護だ!」

シユト「三番隊、射撃準備。」

ダイナ「二番隊は敵を蹂躙するぞ。」

エイジ「うっす。」

イノバ「ぶっ殺せ!」

その数、十数人近くだが、一人一人が名のある強者ばかりである。

バキュン バキュン ザシュ ザシュ

ジンペイ達は銃を乱射し、剣を振り回し、スキルを発動させた。

シリウス「ジンペイはここで指揮をとって、三番隊を指揮して敵を殲滅しろ、一番隊は三番隊の援護、二番隊は島の住民を保護しろ。」

シリウスはジンペイ達に指示を出した。

シリウス「カズトの援護には俺が行く!」バキュン バキュン

シリウスはガムシャラにライフル銃を乱射した。


シリウス「…カズトォォォ!」


シリウスは鬼の形相の如く、魔王軍の兵隊達を殲滅し、戦っているカズトに突撃した。

カズト「……シロウ。」

カズトは動揺し、向かってくるシリウスの方向に顔を向けた。

シリウス「…このっ!」

シリウスはライフル銃の銃口をカズトに向け

シリウス「くたばれ!」バキュン バキュン

オークF「ぐはっ!」バタン

コボルトD「ぎゃはぁ!」バタン

たかと思いきや、背後からカズトを襲おうとした、魔王軍の兵隊を射殺した。

カズト「…お返しだ、シロウ。」ビュン

今度はカズトが愛用の短剣を抜き、シリウスに目掛けて投げ

グサッ

ゴブリン大尉「ぎゃぁぁぁ!」

背後からシリウスを銃で狙おうとしていた、ゴブリン大尉の眉間をブッサ刺さった。

シリウス「…背中がガラ空きだぞ。」

シリウスは素早く左手に持っていたライフル銃を投げ捨て、ゴブリン大尉に刺さった短剣を抜き、カズトに投げ返した。

カズト「…いい援護だ。」

カズトは短剣をキャッチして、そのまま短剣の刃でコボルトの首の動脈をぶった切った。

コボルトF「ぐはぁ。」バタン

コボルトは首から血飛沫を上げ、倒れた。

シリウス「ったく、毎回、一人で勝手に先走りやがって!」

シリウスはため息をついた。

カズト「…あぁ、いつも悪いな、これからは気をつける。」

シリウス「…いや、その必要はない。」

シリウスは否定した。

シリウス「…今ままでそうやって、戦ってきたから俺達は名が広まったんだ、そうじゃなきゃ、鉄火海賊団(ウチ)じゃなくなるぜ。」

カズト「…ふっ、そうだな。」

二人は背中合わせにし、武器を構えた。

シリウス「…俺が道を切り開くから、お前はそのままボスをやれ。」

カズト「…背中を任せていいか?」

シリウス「無理だっていったらどうする?」

カズト「お前は絶対に言わなぇよ。」

シリウス「それなら、俺に質問するな。」


カズト「…じゃぁ、背中は預けるぞ、シロウ。」


カズトはホッコリと微笑んだ。

シリウス「あぁ、後ろは死んでも俺が護ってやる、カズト。」

カズト「それじゃぁ、行くか。」

シリウス「…さっさと勝負(かた)をつけろよ。」

二人は身を乗り出し、動き出した。

シリウス「…スキル発動!」

すると、水色に輝く光の粒子が同心円状でシリウスの身体を囲むように巡った。

そして、水色の光をサーベルの刃に集中させた。

刃は青白く晄、煌めいた。

この晄はシリウスの発動させたスキルである。

シリウス「星屑の導き(スターダスト・ロード)。」ビュゥゥゥン

シリウスは剣を強く振るい、バカでかい流星のように一直線に飛ぶ、水色の光線斬撃を放った。


魔王軍兵隊達『ぎゃぁぁぁぁ!』ズドン


魔王軍の兵隊達はシリウスの砲撃を受け、吹き飛ばされ悲鳴を上げた。

シリウス「行ってこい、船長!」

シリウスはカズトに向かって、叫んだ。

カズト「あぁ、行ってくる。」

カズトは魔王軍の兵達達が吹き飛ばされて、出来た空いた道を奪取で駆け抜けた。

ゴブリンV「行かせるな!」

ゴブリンW「止めろ!」

ゴブリンX「俺が撃つ!」

一部のゴブリン達がカズトの足を止めようと、立ちはだかった。

シリウス「…させるかよ。」

シリウスは急にゴブリン達に掌を見せつけた。

すると、掌に水色の光る球体が出現した。

シリウス「…星屑(スターダスト)スキル。」

シリウスは球体に力を籠め


シリウス「…星屑の楼閣(スターダスト・ミラージュ)!」パン


光る球体は散弾にして射出した。

ゴブリンY「ぎゃぁぁぁ。」

ゴブリンZ「…ぐはぁ。」

光の弾丸は魔王軍の兵隊達の身体を貫通し。百人近くのゴブリン達が倒れ絶命した。

カズト「…サンキュー、シロウ。」

カズトは猛ダッシュで突破した。

シリウス「…一つ忠告しておく、カスども。」

シリウスはサーベルの刃を動揺する、魔王軍の兵隊達につきたてた。


シリウス「…俺に勝てないようじゃ、ウチの船長には勝てねぇよ。」


シリウスは鋭い目つきで睨みつけ、魔王軍の兵隊達に突っ込んでいった。




一方その頃、ジンペイ達は

ジンペイ「黒鉄竜巻(くろがねたつまき)!」

ヒビト「火龍応牙(かりゅうおうが)!」

カンパチ「一刀万解(いっとうばんかい)!」

ドカン バコン ボコン

ジンペイ、ヒビト、カンパチの3人はスキルを発動させ、次から次へと魔王軍の兵隊達を駆逐した。

ちなみに島の住民は無事、地下倉庫に全員、避難させた。

シュウスケ「甘いぞ!」バキュン バキュン

ダイナ「そこだぁ!」ザシュ ザシュ

シュウスケ「おりゃぁぁ!」ビュン ビュン

シュウスケ達も隊長格の後に続き、魔王軍の兵隊達を駆逐した。

シュウスケは短い双剣で二匹のゴブリンの首をはねた。

シュウスケ「…カズト。」

シュウスケはボソリとカズトの名を呟いた。




数十分後

キングゴブリンのハインツはカズトを見て、動揺していた。

ハインツ「………海神(ワダツミ)の龍。」

カズト「………久しぶりだな、キングゴブリン、2年ぶりだな。」

カズトは刀を降ろした。

カズト「………あの時のかりを返すぞ。」

ハインツ「それはこっちのセリフだ!」

ハインツは怒鳴り込んだ。

ハインツ「………お前に計画を潰されたせいで、魔王軍の中で俺はいい笑い者だ。」

カズト「良かったじゃねぇか。」

ハインツ「良くねーよ!」

ハインツは怒号をあげた。

ハインツ「貴様さえいなければ俺は魔王軍の大幹部に慣れたんだぁ!」

ハインツは怒り狂い、巨大なハンマーを高く上にかかげ


ハインツ「死ねやぁぁぁ、ミツギ!」


高くハンマーを振りかざした時だった。

カズト「………甘いな。」ザシュ

カズトは素早く、一文字斬りでハインツの首をはねた。

ハインツ「………えっ。」

ハインツは愕然としながら意識を失い、絶命した。

バタン

ハインツの体が倒れ、首が地面に落ちた。

カズト「………勝負あったな。」

カズトは刀の刃を鞘に納めた。



シリウスサイド

ズバッ ズバッ

シリウスは素早く隙の無い剣戟で魔王軍の兵隊達を殲滅していた。

すると、1匹のゴブリンが急報を知らせた。

連絡係 ゴブリン「…………大変だぁ、ハインツ様がミツギにやられたぁ!」

青ざめた顔で叫んだ。

シリウス「………どうやら、決着がついたみたいだな。」

シリウスはそう言い、ほっと胸を撫で下ろした。





その後、ハインツが討伐されたことは島中に伝わり、それを聞いた魔王軍の兵隊達は顔を愕然とし、戦意を喪失したのか、武器を捨てて、浜辺に置いてあった小舟に乗って島を出て逃げようとしたがシリウスのライフル銃の狙撃で全て、撃沈され壊滅した。

島の死傷者は数百人の命が失われたが、資源などは奪われなかった。

魔王軍を退けたカズト達はカルマ島を出て近くの島にある冒険者ギルドへと向かった。

冒険者ギルドに魔王軍の幹部ハインツの首と数匹の魔王軍の準幹部数人の首をギルドの受付に差し出し無事に依頼を達成させた。

実は今回のカルマ島での抗争は冒険者ギルドから鉄火海賊団に依頼された仕事である、イストリア公国では海賊は海で戦う水上兵力として国やギルドからの色々な依頼を受けている、カルマ島を救ったことを称賛され報奨金として3億ポルト(日本円だと3億円)を受け取り、カズト達は船を出し青い海の航路を行進した。




遊星する隼(プラネット・ファルコン)号 甲板

カズト「………カルマ島はこれから、どうなるんだろう。」

カズトは船から見える、魔王軍の放火で真っ黒こげになったカルマ島に目を向けた。

シリウス「………さぁ、あれだけ被害を受けたんだ、廃墟になるな。」

カズト「……やっぱり、そうなるか。」

カズトは空を見上げた時だった。

ドカン

突然、砲弾が海に着弾し、水飛沫を上げた。

シリウス「なっ、なんだ⁉」

シリウスは急な出来事に動揺した。

カズト「………シュウスケ、敵船は確認できるか。」

カズトは見張り台にいるシュウスケに指示を出した。

シュウスケ「………見つけた敵は一隻だ………ん………げっ、あの海賊船は。」

双眼鏡で敵船を確認できた敵船を見て、シュウスケは唖然とした。

敵船は海賊船だった、しかも、ただの海賊船ではなかった。

シュウスケ、カズト、鉄火海賊団は嫌と言うほどその海賊団を知っているのだ。




砲撃してきた海賊船の船橋にいる、黒髪で眼帯をつけた青年がカズト達のいる船に目を向けた。

虎海賊団 船長

ナハト・トモギ「……よう、ミツギ。」

ナハトは笑顔で微笑み、呟いた。

ナハトはカズトのライバルでカズトのことをうるさく、しつこくつけ回して、攻撃してくる。

これでもナハトは魔王軍やそこらの海賊が恐れおののくほどの有名な海賊である。

異名は『フォルドの主』又は『海の猛虎』と呼ばれている。

ナハト「………面舵一杯、目標、ミツギの首!」

ナハトは操舵手に指示をだし、船は右を向いた。

そして、船体から出た大砲の砲口はカズト達の乗る船、遊星する隼(プラネット・ファルコン)号に向けてあり

ナハト「全弾、撃て!」

バコン ドオン バコン ドオン

ナハトの号令と共に数弾の砲弾が発射された。

バコン ドゴン ボコン

砲弾は遊星する隼(プラネット・ファルコン)号の周囲に着弾した。

カズト「……バリア。」ビビビビ

カズトはスキルを発動させ、船全体を覆いかぶさる透明なバリアを張った。

ドン ドン ドン

バリアという障壁のお陰で、船は砲弾を浴びずに済んだ。

カズト「船首砲、砲撃用意。」

カズトは号令を出し、反撃に出た。

すると、船は動き出し船首像の下から一門の大砲が顔を出した。

そして、船首砲の砲口はナハトの船、赤き運命(レッドフォーチュン)号に向けられた。

しかも、照準はナハトの顔面だった。

シユト「………お頭、攻撃準備、出来ました。」

音楽家 スミス・ジン「………照準はあの眼帯野郎の顔面にした。」

爆弾使い ドニー・ローガン「砲弾は俺特性の爆撃弾をつめた。」

警備兵 フット・ライオス「いつでも、発射できます。」

主戦法を準備したシユト達はカズトに合図を送った。

カズト「………よし、砲撃用意。」バリバリ

カズトはバリアを操作し、障壁に船首砲が通り抜けられる穴をあけた。

そして


カズト「撃てぇ!」 


ドオン

カズトの号令とともに、船首砲から爆撃弾が発射した。

爆撃弾はバリアの穴をくぐり、飛翔し

バコン

赤き運命(レッドフォーチュン)号(の船橋にいたナハトの顔面)に命中し、爆発した。

船橋が破壊されたことで、船を動くことは出来ず、そのまま釘付けとなった。

カズト「よし、ユウジ、全速全身で逃げろ!」

カズトはバリアを解き、操舵手に指示を出した。

鉄火海賊団 3謀兼操舵手

ユウジアス・ルハナ「了解、お頭。」

ユウジアスは舵を取り、船は全身した。



赤き運命(レッドフォーチュン)号 甲板

メラメラと船橋は爆撃弾の炎で燃えていて、カズト達を追うことが出来なかった。

船員A「おい、早く火を消せ。」

船員B「やっています。」

船員C「このままじゃ、弾薬庫にまで火が飛び火するぞ。」

船員D「……そんなことより、お頭だ。」

ナハト「…………。」

爆撃弾を顔面で食らった、ナハトは甲板まで吹き飛ばされ、気絶した。

ナハト「………んしょっと。」

ナハトは何事もなかったかのように体を起こした。

ナハト「………さすが、ミツギだな。」

ナハトはニヤリと笑い、立ち上がって汚れた体をはたいた。

ナハト「……ちょっと、一服。」

ナハトは懐にある、小さな煙草入れから一本の煙草を取り出した。

そして、燃え上がった炎でタバコに火をつけた。

ナハト「ふぅ~。」

ナハトはタバコを吸い、口から大きな煙を吐いた。

ナハト「よっしゃー、ミツギを追跡しろ!」

ナハトは船員達に合図を送るが


船員一同『出来るかぁぁ!』


船員達の声がかさなった。




つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る