第8話 幸せの始まり
2人は結婚の手続きをすると手を繋ぎ家へと向かう。
スカーレット 「ダヴィ~。今日の晩御飯は何にする~?あたし、何でも作るよ!」
ダヴィ 「うーん。何が良いかな…」
ご飯のメニューに悩んでいるとダヴィは改めてスカーレットの家事の力量を考え始める。
ダヴィ (待てよ…。スカーレットってどこまで料理出来るんだ!いや、俺だって焼くぐらいの料理しか出来ないけどよ!)
スカーレット 「ダヴィは何が好き?」
ダヴィはスカーレットの声で我に返ると昔、16歳の誕生日祝いに食べた豚の丸焼きを思い出す。
ダヴィ 「あ…。せっかく結婚したんだ。豚の丸焼きでも買っていこうか」
祝い事に食べる豚の丸焼きを思い出すと、高価な事に気付きダヴィは財布を取り出し所持金を確認する。
ダヴィ (これからスカーレットと生活するんだ…。養うためにもダンジョンで沢山稼がないとな)
財布の中身を見つめながら考え込むダヴィにスカーレットは下から顔を覗く。
スカーレット 「あっ!豚の丸焼きもいいけど…あたし、今日は鶏の気分だな~!」
ダヴィ 「あ…そ、そうか。んじゃあ鶏の丸焼きでも買っていくか」
スカーレットの提案にダヴィは安心すると財布をしまう。
スカーレット 「鶏の丸焼き買うんだったら…あたしが似たようなの作るよ!」
ダヴィ 「えぇ!?食材から買って作れるのか!?」
スカーレット 「うんっ!食材買おう!」
肉屋に行きスカーレットは骨付きの鶏モモ肉や、青果店でじゃがいもなどを買っていく。2人は手を繋ぎ露店を周るとダヴィが持つ紙袋はどんどん膨れ上がり、歩き続けているとスカーレットはニヤけ笑い声を漏らす。
ダヴィ 「何だ?突然笑って」
スカーレット 「だって…私、すっごい幸せだな~って!好きな人と結婚して一緒にいられるんだよ?これ以上に無い幸せだよ~」
満面の笑みで笑うスカーレットにダヴィは頬を赤らめ人差し指で鼻を触る。
ダヴィ 「ちょ、ちょっと用事を思い出したから待っててくれ。その間、好きに店をみていいぞ~?」
スカーレット 「えー!ダヴィと一緒に店を見るの~~!」
ダヴィ 「俺にも用事があるんだ。ちょっと待っててくれ!な?」
スカーレット 「うん…。わかった~」
肩を降ろしスカーレットは返答するとダヴィは小走りで走り姿を消す。スカーレットは露店の間にちょこんと立つ木を背にし呆然としていると肩を掴まれる。
「そこのお嬢さん綺麗だね。1人なのか?俺と遊ぼう―――」
如何にも若い男性がスカーレットの肩を掴んだ瞬間の出来事だった。
スカーレット 「おい。小僧」
穏やかだったスカーレットの目つきが一気に鋭くなり、男性の腕を力強く握ると一瞬の隙で背負い投げをする。
「ぐふぅぅぅぅぅ!!!」
地に叩きつかれた男性の上にスカーレットは馬乗りする。
———パンパンパンパンパンッ!!
スカーレットは何度も往復ビンタをかます。
スカーレット 「だまらっしゃい!!ダヴィ以外の野郎が気安くあたしの肩に触ってんじゃねぇよ!!」
ダヴィ 「スカーレット…」
ダヴィの声が背後から聞こえスカーレットは男性の上で馬乗りしていた場からスッと立ち上がる。
スカーレット 「や~ん。ダヴィ~~。この人が何か絡んで勝手に転んだの~。怖かった~」
ダヴィの腕を組むと頬でスリスリする。先程、絡んできた男性との口調とは裏腹に可憐な姿に戻り猫なで声で話す。
ダヴィ (あーぁ…。こりゃ、やっちまったな…)
馬乗りし往復ビンタをかます光景を観ていた、男性は恐怖の余りに後ずさる。
(こっわ)
(あの女に近づいたらダメだ。死ぬ!)
(すっげー美人なのに裏表がすげぇ…)
ダヴィは大勢の視線を感じるとスカーレットの手を握る。
ダヴィ 「帰るか。スカーレット」
スカーレット 「うんっ!」
大勢の人に見つめられる中、2人は家へと歩き出す。
家に辿り着くと中へ入り食材が入った紙袋をテーブルの上に置く。スカーレットは食材を取り出すとキッチンに置いてある包丁を握る。
ダヴィ 「スカーレット!本当に無理しなくて良いんだぞ!」
おろおろとするダヴィにスカーレットは振り返ると満面の笑みを浮かべる。
スカーレット 「大丈夫大丈夫!ダヴィは座ってて!」
ダヴィ 「わ、わかった」
大人しく椅子に座るとダヴィはスカーレットの背中姿を見つめる。
ダヴィ (どんな料理が出てくるんだ…?出てきても俺は食うしかないな…)
不安気な表情で料理をするスカーレットの背中姿を眺め続けていると、ダヴィは昨夜よく寝てないせいか睡魔が襲いテーブルの上でうたた寝する。
スカーレット 「ダヴィ~」
スカーレットはうたた寝しているダヴィの頬を指でつんつんと突く。
目を閉じていたダヴィは薄っすらと開けるとランタンのオレンジ色の光が差し込み香ばしい匂いが漂う。
ダヴィ 「ねて…たか」
スカーレット 「可愛い寝顔だったよ!それより、ご飯食べよう?」
大きな皿の上に焼いた骨付きの鶏のもも肉と蒸かしたじゃがいも、茹でたブロッコリーなどが盛りつけられダヴィは目を疑い腕でこする。
ぼんやりとした視界がハッキリとし幻覚では無いと悟るとダヴィは段々と目が見開きくっきりする。
ダヴィ 「これ…スカーレットが作ったのか?」
スカーレット 「うん!鶏肉焼いた時に香草も混ぜたから美味しいと思うよ?」
スカーレットは小皿に骨付き肉とじゃがいも、ブロッコリーを盛り付けるとダヴィの前に置く。
ダヴィ 「いただきます…」
ダヴィはゴクンと息を呑む。骨付き肉を持つと口元へ運びかぶりつくとダヴィの顔は見違えたかのように目をキラキラと光らせる。
塩コショウのシンプルな味付けに香草の風味が足されダヴィはもう一口かぶりつく。
ダヴィ 「凄くうまいよ!スカーレットは料理が得意だったのか?」
自分用に盛り付けたスカーレットは対面の席に着席し小さく頷く。
スカーレット 「うん。ほら、お母さんがアレでしょ…家事は全部あたしがやってたんだ」
ダヴィ 「そうか…。辛い事を思い出させてごめん」
スカーレット 「ううん。あたし、これから料理作るの楽しみだな。だってダヴィ、すっごく美味しい顔で食べてくれるんだもん!」
ダヴィは活き活きと話すスカーレットに、頬を赤く染めると目を逸らしポケットを漁る。
細長いケースを取り出すとテーブルの上に置きスカーレットにそっと前に突き出す。
スカーレット 「これ、なぁに?」
ダヴィ 「俺からの贈り物」
首を斜めに傾けるスカーレットはケースを開ける。
スカーレット 「わぁ!綺麗…」
ケースの中には青い宝石がついたペンダントが入っていた。スカーレットはキラキラと輝く青い宝石に見惚れているとダヴィは席から立ち上がりペンダントを握る。
ダヴィ 「こんな物しか贈れないけど…結婚祝いだ」
ダヴィはスカーレットの細い首にチェーンを通しフックを止める。スカーレットは宝石をギュッと握ると満面の笑みを見せる。
スカーレット 「こういうの貰った事ないからすごく嬉しい!ありがとう!ダヴィ!一生大切にするね!大好き」
2人は顔を合わせ笑みを浮かべていると唇を交わす。
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